黒猫が迷い込んだ
夏の暑さも本格化し夏本番はまだまだ続く。
そんな中屋敷の庭に黒猫が迷い込んでいるのを見つけた様子。
暑い日差しの中を放置しておくのもあれという事で、屋敷の中で涼ませる事に。
人に慣れているようなので、飼い猫である事は感じ取れる。
「この黒猫、飼い猫なのは確定っぽいわよね」
「首に鈴も付いてるもんな、それに人に懐くっていうのもあるし」
「飼い猫かぁ、迷い込んだのかな」
そんな中理津子が猫に与えるミルクを持ってくる。
猫に与えていいものと駄目なものがあるので、その辺は調べてから。
「美味しそうに飲んどるね」
「うん、でも飼い猫の黒猫かぁ、誰が買ってる猫なんだろう」
「黒猫は希少なんだよな、どこか別の金持ちとかなのかな」
「そういえばこの世界ってペットショップみたいなものはないんだっけ」
「うん、ペットは基本的に保健所に引き取られた野良を引き取る形だね」
セルベーラ曰くペットというのは基本的に保健所から野良を引き取る形になるらしい。
ペットショップのようなものは存在しないという事らしいというのもある。
またペットを飼う時は、引き取った動物が死ぬまで面倒を見るという事に同意させられるとか。
「黒猫を引き取れて、それなりにお金持ちの家、この屋敷からそんな遠くなさそうね」
「でもどこの家なんだろう、黒猫ってそれこそお金持ちとかじゃないと飼えないんでしょ?」
「ああ、だから少なくとも貴族の家の飼い猫の可能性は高いな」
「なるほど、そういえばペットは基本的に野良を引き取る形って言ってたけど」
「うん、ペットは飼いたい人が保健所に申し込んで引き取る形になってるよ」
ペットは保健所に申請を出してそれが認められた場合に引き取れるという。
ペットを引き取るには過去の事なども調べられるとか。
その上で認められた後に死ぬまで面倒を見るという契約を結んで引き取りになるという。
「ペットって基本的に不慮の死を遂げるとかでもない限り、死ぬまで面倒を見るしね」
「そういうものなんだ、あたしの世界だと飼えなくなったペットを捨てるとかあったな」
「そういうのは確実に生態系を破壊するんだよな、だから死ぬまで面倒を見る事を契約するんだ」
「もし破った場合はどうなるの?」
「1000万以下の罰金か禁錮刑で15年以下かな、飼い主が不慮の死なら殺処分行きだよ」
つまりペットを飼うのならペットが死ぬまで面倒を見る事はそれだけの事である。
もし飼えなくなり野に放ったりした場合は高い罰金刑か、重い禁錮刑になるという。
それはペットを飼うからには責任を持て、持てないなら飼うな、シンプルにそれだけなのだ。
「結局は無責任な奴に人権はねぇっていうのがこの国のスタンスでもあるのよね」
「ペットに限らず、責任を負えない人に人権はねぇっていうのなかなかに凄い…」
「それはつまり責任さえ果たせば多少の無法も大目に見るぞっていう事なんだよな」
「責任を果たせない人には人権はない、政治家とかも大変そうだなぁ」
「でもこの黒猫も飼い猫っていう事からしたら、猫なりに自由にはさせてるんだよね」
この黒猫も迷い込んだとはいえ、飼い猫なのは確定だ。
恐らく屋敷の主人は今は留守にしているとかなのだろう。
その結果街を自由に歩いていたところをこの屋敷に迷い込んだものと思われる。
「にしても少年によく懐いとるな、少年って動物に好かれるタイプなのかね」
「むぅ、なんか納得いかないんだけど」
「妬いてるのか?僕はそもそも動物はそんな好きじゃないんだが」
「そうなの?でも邪険にしない辺り、近寄られるのが駄目とかではなさそうだね」
「動物恐怖症の人ってたまにいるもんね」
黒猫はロザリオによく懐いている様子。
ロザリオはどうやら動物によく懐かれるという話でもあるようだ。
なんにせよ飼い主が来てくれない時はこっちから探しに行く事にしておく。
「にしても猫って基本的に自由な生き物だから、飼い主も自由にさせてたのかね」
「恐らくはそうだろうね、でも死ぬまで面倒を見る事が契約なんだよね?」
「そうだぞ、それが出来なかったら罰金刑か禁錮刑だ」
「でも猫って死期を悟ると、姿を消して人目のない所でひっそり死ぬっていうけど」
「この世界の猫はそんな事はないと思うよ?普通に家で亡くなって看取った話は聞くし」
理津子の世界では猫は死期を悟ると姿を消して人目のない所でひっそり死ぬという。
こっちの世界ではそんな事もないのか、普通に看取ってもらえて亡くなる様子。
猫というのは不思議な生き物である。
「ん?チャイム鳴っとるよ」
「飼い主の人が来たのかな?ちょっとこの子連れて出てくるね」
「まあ迷い猫で首輪してるしな」
「飼い猫なのは確定だもんね」
そうして屋敷を訪ねてきた主人に返して猫と飼い主は家に帰っていった。
黒猫は魔女の眷属だったり不吉の象徴だったりいろいろある。
とはいえ猫の生態もこっちの世界では理津子の世界とは違う様子。
ペットの事情はこちらの世界では相当厳しく作られているらしい。




