ぶた?とん?
もう冬は目の前になり肌寒さが体に染みる季節になってきた。
それもあり理津子も温かい料理を多く作るようになってきた。
そしてこの季節には美味しい料理もまたある。
寒い日には体が暖まるのはやはり汁物の料理なのだ。
「すっかり冷えてきたわねぇ」
「もうすぐ冬だからな、暖房もそろそろ入れていいだろ」
「冬本番になるとこの街は寒いもんね」
そんな理津子が作っていたものは寒い日には嬉しいあれ。
やはり寒い日に美味しいというのは冬には欠かせないものである。
「美味しそうな味噌汁?この臭いは豚肉かしら」
「これは味噌汁じゃなくて豚汁だね」
「豚汁?味噌汁とは何か違うのか?」
「味噌汁に比べると具沢山で、体が暖まるよ」
「とりあえず食べてみようか」
理津子が作っていたものは豚汁だった様子。
またそれにけんちんうどんも作っていたようだ。
どっちも具沢山のあったかメニューだ。
「こっちのうどんも美味しいわね、このうどんも具沢山だし」
「けんちんうどんだね、豚汁とほぼ同じ材料で作れるからついでに作ったの」
「けんちんうどんってなんなんだ?何かの名前か?」
「諸説あるけど、お寺の名前が元になったとは言われてるね、精進料理なんだって」
「そういうものなんだ、精進料理って事は肉は本来は使わないのかな?」
けんちん汁及びけんちんうどんは元々は精進料理だという。
なので本来は肉は使わず、野菜やこんにゃくをごま油で炒めて作る汁物だ。
ごま油で炒めた野菜やこんにゃくを醤油で味を調えて作るすまし汁の一種らしい。
「にしてもこの豚汁ってクッソ美味しいわね、体は温まるし具沢山だし」
「日本だと寒い日の豚汁は定番なんだよね」
「でも読み方はとんじるでいいのか?」
「それは諸説あるけど、正しくはぶたじるらしいよ」
「正しくはぶたじるなんだ、でもリツコはとんじるって読んでるよね?」
豚汁は正しくはぶたじると読むらしい。
ただそう読むのは主に関西や東北で、関東などではとんじると読む事が多いとか。
なおどっちでも特に問題はないので、好きに呼べばいいと思うよという事らしいが。
「読み方の問題って何かと複雑なんね」
「まあ日本語は同音異義語も多いし、なんなら英語だってそんな感じだしねぇ」
「同じ言葉でも文字に起こすと違う文字を使うってやつだよな?」
「そう、日本語はそれが多いし、英語でもそういうのはあるし」
「同じ発音だけど綴りが違う言葉ってやつか」
漢字の音読みと訓読み、それもあり豚汁はとんじるとぶたじるに分かれたりする。
ただ英語なんかも明かりのライトと右側のライトと軽いを表すライトがあったりする。
言語は割と面倒臭いとも言えるのである。
「まあその辺は好きでいいのね、この豚汁も熱々で具沢山、味は味噌かしら」
「うん、豚汁は味噌汁に油を加えた感じのものかな」
「熱が逃げないのは油が使われてるからなんだな」
「そうなんだよね、熱が逃げないから熱々の豚汁になるんだよ」
「でもこれだけ具沢山の味噌汁って感じだと美味しいかも」
豚汁は熱々の味噌汁という感じの料理。
熱が逃げないようにする工夫は脂で膜を作り放熱を防いでいるという。
これも理津子の父親から教わったちょっとした裏技なのだという。
「でも熱が逃げない豚汁とか、料理の裏技って感じが凄いわね」
「お父さん曰く湯気が出てると放熱されるから、湯気を出さなければいいらしいよ」
「そういえばこの豚汁、湯気が出てなかったな、今気づいた」
「脂で膜を作って放熱を防いでたからね、つまり湯気が出ないっていうのは蓋があるからだよ」
「なるほど、脂の膜が蓋になって放熱を防いでる、湯気が出ないのはそういう事なんだね」
理津子が父親から教わったちょっとした裏技とも言えるやり方。
ちなみにこの技術自体は飲食店なんかでもやっているところがあるのだとか。
脂の膜が蓋となり、放熱を防ぐ、それはつまり湯気が出ないという事にもなるのだ。
「でも豚汁もけんちんうどんも、温かくて美味しいし、野菜もたっぷりでいいわね」
「そうなんだよね、寒い日には体も暖まるし、炊き出しとかでも豚汁は定番なんだよ」
「寒い日に熱々の豚汁、そりゃ体も芯から温まるってわけだよな」
「寒い日は体を芯から温めるのが一番暖かくなるからね」
「体を芯から温める、だからスープとかお風呂がいいって事なのか」
寒い日にはスープや風呂がいいという理由。
それは体の芯から暖まるからという事なのだと。
寒い日には温かい缶の飲み物が美味しいのもそういう理由だ。
「はぁ、美味しかったわ、体もポカポカよ」
「よかった、寒くなったらまた作るね」
「野菜を摂る手段としてもこれなら僕はいいと思うし」
「こういうのなら野菜もモリモリ食べられるよね」
豚汁は寒い日にはやはり好評なようである。
なお読み方については好きに読めばいいという事なので好きに呼ぶ事にする。
けんちん汁及びけんちんうどんも冬には嬉しいもの。
温かい汁物は冬には何よりも美味しいのだから。




