森の国観光~夕食~
温泉から上がりロザリオと合流した理津子とセルベーラ。
夕食はこのホテルの食堂でいただく事に。
名物は獣肉や野菜などで、一風変わった肉も出る。
理津子もそういった肉は久しぶりのようで。
「お、美味しそうな肉料理が多いね」
「この国の名物の獣の肉だって、熊とか鹿とかイノシシとか」
「早く食べようよ」
急かすセルベーラをなだめつつ席に着き食事をいただく。
理津子は珍しい肉は食べた事があるので抵抗はないようだ。
「ん、この鹿肉美味しいね」
「こっちの熊肉も美味しいよ」
「こういう肉って調理が結構面倒なんだよね、臭みを抜いたりとかさ」
「この国は森の国ってだけあって猟師とかも普通なんだよな」
「そっか、つまりこういう肉の扱いには慣れてるって事だよね」
森の国と言うだけあり猟師はこの国では欠かせない職業でもある。
畑などを守るために農家には必ず一人は猟師がいるとも言われる。
そうして畑を荒らすのに出てきた野生動物を駆除してきちんと消費しているのだ。
「こっちは天ぷらだね、というかこの世界にも天ぷらが普通にあるんだ」
「天ぷらは世界的には珍しい料理らしい、基本的にはフライが主流だって聞くし」
「ふーん、あ、これモロヘイヤだ、モロヘイヤの天ぷらって美味しいんだよね」
「野菜の王様だっけ?」
「そうそう、栄養価とか凄く高くてそれからそう呼ばれるやつ」
この世界にも和食に属するものは普通にあるようではある。
とはいえ世界的に見れば天ぷらのようなものは珍しいという。
だが海の向こうにある国から伝わったという話があるとロザリオは言う。
「この国の名物は獣肉と野菜か、森の国だけど農業も盛んなんだね」
「都市開発もされてるからな、そういった場所は切り開かれてたりするよ」
「それも仕方ないんだろうね、でも観光とかで見た森は壮大だったし」
「元々ある森は国を守るためって聞いたけど」
「あー、そっか、森は天然の迷路だもんね」
この国にも当然国が抱える軍隊がいる。
その軍隊は強力な陸軍で森の中では無類の強さを誇るらしい。
つまりは地形を最大限に生かした戦いを得意とするという。
「国の事情も様々、それだけの話なんだよね」
「そもそも軍隊を持たない国なんて侵略されて終わりだよ、当たり前だよね」
「平和とは戦うから手に入る、無抵抗で守れる平和なんかない、かな」
「僕達の国にも帝国軍がいるしね、平和っていうのはそういうものだろ」
「こうして美味しいお肉が食べられるのも国を守ってくれる軍隊のおかげ、だね」
そんな話をしながらたくさんの肉と野菜をきっちりと平らげる。
結構な量があったはずなのに、気づけば理津子の胃袋に多くは消えていた。
セルベーラも燃費は悪いという事ではあるが、たくさん食べていたわけで。
「デザートももらってこようかな」
「私ももらいに行く」
「少年は何か食べる?」
「ならモンブラン」
「はいよ、そんじゃ少し待ってて」
あれだけ食べてもデザートは別腹である。
別腹はあると科学的にデータがあるらしいとの事。
ちなみにこの国のデザートは栗や木の実や芋のデザートが多い。
「はい、モンブラン」
「ありがと、というかお前どんだけ食べる気だよ」
「迷ったら全部、それがあたしのモットーだから」
「リツコってそれなのになんで太らないの?世の中おかしいよね」
「それじゃ、食後の甘いものもいただきます」
迷ったら全部、それがリツコのモットーなのだという。
そのためここに来る前は結構な浪費家だったようだ。
ちなみに家は食堂と言いつつも父親の貯金がたんまりあるので、意外と余裕だとか。
「んー、これは幸せの味だね」
「本当にどこに消えてるのかと思うし、そのモットーでよく生きてこられたな」
「結構な浪費家とは言われてたよ、大体食べ物に消えるけど」
「実は機界人じゃないの?リツコって」
「そんな事はないから安心していいよ」
そんな事を話しながら夕食もきっちりと食べ尽くした。
そのあとは部屋に戻り明日の帰る準備などもする事にした。
一泊二日の森の国観光は明日には帰国する事になる。
他の国の事も知れたのは理津子にとっても好奇心を駆り立てられる結果になったようだ。




