バレンタインは祭り
冬の寒さが少しずつ落ち着き始めてきたもののまだ寒さは続く。
そんな中日本ではもうすぐバレンタインの季節が来る。
とはいえ異世界にバレンタインなんてものはないのだが。
それでもせっかくなのでチョコだけは作る事にした様子。
「甘いいい匂いがするわね」
「チョコレートの匂いだな、日本だとバレンタインがどうとか言ってたな」
「こっちの世界だとそういう日は特にないもんね」
そんな理津子が作っていたのはチョコレートではなくチョコレート系のお菓子。
ただチョコを作るだけではつまらないと考えたか。
「いろいろ作ったわね」
「チョコレートケーキにチョコどら焼き、チョコ大福にチョコまんじゅうとかね」
「こういうところはひねくれてるよな、お前」
「別にいいじゃん、シンプルにチョコを作るより楽しいし」
「でも美味しそうではあるよね、早く食べようよ」
チョコレートケーキにチョコどら焼き、チョコ大福にチョコまんじゅうなど。
和菓子にチョコレートを使うのは今の日本では割と定番になってきた。
和洋折衷とは言ったものである。
「んー、美味しいわね、やっぱり甘いもんは癒やしだわ」
「アノットって甘党の極みみたいな人だよね」
「甘いもの食わせればきちんと働く奴だしな」
「割と現金な性格してるよね、それでも働いてくれるだけいいけど」
「でも和菓子にチョコレートを使うっていうのはリツコもよくやるよね」
和洋折衷は日本に限らず外国でも割とよくされている事でもある。
チョコ大福は日本ではすっかり定番の味だ。
その一方で海外では餅というのはチョコや果物などと一緒に食される事が割とあるとか。
「りっちんもすっかりお菓子作りが上手くなりおって」
「レシピを守るっていう基礎さえ出来ればなんとでもなるからね、お菓子作りは」
「確かに料理だと塩とかを目分量で入れたりする事が割とあるもんな」
「料理の本にも塩をひとつまみとか、適量とか書いてあるからね」
「その一方でお菓子に目分量は通用せずに、レシピを守らないといけないんだね」
料理の場合は塩などの調味料をひとつまみとか適量とか書いてある事は普通だ。
なので理系の人間はそういうところにイラッとしてしまったりするらしい。
その一方でお菓子はレシピをきっちりと守らないといけないのだとも。
「りっちんがお菓子作りを苦手にしてたのって、料理での目分量に慣れてたせいでしょ」
「それはあると思う、料理の本にも塩や調味料なんかは性格な量ではまず書いてないし」
「あれってお前が美味しいと感じる量が適量でありひとつまみだぞって意味なんだよな」
「そうなんだよねぇ、だからお菓子作りはグラム単位で正確に量る必要があるし」
「料理の場合はひとつまみとか適量とかなのに、お菓子はきっちりなんグラムとかだもんね」
理津子がお菓子作りを苦手にしていた原因はレシピを守るという事にある。
料理においてはひとつまみとか適量とか書いてある事が多くそれに慣れていたから。
つまりレシピを守る事さえ守れれば普通にお菓子は美味しくなるのだと。
「にしてもチョコレートって元々は飲み物なんよね」
「そうだね、ホットチョコレートが本来で、ついでに甘くもなかったし」
「お菓子としてチョコレートが確立されたのってそんな昔でもないんだよな」
「チョコレートの言葉の意味って、あたしの世界だと苦い水っていう意味らしいし」
「本来のチョコレートは飲み物だし、なんなら苦かったと」
チョコレートは苦い水という意味なのだが、今はすっかり甘くなっている。
それに加え今のチョコレートはお菓子のイメージの方が強く、飲み物では通じにくい。
本来のチョコレートは苦い飲み物だったという話ではある。
「そういやこれカカオから作ったっしょ」
「そうだよ、カカオを買って作ったんだけど」
「お前、変なところで材料から作るよな、既製品を使ってもいいだろうに」
「カカオから作ったのはカカオの果肉を使いたかったからなんだよね」
「そういえばどこか味がするのはカカオの果肉なんだね」
カカオの果肉を使いたいからカカオ豆から作るのが理津子だ。
その辺は場合にもよるので、使いたいものに合わせて材料を買う。
カカオの果肉の美味しさを理津子は知っているようだ。
「そういやりっちんの世界だと今はバレンタインなんだっけか」
「そうだよ、バレンタインもすっかりお祭りになっちゃったけどね」
「まあ商売の匂いをショコラティエが嗅ぎつけたっていう事でいいだろ」
「ガチのプロが作ったチョコレートが食べられる日だしね、あたしも買いに行ったよ」
「祭りは盛大にやろうっていう事だね」
バレンタインはすっかり祭りになった今の日本。
海外のガチのショコラティエが祭りにカチコミをかけてくる日。
ショコラティエの最大の稼ぎ時の日でもあるのだ。
「チョコレートの和菓子もいいもんね」
「和洋折衷は結果として美味しい食べ物も増やしたよね」
「大福なんかも餅とチョコの相性がいいもんな」
「食材のマリアージュとかケミストリーだよね」
そんなバレンタインにお高いチョコを買いに行った事もある理津子。
今のバレンタインはショコラティエにとっての祭りである。
プロのショコラティエが集結する日、それが今のバレンタインだ。
祭りは全力でやろうという話なのかもしれない。




