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中華料理屋のオムレツ

すっかり寒さが本格化している冬の港町。

そんな中理津子はたまに外食もしていたりする。

その上で家でもしっかり食べているのだが、意外と太らないもの。

屋敷での仕事がそのまま運動になっているからなのかもしれない。


「お、やってるね、たまにこういうところに来たくなるんだよ」


「さて、今日は何を食べようかな」


「よっし、いざ行かん」


そこは以前不思議な初老のおじさんに出会った街の個人経営の中華料理屋。


あの時からすっかりここのファンになってしまったようで。


「あっ、以前のおじさん」


「おや、いつぞやのお嬢さん、また食べに来たのですか」


「うん、おじさんも元気そうでよかった」


「そんな簡単にくたばるつもりはありませんからね」


「さて、何を頼もうかな」


少し汚れたメニューを見て何を頼もうか決める。

不衛生でこそないが、どこか年季を感じる汚れは長くここで営業していたという事か。


そんな中少し気になるメニューを見つけた様子。


「ん?オムレツ定食…中華料理屋なのにオムレツとな?」


「ここのオムレツは美味しいですよ、私もたまに食べるんです」


「へぇ、中華料理屋のオムレツか、せっかくだから食べてみようかな」


「きっと気に入りますよ」


「すみませーん!注文お願いします!」


理津子が注文したのはオムレツと炒飯のセット。

元料理人のおじさんも認めるそのオムレツ。


なのできっと外れる事はないと考えているのだろう、少しして料理が運ばれてくる。


「さて、いただきます」


「若いのにきちんといただきますが言えるのは偉いですね」


「ん、確かに美味しい…このオムレツ、何か隠し味でもあるのかな」


「卵の濃厚さに何かしらのスパイスのような味がするんですよね」


「うーん…あ、そうか!これ味覇だ、この世界には流石にないと思うけどそれに近い何かだ」


理津子が感じたその美味しさ、それは理津子の世界で言う味覇だと感じる。

流石にこの世界に味覇があるわけはないのだが、それに近いものがあるという事か。


つまりこの世界には中華の調味料が存在しているという事になる。


「炒飯も美味しいな、お店の火力だからもあるけど、この味は…卵が濃いのか」


「味についてもお分かりになるのですね」


「あ、はい、お父さんが自称元ホテルの料理人で、家ではお父さんの料理をよく食べてて」


「なるほど、お嬢さんの味覚はそうして培われたようですね」


「でも流石に味覇と同じものはないとしても、それに近いものがある、どこに行けば買えるかな」


味覇に似た調味料は確かにこの世界にある。

スパイス類は竜界が得意とする分野だが、これはどうなのか。


そもそも呼び方こそ違えども中華料理が存在している世界なのだ。


「そうだ、お爺さん、ここって海の向こうの国の調味料が買えるお店とかあるよね」


「ええ、港町で貿易港ですから、ありますよ」


「やっぱりか、だとしたらここのオーナー夫妻ももしかして…」


「なんにせよオムレツは美味しいでしょう、私もお気に入りなんですよ」


「そりゃ気にいるよね、それにこのオムレツ、スパニッシュオムレツみたいに具沢山だし」


そのオムレツは中華風オムレツとでも言うべきか。

とろっとした卵の中には中華料理で使いそうな具がたくさん入っている。


それに味覇のような調味料で味をつけてあるのだから、美味しくて当然である。


「それにしてもこの炒飯もなかなか、やっぱり火力は命って事か」


「ここの炒飯は下手に飾らないシンプルな玉子炒飯、それが実に美味しいのですよね」


「そうだね、肉とかいろいろ入ってるのも美味しいけど、これはこれで美味しいかも」


「シンプルな料理ほど誤魔化しが効かないんです、それを出せるのは腕に自信がある証拠ですね」


「確かに、オムレツもそうだけどプレーンオムレツを美味しく作れる人は凄いって思うし」


おじさん曰くシンプルな料理ほど料理人の腕が試されるのだという。

その一方でよほどの事がなければ、不味くもならないという。


だからこそシンプルな料理ほど誤魔化しが効かないという事なのだという。


「おじさんが言うシンプルな料理っていうのはこういう事なんだね」


「ここはオムレツが美味しいのは言うまでもなく、炒飯には自信があると窺えますからね」


「シンプルな玉子炒飯を出せるのは炒飯に自信がある証拠か」


「シンプルな料理が美味しい料理人は信用するに足りますからね」


「お父さんもそんな事言ってたなぁ、シンプルな料理は誤魔化せないか」


そんなオムレツと炒飯を平らげおじさんと一緒に店を出る。

おじさんも中華そばを美味しそうに食べていた。


おじさんもこの店がお気に入りという事が分かる。


「それじゃあたしは帰るね、おじさんも元気でね」


「ええ、また機会があれば一緒に食べましょう」


「うん、それじゃまた」


そうしておじさんと別れ屋敷へと帰宅する。

おじさんはここの安くて美味しい中華がお気に入りなのだろう。


理津子が感じたのは、海の向こうの東方の人がこの店のオーナーだという事。


そして味覇に似ている調味料がこの世界に存在しているという事だった。

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