茹でた落花生
冬の寒さはまだ続く真冬の季節、
とはいえ季節は少しずつ変わってきているのも感じさせる。
そんな中理津子は店で懐かしいものを買ってきた様子。
それは日本では割と定番なものでもあるようで。
「少年達はもう寝ちまったのかね」
「うん、もう寝たよ」
「そう、あたしらも仕事は終わったし少し休もうか」
そんな子供達は寝静まった夜にアノットと二人で晩酌をする理津子。
普段はあまり飲まないが、たまには飲む事もあるようで。
「にしてもお酒を飲む時間も夜ぐらいしか取れんわよね」
「普段は仕事も多いから仕方ないよ」
「そうね、それはそうと何か酒の肴とかないかしら」
「酒の肴、そうだ、なら作ってきてあげるよ、少し時間かかるけど」
「別に構わんよ、りっちんの作る酒の肴は美味しいし期待しとるぜ」
そんなわけで夜のキッチンに向かう。
そこで昼間に買ってきたものを茹で始める。
それから30分ぐらいしてそれが茹で上がる。
「お、出来たんかね」
「うん、茹で落花生だよ、昼間殻付きのものを見つけたから買ってきてたの」
「茹で落花生、落花生ってピーナッツの事よね?」
「そうだよ、それを殻ごと茹でたやつね」
「ふむ、ではいただいてみますかね」
理津子が作ってきたのは茹で落花生。
殻付きのまま塩茹でにしたものがそれになる。
煎ったものと違いホクホクしているのが特徴だ。
「ふむ、こいつぁ美味しいわね、茹でピーナッツなんてはじめてよ」
「茹で落花生ね、ピーナッツでもいいけど」
「落花生っていうのはピーナッツの日本の呼び方とかかしら」
「まあそんな感じかもね、日本のものは殻付きのまま売る事も多いから」
「へぇ、殻付きのままなんかいな、日本のピーナッツって」
ピーナッツ、日本で言う落花生は殻付きのままで売る事も珍しくない。
酒のつまみ、バタピーや柿ピーに使われるピーナッツ地は基本的に外国産である。
日本の殻付き落花生は割と高級品でもある。
「この殻付き落花生、美味しいわね、酒の肴に最適だわ」
「向いた殻はこの小皿にまとめてね、食べ終わったら捨てておくから」
「でも殻付き落花生なんて珍しいかも、東の国での売り方なのかしら」
「かもしれないね、日本の国産落花生は殻付きでそこそこ高いんだよね」
「ふーん、国産の落花生って割といいお値段するのね」
理津子も家で暮らしていた頃は夜に父親が酒を楽しむ時に一緒に食べていたという。
理津子自身はその時は未成年だったが、酒のつまみはおやつとして食べる程度には好きだった。
そこで茹で落花生も覚えたという事なのだろう。
「この殻が綺麗に真ん中から割れるのはキモティーわね」
「綺麗に割れない事もあるけど、殻が真ん中から綺麗に開くと気持ちいいよね」
「それにしても殻付きのまま茹でるものなんね、落花生って」
「そうだね、落花生は茹でる時は殻のままだよ、綺麗に泥を落としたりする手間はあるけど」
「そういう手間があるとはいえ、茹で落花生がこんなに美味しいってのは初体験よ」
アノットはすっかり気に入った様子の茹で落花生。
理津子がどこで買ってきたかというと、東の国の免税店のようなところらしい。
ここは貿易港なので海の向こうの国の食べ物なども入ってくるのだ。
「そういや茹で落花生って結構長い時間茹でるんよね?」
「うん、30分から40分ぐらいかな」
「思ってるよりも長いわね、味付けとかはシンプルなのに」
「茹で方にコツがあるからね、その関係だと思うよ」
「ふーん、ただ茹でればいいってわけでもないんね」
茹で落花生は大体30分から40分程度茹でなくてはいけない。
それに加えて下ごしらえなども必要なので実際はもっとかかる。
とはいえ酒の肴としては普通に美味しいものでもある。
「普段はすでに煎ってあるバタピーとかが多いから、茹で落花生は新鮮だわ」
「そもそもピーナッツはよく見るけど、落花生はあまり見ないしね」
「ピーナッツと落花生って同じものなんでないの?」
「基本的には同じものだよ、殻付きの状態を落花生って呼ぶだけでね」
「つまり殻付きかどうかで呼び方が変わるっていう事なんかね?」
落花生とピーナッツは同じものであり、名前の呼び方が違うだけである。
殻付きのものを落花生、渋皮がついたものを南京豆、どっちも取ったものをピーナッツと呼ぶ。
つまり落花生とは殻付きの状態の呼び名であるというだけである。
「はぁ、こいつぁ美味しかったわ、機会があったらまた作ってくれるかい」
「いいよ、殻付きのものが手に入ったらね」
「期待しとるよ、殻付きの落花生の美味しさにも目覚めたしね」
アノットがとても気に入った様子の茹で落花生。
とはいえ落花生とピーナッツは同じもので呼び方が違うだけに過ぎない。
殻付きと殻を剥いた渋皮付きの状態とどっちも取った状態で名前が違うというだけ。
茹で落花生は殻のまま茹でるから茹で落花生なのである。




