電気のない生活
すっかり夏本番になり港町も気温が上がり始めた。
そんな中サインに美味しい店を見つけたという事でまたお誘いされる。
それに付き合って美味しいものを食べに行く事になった理津子。
暑い季節になると気になってくる話題があるようで。
「ここがそのお店かな?」
「はい、この季節だけやっているかき氷のお店らしいですよ」
「かき氷か、サインはこういうお店を見つけるのが特技か何かなのかな」
とりあえずその店に入る事に。
夏季限定のかき氷屋、つまりそれだけ味に自信があるという事か。
「さて、何を頼もうかな」
「私はマンゴーとオレンジのかき氷にしますか」
「ならあたしはピーチとグレープのかき氷にしよう」
「決まりですね、ではオーダーを入れますか」
「だね、すみませーん!」
そうしてオーダーを入れて少しするとかき氷が運ばれてくる。
シロップとたっぷりの果物が乗った豪華なかき氷だ。
夏季限定の営業という事らしいが、冬になるとまた別の店に変わるという事らしい。
「うん、これは美味しいね、果物の味が凄く濃厚で美味しい」
「夏季限定の営業というだけはありますね」
「そういえばサインってエネルギーの開発をしてるんだよね?」
「ええ、そうですよ、とはいえなかなか上手くはいかないものではありますが」
「でもこの人界なんかでもメインのエネルギーって電気だよね?」
この世界でもメインのエネルギーは電気である。
発電所は基本的に自然災害の少ない土地に建てられる事のようだ。
異世界でも電気はそれだけ大切なエネルギーなのか。
「でも異世界でも電気は重要なエネルギーって事なんでしょ?」
「そうですね、少なくとも電気に代わるエネルギーは過去にも何度も研究されてきました」
「でも電気の代わりのエネルギーってそれだけハードルが高いものなのかな」
「エネルギー自体は小規模な利用はされてます、でも電気ほどの大規模運用は無理なんです」
「つまりエネルギー自体は今でも利用されてるけど、電気ほどの規模は無理なんだ」
サインが言うには、国家一つを賄うぐらいのエネルギーは電気しかないという。
過去に開発されたいくつものエネルギーは小規模ながら利用自体はされているとのこと。
だが国一つを賄うには電気以外の選択肢はないのだという。
「実際電気のない生活って出来るものなのかな」
「まあ無理でしょうね、今の人類から電気を取り上げたらそれは死刑宣告ですよ」
「やっぱりそうなるのかぁ、電気はそれだけ欠かせないものなんだね」
「電気以外のエネルギーはそれこそ電気規模の生産が出来ないんです、だからなんですよね」
「なるほど、電気は発電所でそれだけの大規模な生産が出来るからなのか」
実際過去にそうした代替エネルギーの開発の際に問題になったのは生産にあったという。
電気と同等の生産能力は全てのエネルギーで満たせなかった。
その結果個人などの小規模では使われていても、国家規模になると電気しか選択肢がないという。
「電気はそれだけ一度にたくさん作れる、他の代替エネルギーはそれが出来なかったか」
「そういう事です、私の開発しているエネルギーも生産力が壁になりますし」
「電気の強さはその一度に生み出せる量にあるって事なんだなぁ」
「ええ、代替エネルギーの開発者達は例外なくその壁の前に膝をついていきましたから」
「そんなに大変な事なんだね、電気に代わるエネルギー開発って」
サイン曰く電気のに代わるエネルギーの開発における壁は生産能力だという。
電気に代わるエネルギーは電気と同規模の生産が出来ない。
それにより代替エネルギーは例外なく個人利用などの小規模利用に落ち着いているとのこと。
「電気を失ったらそれは人類への死刑宣告、代替エネルギーは国を救えなかったか」
「結局は電気と同等、またはそれ以上の生産が出来ないと始まらないんです」
「そこが最初の壁であり最大の壁でもあったんだね」
「ええ、だからこそ個人のような小規模での利用なら全然有効に使えるんですよ」
「なるほどなぁ、代替エネルギーもそういう利用方法は全然ありって事なんだね」
サインが言うように代替エネルギーは全て一度に生産出来る量から頓挫してきた。
その結果生き残ったエネルギーもあるものの、あくまでも個人や会社規模に落ち着いている。
小規模な利用であれば、有用な発明でもあったという事のようだ。
「まさか異世界でも電気は生命線だったとは」
「電気っていうのは結局は発電所一つで桁違いの量を生み出せる事が強みなので」
「他の代替エネルギーはその量を賄う事が出来なかったか」
「だから電気は最強のエネルギーでもあるんですよね」
「代替エネルギーが根付かない理由が分かった気がする」
そんな話をしつつかき氷はしっかり完食する。
そのまま支払いを済ませて店を出る。
やはり夏のかき氷は美味しいものである。
「それじゃまた何かあったら誘ってよね」
「はい、美味しいお店が見つかったら連絡しますね」
「さて、お土産でも買って帰ろうかな」
サインは定期的に美味しい隠れ家的な店を見つけてくる。
それはサインの特殊能力のようなものなのか。
美味しいものに目がないからこその特技なのか。
サインの美味しい店探しは、まず入ってみる事から始めるらしい。




