好きなジャム
すっかり夏本番の暑さになったようで、外は暑さがきつくなってきた。
とはいえ海沿いの港町は海風があるので、内地に比べたら涼しくもある。
また貿易港も兼ねているので異国のものや異世界のものも多く買える。
貿易港というのは珍しいものが並ぶからこそ面白いのだ。
「りっちん、果物をいろいろ買ってきとったね」
「何をするんだ?ジュースでも作るのか?」
「でもパンの焼ける匂いもしてるよ」
果物をいろいろ買ってきていたという様子の理津子。
何を作るのかというと、今回はパンには欠かせないあれらしい。
「それってもしかしてジャムなんかね」
「うん、果物が安かったからジャムでも作ろうかなと思って」
「ジャムもいろいろ作ったな、複数種類があるし」
「ジャムといえばやっぱり果物だからね」
「果物、どれがなんなんだろう」
とりあえず焼いた食パンと一緒にジャムをいただく事に。
作ったジャムはいちごにブルーベリー、マーマレードにりんご、他にもいくつか。
ジャムは作るのが手間なので、基本的には買うものだが、気が向いたら作るらしい。
「美味しいわね、これはなんのジャムなんかしら」
「それはキウイジャムだね、意外と美味しいでしょ」
「こっちのはラズベリージャムか?」
「そうそう、ベリー類が特に安かったからね」
「ベリー類のジャムが多いのか、定番のものもあるけど」
果物の他にベリー類が安かったので、ベリー類もたくさん買ったらしい。
ベリー類はジャムに出来るものも多く、それも美味しいのだ。
理津子もジャムの作り方は父親から聞いているようで、よく出来ている。
「ベリー類のジャムが多いわね、こっちはクランベリージャムみたいね」
「ベリー類はジャムにすると美味しいからね、ここはいろいろ買えるから助かってるよ」
「まあ珍しい果物って空界から入ってきたものが多いしな」
「そうなの?果物の多くは空界から入ってきたんだね」
「うん、果物って木に実るものだから、空を飛べる空界人はいろいろ育てるらしいよ」
そういう理由で果物を多く育てている空界人。
こっちの世界でも果物の農園は空界人がオーナーな事が多いという。
空を飛べるというのは高い木に実る果物も収穫しやすいからという理由らしい。
「こっちのはりんごジャムね、なんだかんだで定番の味って感じがするわ」
「りんごジャムだと日本のりんごはジャムに不向きで、外国のりんごで作ってたらしいね」
「そうなのか?りんごにもそういう向き不向きってあるんだな」
「うん、日本のりんごよりイギリスのりんごとかの方がジャムには向いてるとか」
「そういう向き不向きってやっぱり品種による味の違いなのかな」
日本のりんごはジャムには不向きで、海外のりんごの方が向いているという話。
別に日本のりんごでも作れるが、そんなに美味しくならないという。
アップルパイなんかも西洋のりんごの方が美味しくなるとかはあるらしい。
「りんごの話はいろいろ複雑なもんなんね」
「そうなんだよね、西洋のりんごも日本のりんごもそうだけど、向いてるものってあるから」
「でもこのりんごジャムは美味しいな、ジャム向きのりんごって事なのか」
「そういう事みたいだね、ジャムにはジャムに合うりんごがあるんだよ」
「りんごジャムって難しいんだね」
とはいえ今回のりんごジャムはよく出来ている様子。
ジャムというのはりんごに限らずどれも甘くて美味しいのがいい。
理津子の作ったジャムはどれもよく出来ているようである。
「にしてもこの食パンも美味いわね、りっちんの作るパンってなんでこんな美味しいんかしら」
「たぶん生地に牛乳とかバターを混ぜ込んで作ってるからだと思うよ」
「パン生地に牛乳とかバターを混ぜてたのか、そりゃ美味しいわけだな」
「あたしの住んでた国だとパン作りは大体そうやって作ってたからね」
「パン生地に牛乳とかバターを混ぜ込むと保存は効かなくなるんじゃない?」
実際日本のパンは賞味期限はかなり短い。
そもそも西洋でよくある黒パンは保存食である。
ついでに湿度が低い西洋の国では白パンもほぼカビる事がないのだ。
「にしても生地に牛乳とかバターを混ぜ込むとは、そういうのもあるんね」
「パンも国によって異なる発展を遂げたって事だよね」
「あとは環境の違いなんかもあるんだろうな」
「そうだね、白パンも西洋の国ではカビないらしいし」
「へぇ、興味深いかも」
そんなパンも環境によって変わる話。
ジャムはパンには欠かせないものではあるが、そのパンもまた国によって事情がある。
パンも湿度には弱いという事なのである。
「ジャムもパンも美味しかったわね」
「ジャムに出来る果物もいろいろ手に入るから作ってて楽しいしね」
「食材が豊富っていうのは強いんだな」
「ここは貿易港でもあるもんね」
ジャムに使える果物が豊富にある貿易港の港町。
珍しい果物の多くは空界から入ってきたという異世界交流の歴史。
果物は加工して食べた方が美味しいと理津子は思っている。
ジャム作りで余った果物は冷凍してあるらしい。




