表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
328/343

風鈴の音色

すっかり夏本番となり外は太陽の日差しが照りつける。

そんな中換気のために窓を開けたらいい感じに涼しい海風が吹いてきた。

夏の風というと風物詩とも言えるものが思い出される。

その音色は夏には涼を感じるものでもある。


「たまには窓を開けるのもいいもんね」


「そうだな、屋敷の掃除をしてる中でエアコンを入れるのもいいが、ここは風もあるしな」


「港町の海風は気持ちいい風だよね」


そんな港町には海風があるからこそ夏でも多少の涼しさがある。


それでも日本に比べたら全然涼しいというのが理津子の感じているものらしい。


「お、なんか美味そうなもんが出てきた」


「とりあえずフルーツポンチね、果物が安かったし」


「こういう暑い日は冷たい果物は美味しいしな」


「そうそう、しっかり冷やしてあるからね」


「とりあえず食べようか、いただきます」


今日は風もいい具合に吹いているので、換気も兼ねて窓を開けている。

窓から入ってくる海風はいい具合の涼を運んでくる。


エアコンもいいが、風のある日は海風で涼むのもいいものだ。


「にしても窓を開けてるとその涼しさを感じるわね」


「海風が吹き抜けるっていうのは涼しいからいいよね、日本の夏は蒸し暑いし」


「でも日本って島国じゃなかったのか」


「一応島国だよ、でも日本の夏も近年は風鈴の音色とかも聞かなくなってたなぁ」


「風鈴?それも涼を取るためのアイテムなの?」


日本の夏の風物詩である風鈴。

しかし近年の夏は暑くなりすぎたせいで、窓を開けて風鈴の音色も聞かなくなった。


それだけ暑くなったという事であり、風が吹かないのに窓を開けても暑いだけである。


「風鈴ってなんなのかしら、名前からして鈴とかそういうのかしら」


「風が吹くとチリーンっていう音が鳴るやつだね、その音だけでも涼しさを感じるよ」


「音で涼しさを感じるっていうのは文化というかそんな感じはあるな」


「まあ近年の夏は暑くなりすぎた事もあって、風鈴の音色は聞かなくなったね」


「風があるから風鈴は鳴るのであって、風がなければ窓を開けても暑いだけか」


風鈴の音色は元々の気温がそれなりである事は前提にあるのかもしれない。

体温よりも暑い夏になった近年の夏では風鈴の音色が聞こえないのも仕方ないのか。


もはや風鈴で涼は取れないという事なのかもしれない。


「風鈴、風流な感じはするけど、そんな暑くなったら風鈴どころじゃなさそうね」


「この屋敷だと海風もあるから、風鈴もいい音色がしそうではあるんだけどね」


「でも窓の上に吊るすのは結構大変じゃないか?」


「確かにね、この屋敷は窓も大きめではあるし」


「とはいえ風があるなら風鈴もきちんと鳴ってくれそうだよね」


この屋敷の窓の大きさでは風鈴の設置は大変そうではある。

それでも風があるというのはそれだけ大きい。


理津子も港町の海風の気持ちよさは感じているからこそだ。


「でも風鈴の音で涼を取るっていうのは、科学的な根拠とかあるのかしら」


「そこはなんとも言えないね、田舎の家とかは元々割と涼しいのはあったし」


「元々それなりに涼しいからこそその音色で涼しく感じるとかなのか?」


「どうなんだろうね、でも風鈴が鳴ると少し涼しく感じるのは事実みたいだし」


「不思議なアイテムなんだね、でも夏の風物詩っていうのは面白いかも」


風鈴の音色が恋しいとはいえ、こっちの世界で手に入るものなのか。

そもそも屋敷の窓は大きいので、吊るすのも大変そうだ。


そんな郷愁に思いを馳せているのはこっちの世界に来てから結構経つからなのか。


「でも日本って面白い涼の取り方があるもんなのね」


「そうだね、風鈴もそうだけど食べ物で涼を取るとかもあるし」


「そうめんとかみたいな冷たい麺類はそれなのか」


「うん、まあ近年は暑くなりすぎて水道水がぬるま湯状態だったけど」


「水道水がぬるま湯状態って、水道管の中にまで暑さが貫通してるって事だよね?」


水道水がぬるま湯状態になる程度の暑さ。

冷たい麺類を食べようと水道水を出せば出てくるのはぬるま湯である。


もはや事前に水道水を冷蔵庫で冷やしておく必要がある程度には暑いという事か。


「風鈴の音色も限界突破した暑さには勝てないって事なんかしら」


「そんな気はする、水道水がぬるま湯になる暑さって、大概だよね」


「もはや水は事前に冷やさないといけないレベルか」


「それはあるね、うちでも空の2リットルペットボトルに水道水入れて冷蔵庫に入れてたし」


「そういう事はしてるんだね、水道水を冷やすのか」


理津子の家では空になった2リットルペットボトルに水道水を入れて冷やしていたという。

冷蔵庫で水道水を冷やさないといけない程度には水が冷たくない夏。


日本の夏はそこまで暑くなっているという事なのだろう。


「はぁ、美味かったわ」


「夕方になったら窓も閉めないとね、虫が入ってきても困るし」


「夜の明かりに虫が群がってくるからな」


「夏は嫌な季節だね」


そんな今はあまり聞かなくなった風鈴の音色。

日本の夏はそれだけ暑くなったという事なのだろう。


異世界で風鈴を懐かしむものの、やはりここでも風鈴は見ないもの。


異世界の港町の海風は暑い夏を涼しくしてくれる自然の冷房である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ