たまごサンドという至福
すっかり春本番になり港町も暖かくなってきた。
そんな中春の陽気は眠気も誘う厄介なもの。
春になると眠くなるというのは異世界でも変わらないのか。
やはり季節の変わり目は自律神経が乱れるのか。
「りっちん、パン焼いてたね、何か作るんかな」
「卵もたくさん買ってきてたぞ」
「卵とパン、サンドイッチとかかな」
そんな理津子が作っていたのは当然たまごサンド。
たまごサンドはサンドイッチの中でも特に美味しいというものらしい。
「本当にたまごサンドだったわね」
「卵が安かったから、ついたくさん買っちゃったんだよね」
「でもこれ卵焼きを挟んであるな、ゆで卵のマヨネーズ和えじゃないのか?」
「元々たまごサンドって卵焼きを挟んだサンドイッチらしいよ」
「でも美味しそうだね、早く食べようよ」
理津子が作っていたのはたまごサンド。
しかしそのたまごサンドは卵焼きを挟んだサンドイッチだった。
だがそれはそれで美味しそうではある。
「んー、これはこれで美味しいわね、卵焼きもフワッフワだわ」
「たまごサンドって元々は卵焼きを挟んだサンドイッチらしいんだよね」
「そうなのか?なら普段食べてるあれはたまごサンドじゃないのか?」
「あれはたまごサラダサンドっていうらしいよ」
「そうなの?たまごサンドじゃなくて、たまごサラダサンドなんだ」
理津子曰くたまごサンドは本来は卵焼きを挟んだサンドイッチらしい。
なので普段食べている卵ンドはたまごサラダサンドなのだという。
日本ではそういう歴史を辿ってきた食べ物という事ではあるのか。
「でもたまごサラダサンドね、確かにあれは卵の他に野菜が入ってるもんとかもあるわよね」
「そうなんだよね、でも世間一般的なたまごサンドはたまごサラダサンドなんだよ」
「でもたまごサラダって言っても、ほとんどは卵だろ」
「うん、たまごサラダサンドって結局はたまごサンドって言ってもいいと思うし」
「でも卵焼きを挟んだサンドイッチもこれはこれで美味しいよ」
卵焼きを挟んだサンドイッチ、それはそれで美味しいと評判ではある。
ちなみに理津子は昔は店で買う卵焼きが苦手だったらしい。
今では好きになったが好みというのは変わるものなのかもしれない。
「フワッフワの卵焼きとフワッフワのパンの組み合わせは最高すぎる」
「だよねぇ、でもあたしは昔はお店で買う卵焼きってあまり好きじゃなかったんだよ」
「そうなのか?割と悪食なお前でも苦手なものってあったんだな」
「うん、でも今はお店の卵焼きも好きなんだけどね」
「お店の卵焼きってそもそも家庭で作るものとは違うからなのかな」
理津子は昔は店で買う卵焼きが苦手だった。
それは家庭で作る卵焼きとはまた違うからなのかもしれない。
それはつまり寿司の玉子もまた似たようなものだからなのか。
「でもお店の卵焼きって要するに家庭で作るものとは味が違うんでしょうね」
「うん、寿司屋の卵は好きだったのに、卵焼きは苦手だったんだよね、なんでなのか」
「店の卵焼きは寿司屋の卵焼きとは違うのか?」
「たぶん大きな違いはないかな、不思議な話だよねぇ」
「卵焼きの好みってあるものなんだね」
卵焼きの好みというのは人によってあるものなのかもしれない。
家で作る卵焼きは好きだが店で買う卵焼きは苦手。
店の卵焼きは家庭のものとは味が違うからこそなのか。
「でもりっちんってこんなフワッフワな卵焼きを焼けたのね」
「卵焼きの焼き方もお父さんから教わったんだよね、ふわふわにするやり方とか」
「お前の父親って本当に料理が得意なんだな」
「実際ホテルの元シェフっていうのも嘘じゃないのかもね」
「どこまで本当なんだろうね、でも嘘ではなさそうというか」
理津子の父親がホテルの元シェフという話。
料理が得意というからには料理に関係する仕事をしていたのは確かなのだろう。
それを教わったのだから料理が得意になるのは当然というか。
「にしても卵焼きは甘い味が好みなんかい?」
「甘いのもしょっぱいのも好きではあるけど、我が家は甘い卵焼きだったかな」
「つまり家庭によって卵焼きの味って違うのか」
「うん、日本の家庭の卵焼きって甘いやつの家としょっぱいやつの家があるから」
「しょっぱいやつって塩で味付けしてるのかな」
しょっぱい卵焼きは醤油を使う事でしょっぱい味付けにしている。
甘い卵焼きは言うまでもなく砂糖を使っているわけだが。
とはいえ理津子の家庭は甘い卵焼きだったようだ。
「うん、美味しかったぜぇ、卵焼きのたまごサンドも美味しいもんね」
「こういうのもいいものでしょ」
「ああ、これはこれで美味しかったぞ」
「卵焼きのたまごサンド、こういう美味しさもあるんだね」
そんな卵焼きを挟んだたまごサンドの美味しさ。
理津子はたまにこういうものを食べたくなるらしい。
たまごサンドとは卵焼きを挟んだもので、一般的なあれはたまごサラダサンドらしい。
たまごサンドの美味しさは異世界でも変わらないようだ。




