港町は涼しい
異世界の方も夏本番となりその暑さも本格化してきた。
そんな暑い日差しの中でも港町は海風があるため多少は涼しい。
海風による涼しさは日本ではあまり感じられなかったものでもある。
日本でも海沿い県に住んではいたものの、内陸の方に住んでいたのが理津子である。
「ふぅ、やっぱり港町って涼しいわ、快適だぁ」
「あら、リツコじゃないの」
「あっ、レミリア、こんな暑い日に珍しいね」
そこで鉢合わせたのはレミリアだった。
とりあえず近くの涼しい店に入り駄弁っていく事にした。
「それにしても夏の日差しの中に出てくるなんて珍しいね」
「別に灰になったりはしないけど、暑いのは苦手なのよね」
「灰にはならないけど、太陽に弱いのはあるんだね」
「吸血鬼はそもそも暗い環境で生きてる種族だから眩しい光を苦手にする人は多いわよ」
「そうなんだ、灰にはならないけど太陽の光には弱いのか、だから日傘を差してたのか」
レミリア曰く吸血鬼は灰にはならないが眩い光を苦手にする人は多いという。
それは吸血鬼という種族が本来は暗い環境を好む種族だからという。
レミリアも夏は日傘を差して外出する事が基本なのだとか。
「でもここはいいね、港町で海風が涼しいし」
「あなたは砂漠からでも来たのかしら」
「砂漠ではないけど、あたしの住んでた国って夏はアホみたいに暑くなってたからね」
「そんなに暑い国に住んでいたの?」
「しかも湿度が高くて、特に夜はムシムシジメジメして不快感マキシマムだし」
日本という国は夏はアホみたいに暑くなるし、夜は湿度マシマシで不快感マキシマム。
そんな環境で暮らしていると夏が嫌いになるのも無理はないというもの。
理津子も昔は夏が好きだったが今では夏は嫌いになったという。
「とにかく気温が高くて湿度が高い夏になる国だからね」
「なるほど、あなたが夏に対して抱いてるイメージはそういう不快なものなのね」
「砂漠の国から来た外国人が母国より日本の方が暑いって言うぐらいだもん」
「砂漠の国の人が裁くより暑いっていう夏が来る国ってどういう事なのかしら」
「それぐらい湿度に依るジメジメが凄いっていう事だよ」
レミリアもそんな夏が来るという日本という国の過酷さは感じ取る。
砂漠の国から来た人が母国より日本の方が暑いというのも誇張ではないという事。
理津子が夏を嫌いになったのはそんな暑さと湿度のせいでもあるという。
「湿度が低めで海風もあるこの港町は天国だよ、本当に」
「あなた、どんな不快な環境で暮らしてきたのよ」
「湿度がとにかく高いんだよ、高い時には湿度が80%を超えるとかあったからね」
「湿度が80%は水中か何かかしら」
「あたしの家にも湿度計があったんだけど、一番高かった時は湿度が88%だったよ」
理津子曰く家の湿度計で出た最高湿度は88%らしい。
そこまで湿度が高くなる日本という国がもはやとんでもないという話である。
それはもはや水中か何かかという話になってくる。
「だからここはあたしからしたら天国だよ、湿度も低くて海風が涼しいしね」
「あなたの暮らしていた国の環境がどれだけ過酷なものか伝わるわね」
「湿度計で湿度が90%近く叩き出すような国だからね」
「湿度というのはそれだけ不快感があるものという事なのが分かるけど」
「それなんだよね、ここは湿度が低めだから、快適でもうね」
理津子からしたら日本より湿度が低いだけで全然快適さが違うのだという。
その湿度が今の理津子の快適さを得られている理由である。
湿度が日本に比べて低いというのはそれだけで心の持ちようが違うのだ。
「レミリアは日光が苦手なんだよね」
「ええ、まああなたの言うように灰になるなんて事はないけどね」
「夏に対して思うところはお互いに何かとあるんだね」
「そうね、私も夏は好きじゃないもの」
「夏が嫌いなのはお互い様か」
理津子も子供の時は夏が好きだった。
それは今より気温も低かったからではある。
そして異世界の港町の夏は湿度が低めで海風による涼しさもあり快適そのものだという。
「夏は窓を開けても風が吹いてなかったらただ暑いだけだもんね」
「エアコンもあるし、夏は明確な目的もなかったら外に出る理由がないわよ」
「それすぎるよね、日本も近年は40度近くなる日が普通にあるし」
「夏でも40度近いは流石に何かの冗談なんじゃないの」
「本当にそれぐらいの気温になる日があるんだよ、夏の暑い日はね」
レミリア曰くこの街の気温は最高でも34度ぐらいらしい。
温度計なども設置されているので間違いはないという。
やはり湿度が低めで風があるというのはそれだけ涼しくなるのだろう。
「やっぱりエアコンの効いた室内はいいね」
「今回は奢ってあげるから、好きなだけ頼んでいいわよ」
「マジ?ありがとうね」
そんな夏の暑さについて語り合う理津子とレミリア。
日本という国の暑さは気温だけではなく湿度による不快感が大きいもの。
カラッとした暑さというのが羨ましいと思った事もある。
レミリアも日本の夏は流石に何かの冗談かと思うらしい。




