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他種族同士の婚約~前編~

こっちの世界も冬が始まり、屋敷の方も冬支度を始めた。

幸い暖房などはあるが、エアコンなどは古いもののため買い替えが必要な様子。

今になってという事もあってか、手配は済ませたものの少し時間がかかるとの事。

そんな準備をしている中での息抜きにロザリオを連れて外に出ている様子。


「ん、んー…冷えるようになったけどやっぱり日光はいいね」


「外に出てもそんな楽しくないだろ」


「別に遊ばなくてもいいのに、日光を浴びるって必要だよ」


すると公園のベンチに座っている老人がこっちを見ていた。


その老人が理津子達にこっちに来ないかと手招きをする、少し気になって行ってみる事に。


「おや、本当に来てくれましたか」


「お爺ちゃん、あたし達に何か用?」


「いえ、あなたに少し独特な空気を感じたもので」


「リツコの事が分かるのか?」


「これでも昔は少しは名の知れた軍人でしたから、少しお話でもしませんか?」


どうやら老人は理津子がこの世界の人間でないという事に薄っすらと気づいたらしい。

見ず知らずとはいえ、このまま帰るのもあれなので付き合う事に。


その老人は今の世界の事について語ってくれる。


「今のこの世界は実にいい、昔に比べて他種族も当たり前に受け入れられる」


「そういえば他種族交流になる前はそれだけで偏見があったって父さんが言ってたな」


「ええ、私もそんな時代を知っていますよ」


「お爺ちゃんはそんな偏見のあった時代を生きてたんだ」


「はい、そしてその時代に人間の女性を嫁にしたんです」


ロザリオも父親から聞いていたという昔の話。

他種族の交流が盛んになったのは大体150年前ぐらいらしい。


その当時から70年ぐらいはかなりの偏見もあったとか。


「私は軍人としてこの世界に派遣されましてね、所謂偵察隊というやつです」


「爺さん、魔族だよな?」


「はい、その偵察隊として派遣された先で一人の女性に目を奪われまして」


「一目惚れってやつかな?」


「そうなりますね、私は偵察隊の仕事が終わったら退役する予定でしたので」


偵察隊としてやってきた先のこの世界で一目惚れをしたという。

それからこっちの世界の安全を上官に報告し、任務を終え退役。


魔族の民間交流が始まり、彼はその女性に会いに行ったという。


「退役してから彼女に会いに行きましてね、無礼と分かっていても想いを伝えたかった」


「なんかそういう話ってあるんだなって思ったよ」


「彼女も仕事の中で私が見ていたのに気づいていたようで、話はすぐに出来ました」


「でも当時は偏見にまみれた時代だ、そんな簡単な話でもないんだろ」


「はい、それを知った彼女の親は相当に激怒したんです」


それでも彼女は彼の想いを知っていた、何かを変えるきっかけになりたいと思ったという。

彼のその誠実さと真摯な姿勢に次第にその仲を深めていった。


だがそれは親に内緒で付き合っていたのだという。


「親に内緒で私と付き合った彼女はその時点で覚悟を決めていたんだと私は知りました」


「彼女は他種族が仲良くなれるきっかけを作りたかったのかな」


「私にはそう話してくれました、ですが彼女は貴族の一人娘、親がそれを許すはずもなく」


「引き裂かれた、ってわけじゃなさそうだな」


「彼女は私をその親に会わせたんです、本当に大胆な事だと今でも覚えていますよ」


彼女は彼を親に紹介したという。

偏見にまみれた時代にその行動はあまりにも度胸があったとしか言えない。


親はそれでも彼の事を偏見の目で見ていたという。


「彼女は私が素晴らしい人だとこれでもかと親に言っていましたよ」


「なんか顔が真っ赤になりそうな話だな」


「私も恥ずかしかったものの、彼女はそれだけ必死だったんです」


「なんかいいね、それだけ言ってもらえてさ」


「その時は付き合い始めて半年ぐらいでしたか、お互い理解を深めていた時期ですね」


老人の昔話、それは他種族との愛というのは成立するという事なのだろう。

昔話はまだ続くようで、理津子もその話を最後まで聞こうと決めた。


ロザリオが知らない時代の話。


他種族と関係を持つという事の本当の意味をこの先知る事となる。

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