小豆は煮るもの
春の足音はすぐそこまで来ている様子の港町。
外の気温も少しずつ上がり始め、二桁の気温になる日も増えてきた。
そんな中話に聞いていた東の国の商品を扱う店に行ってきた様子の理津子。
そこで何を買ってきたのかというと。
「りっちん、何を作ってるんかね」
「甘い匂いがするから、何かデザートじゃないか」
「何か豆を買ってきてたみたいだけど」
そんな理津子が作っていたのは小豆を使ったお菓子の様子。
東の国の商品を扱う店で買ってきたのは小豆だったようだ。
「なんか美味しそうなもんが出てきたわね」
「ぜんざいとかあんこのお菓子とか作ってみたよ」
「ぜんざい、それもあんこのお菓子なのか?」
「お菓子というか、小豆を使ったおやつだよね」
「小豆、それを買ってきてたんだね」
作っていたのはぜんざいなどのあんこの甘い食べ物。
小豆といえばあんこという発想はやはり日本人なのか。
そんなあんこが好きなのも理津子らしいというか。
「うん、これは美味しいわね、豆を甘くするってこういう事なんね」
「小豆が手に入るとは思わなかったし、手に入ったからには作らないとね」
「でも美味しいな、これはどら焼きっていうやつなんだよな」
「うん、どら焼きは洋物のクリームでもいいんだけど、やっぱりあんこに限るからね」
「小豆ってあんこにするんだね、でも美味しいかも」
理津子は母親の影響なのか、お菓子はどちらかというと和菓子が好きなようである。
日本という国に生まれたからこそ、あんこにも馴染みはある。
やはりあんこが好きなのは日本人としての血なのかもしれない。
「でもあんこって美味しいわねぇ、こりゃ気に入ったわ」
「やっぱり日本人はあんこなんだよ、ちなみにこのぜんざいはかぼちゃぜんざいね」
「かぼちゃぜんざい、美味しさの理由ってそれか」
「和菓子とかぼちゃの相性はいいからね」
「かぼちゃのぜんざいなんて面白いね、美味しいし」
かぼちゃぜんざいという農家のおやつ。
理津子曰く農家は野菜などの作物を使ったおやつをよく食べるらしい。
そんな農家のおやつは理津子も好きなのだという。
「どら焼きも美味しいし、こっちの大福も美味しいしあんこってすげー」
「アノットはすっかりあんこが気に入ったね」
「でも豆を甘く煮るっていうのは、日本では普通なのか?」
「普通というか、料理に砂糖を使うのが普通なんだよね」
「つまり料理の汁の味付けに砂糖を使うみたいな話?」
日本では砂糖を料理に使うのは珍しくない。
実際肉じゃがなどの煮物の汁を作る際に砂糖を使うのは普通にやっている。
あんこも豆を甘く煮るという事もあり、外国人には驚かれるものの一つだという。
「そういやりっちんって料理にも砂糖使ってたわよね」
「うん、日本だと甘じょっぱいとか、甘辛いみたいな味付けは普通だから」
「つまり塩気のある味とか辛味のある味に砂糖を混ぜるのが普通にあるのか」
「そうそう、甘辛とかそういう味は日本では普通なんだよね」
「料理に砂糖っていう発想がまず不思議な感じがするかも」
実際外国人からしたら料理に砂糖というのは最初は不思議に見られるという。
それでもその味を好きになる人も少なくはない。
食わず嫌いというか、未知への恐れというか、そんな感じなのかもしれない。
「日本の料理って面白いわねぇ、料理に砂糖とか豆を甘く煮るとか」
「あとずんだっていう枝豆を使ったあんことかもあるよ」
「ずんだ?変な名前なんだな」
「白あんなんかはいんげん豆が原料だし、豆を使った甘い食べ物は普通にあるんだよね」
「日本は豆を甘く煮たりとか、料理に砂糖を使ったりとか独自の食文化って感じかも」
豆を甘い味に仕上げるというのは日本独自の食べ方なのか。
世界を見ればそういう食べ方をする国はあるのだろうとは思うが。
なんにせよあんこは外国人には初見では不思議に見られるものだという事らしい。
「うん、美味い、あんこって至福の味がするわねぇ」
「小豆といえばあんこだからね、ぜんざいはあたしも好きなものの一つだし」
「しかし豆を甘く煮たり料理に砂糖を使ったり、その辺は美味しさへの探求なんだろうな」
「それはあるかもね、和食の煮物のレシピって砂糖が含まれてる事は珍しくないし」
「その砂糖は主に汁の味付けに使うって事なんだよね?」
和食の煮物の汁は甘じょっぱい感じに作られる事が多い。
砂糖醤油なんていう食べ方があったりするぐらいでもある。
蟹の身に砂糖醤油というのが理津子の好みの食べ方らしい。
「うん、美味しかったぜぇ」
「それはどうもね、また機会があれば作ろうかな」
「小豆の存在は知ってたが、こういう食べ方もあるんだな」
「日本での食べ方っていう感じなのかもね」
小豆はあんこにするものというイメージがある理津子。
ちなみに理津子はつぶあん派という事らしい。
豆を甘く煮るというのは外国人には不思議に見られるものの一つでもある。
食文化とは国の歴史という事でもあるのかもしれない。




