存在しないラーメン
春の足音は確実に近づいてきている様子の港町。
気温は少し高くなってきたようで、たまに暖かい日もあったりする。
春本番はもう少し先とはいえ、もう冬の終わりは近い。
暖かくなるとまた眠くなったりもするのが厄介だ。
「さて、何を頼もうか」
「私は塩ラーメンですね、塩が一番です」
「あたしは味噌にしようっと、寒いうちに味噌は食べておきたいしね」
サインに誘われてラーメンを食べに来た様子の理津子。
こっちの世界のラーメンは日本で言う定番の四つの味が主流のようではあるが。
「うん、やっぱり美味しいね、ラーメンはこの感じがいいんだよ」
「リツコはラーメンは食べ慣れてるみたいですね」
「まあ日本は47都道府県全てにご当地ラーメンがあるような国だしね」
「そんなにラーメンがあるんですか、凄いですね」
「でもこっちの世界には、定番の味はあっても家系ラーメンとかは流石にないんだなぁ」
ラーメンは異世界でも美味しいもの。
とはいえ異世界にはない家系ラーメンなどのラーメンはたまに恋しくなる様子。
レシピ自体は調べられるものの、家系ラーメンを作るのは流石にしんどいという事か。
「家系ラーメンが恋しいよ、自分で作るにしても屋敷のキッチンじゃ設備が足りないし」
「家系ラーメン?日本にはそういうラーメンがあるんですか?」
「うん、タイプ的には醤油豚骨ラーメンに海苔とかほうれん草なんかをトッピングするやつね」
「醤油豚骨ラーメンという事は醤油ととんこつのスープを混ぜているんですか?」
「そんな感じかな、お店だと油の量と麺の固さと味の濃さを変えられたりするね」
家系ラーメンでは割とお約束の油の量と麺の固さと味の濃さを変えられたりするサービス。
理津子は油少なめ味普通の麺固めが好きらしい。
異世界だとラーメンはあっても家系ラーメンなどのラーメンは流石にないようである。
「家系ラーメンが恋しいけど、自分で作るのも重労働だからねぇ」
「家系ラーメンは野菜とか鶏ガラとか煮干しとかありますけど、なんのスープなんですか?」
「主にとんこつと鶏ガラが多いのかな?豚はゲンコツとか背ガラなんかも使うらしいけど」
「なるほど、それを煮込むわけですから、火力とかも凄く必要なんでしょうね」
「うん、実際家系ラーメンのお店ってガス代とかが凄いって聞くから」
家系ラーメンを自作しようとするとスープを作るのがまず大変なのだが。
とはいえ家でも作れなくはないので、やろうと思えば作れる。
ただラーメンのスープを一から作るのは流石に重労働であるが。
「でも寒い日の味噌は美味しいねぇ、あたしはラーメンは醤油派だけど味噌も好きだし」
「ラーメンは寒い日でも暖かい日でも美味しいんですよ」
「それはそうなんだけどね、やっぱり醤油こそが原点にして頂点だと思うんだよ」
「好みは人によりますけど、リツコさんは醤油派なんですね」
「でも家系ラーメンって醤油ラーメンと豚骨ラーメンのスープを混ぜるだけじゃ駄目なんだよね」
家系ラーメンのスープはそれこそ家系ラーメンの作り方があるというもの。
こっちの世界でも家系ラーメンを食べたいとは思うが、そんな簡単な話でもない。
どこかに家系ラーメンの店が生えてこないかなと思ったりしているようだ。
「ふぅ、それにしても異世界でもラーメンはやっぱり美味しいね」
「リツコさんはラーメンが本当にお好きなんですね」
「うん、シンプルな中華そばが一番好きだけど、こういうラーメンもまたいいよね」
「ラーメンは庶民にとっても財布に優しい食べ物ですしね」
「日本だとカレーラーメンとか冷やしラーメンとか、ブラックラーメンとかあるからねぇ」
カレーラーメンというのもまた美味しいのがラーメンの面白さだ。
他にも冷やしラーメンやブラックラーメン、酸辣湯麺なんかもそうだが多様な種類がある。
流石は47都道府県全てにご当地ラーメンがある国である。
「カレーラーメンぐらいなら家でも作れるし、帰ったら作ってみようかな」
「カレーラーメンというのはラーメンの麺にカレーをかけるというわけでもないんですよね?」
「うん、カレー味のラーメンスープで食べるラーメンって感じかな」
「なるほど、カレーラーメン、それも興味深くはあります」
「今度カレーラーメン作ってみよう、麺も打たないとね」
そんな話をしながらラーメンを完食して店を出る。
そのまま甘いものを食べに行こうとなる事に。
やはり甘いものは別腹なのである。
「さて、次は甘いものでも食べに行こうか」
「ですね、甘いものは別腹ですからね」
「それじゃ次は甘いものを食べにレッツゴーだね」
そのまま甘いものをいただきに次の店に行く。
ラーメンを食べていたら家系ラーメンが恋しくなってしまった理津子。
定番の四つの味以外のラーメンは異世界ではやはりないものなのか。
家系ラーメンはたまに食べたくなってしまうらしい。




