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レトロ喫茶の味

夏の暑さは少しは落ち着きこれから秋になっていく季節。

そんな中用事で役所に行った帰りに風変わりな店を見つける。

ちょっと気になったのでその店に入ってみる事に。

そこはどうやら日本で言うレトロ喫茶のようで。


「こんなお店があったんだ、なんだろうここ」


「とりあえず入ってみようかな」


「なんのお店なんだろうね」


そんな店に入っていく理津子。


初見の店でも堂々と入っていけるのは理津子の強さなのかもしれない。


「レトロ喫茶…なのかな?」


「おや、いらっしゃいませ、お嬢さんのようなお客が来るとは珍しいですね」


「えっと、お爺さんがここのオーナー?」


「はい、以前やっていた仕事を引退したので、完全な道楽で始めたお店です」


「なるほど、完全な道楽、老後の趣味みたいなものかな」


そんなオーナーのお爺さんは見た感じからして60代後半ぐらいか。

喫茶店だけにコーヒーや軽食などが揃っていた。


またコーヒーの他に紅茶なども置いている様子。


「何にしようかな」


「なんでも構いませんよ、お客は少ないのですぐに作れますから」


「うーん、じゃあコーヒーとプリン、あとはババロアをもらおうかな」


「かしこまりました、ではすぐにお持ちしますね」


「デザート類も結構充実してる、完全な道楽っていうのも納得かも」


そんな事を考えているとすぐにコーヒーとプリンとババロアが運ばれてくる。

完全な道楽でやっているとは思えない完成度の高さに驚く理津子。


このお爺さんは以前は料理人やパティシエなどをしていたのかと思ってしまう。


「ん、このプリン美味しい…少し硬いけど、それが凄く美味しい」


「プリンは得意なんですよ、チーズを加えるのが美味しさのコツなんです」


「へぇ、イタリアンプリンみたいな感じなのかな」


「ハードタイプのプリンの方が味が濃厚になりますからね」


「そういうものなんだ、カスタードプリンとはまた違うのかな」


そんなプリンをあっという間に平らげコーヒーをいただく。

コーヒーは苦いながらもコクと深みがある事を感じさせる。


オーナー曰くカフェモカが当店の美味しい飲み方らしい。


「うん、このコーヒー美味しいね、いい豆なのかな」


「ほう?コーヒーの味が分かるとは、意外といい舌をしていますね」


「でもコーヒーにこだわりがある当たりは老後の道楽って言われても納得かも」


「ちなみに当店のおすすめはカフェモカなのですが」


「言うねぇ、ならカフェモカも追加でお願いします」


オーナーに乗せられたようにカフェモカを頼む理津子。

客は理津子だけなのですぐにカフェモカが運ばれてくる。


ミルクの香りもいい感じのカフェモカは実に美味しそうだ。


「うん、このカフェモカ美味しいね、自信があるのかな」


「ふふ、以前からカフェモカには自信があったのですよ」


「お爺ちゃん、前の仕事って何をしてたの」


「ちょっとした使用人ですよ、ご主人がカフェモカがお好きでしてね」


「へぇ、執事とかそういうものかな」


オーナー曰く前の仕事は使用人だとのこと。

その際に主人がカフェモカが好きでよく作っていたという事らしい。


ちなみに甘いもの、特にプリンも好きだったのだとか。


「でもコーヒーの美味しさからして、いい豆を仕入れてるよね?」


「ええ、仕事をしていた時の伝がありますので」


「でもこのコーヒーってブレンド?味からしてブレンドには感じないけど」


「おや、分かるのですね、この豆は竜界から仕入れている高級豆なんです」


「高級豆、それをこの値段で出せるのか」


オーナーが言うには完全な道楽なので、値段設定は完全な採算度外視である。

なので赤字であろうとも全然問題はないとか。


道楽だからこそ出来る値段設定というのはこの世界でもあるものらしい。


「このババロアも美味しいね、プルプルでイチゴの味がしっかりしてる」


「以前の主人が甘党でしたのでね、甘いものとコーヒーの組み合わせが最高だとか」


「あー、分かるかも、甘いものを食べる時ってコーヒーが欲しくなるよね」


「なのでコーヒーと甘いものには自然と詳しくなってしまいましてね」


「なんかいいご主人様に恵まれたんだね、お爺ちゃん」


以前の主人が甘党だったので自然と詳しくなったのだという。

コーヒーと甘いものの組み合わせはこの世界でも定番らしい。


アメリカの定番でもある警官がコーヒーとドーナツみたいな話なのか。


「そろそろ帰らなきゃ、美味しかったよ、はいお代」


「ありがとうございます、あなたのようなお客が来てくれて嬉しいですよ」


「それじゃ失礼しました、気が向いたらまた来るかも」


そんなレトロ喫茶を偶然見つけた理津子。

オーナーは引退した老人であり、完全な道楽である。


完全な道楽なので赤字であろうとも何も問題はないという。


やはり老後の趣味とはそういうものなのかもしれない。

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