汚れと工業
夏が近づき少しずつ暑い日が増え始めてきた。
そんな中この世界の工業技術なんかは異世界から持ち込まれ根付いたものも多い。
異世界と交流があり、そうしたものの往来もある世界だ。
それを見ているとサインと出会い、甘いものでも食べつつ少し話す事に。
「それにしてもこの世界の工業技術とかって大したものだよね」
「そうですね、機界から入ってきたものに限りませんから」
「でも工業にも歴史ありって感じはするなぁ」
そんな工業については港町という事もあり歴史はある。
古くは工業排水や大気汚染の問題はどうしてもあったようである。
「この世界も昔は工業排水とか大気汚染の話とかあったの?」
「そうですね、あるにはありましたよ、今はそれも改善されていますが」
「やっぱりあったのか、工業の歴史においてそれは避けられないと」
「ええ、まあ改善されたとはいえ水や大気は綺麗すぎても駄目なんですが」
「確かに魚なんかは水が綺麗すぎてもその水には住めないっていうよね」
サイン曰く水や大気は綺麗すぎても駄目なのだという。
だからこそ適度に汚れている程度が一番環境としてはいいらしい。
なんとかは田沼恋しきみたいな話である。
「でもクリーンエネルギーっていうのはやっぱり難しかったりするの?」
「そもそもクリーンエネルギーなんてものは夢物語、絵に描いた餅、そんなものですよ」
「機界出身のサインがそう言うからには嘘ではないのか」
「私もエネルギーの開発をしている身ではありますが、そこはどうにもならないので」
「そこはやっぱりなのか、クリーンエネルギーは夢物語、絵に描いた餅、なるほど」
サインが言うにはクリーンエネルギーなどというのは幻想でしかないという。
だからこそクリーンではなくともそこを改善したものを作る。
サインは少しでも環境にいいものを開発しているらしい。
「でも環境汚染っていうのは人間がどうにかしたところで焼け石に水なんじゃないの?」
「人間のやった事は大きいものの、人間だけが悪ではないですしね」
「そこはやっぱりそうなんだ、そういう認識はあるんだね」
「そもそも人間が手を打ったところでどうにもならない話の方が多いですからね」
「なるほど、だからそういうところは割り切ってるのかな」
サイン曰く努力はしているが、その努力でなんとかなるならとっくに解決しているとも。
なので環境の問題に関しては人間だけが悪というわけでもない。
なんにせよ環境問題は解決は簡単な話でもないという事である。
「でも割り切った方が制約とかは少なくなるのかな」
「そうですね、結局は配慮しすぎると進化を阻害してしまいますから」
「つまり自分達で進化を遅くしたら元も子もないって事か」
「ええ、環境問題に関してもたくさん出しているところを叩くのが必要ですし」
「やっぱりそうなるのか、大気汚染でも工業排水でもたくさん出してるところを潰せと」
サイン曰く環境問題に関しては工場を潰したぐらいではどうにもならないという。
それでも排水を少しでも綺麗にする事が水質の改善には繋がるのも確か。
結局は水が綺麗になりすぎると魚は住めないという話らしい。
「異世界でも工業排水とか大気汚染の問題ってあるんだなぁ」
「工場なんかがあるという事は避けられない問題という事ですよ」
「でも改善は出来るけど、解決は出来ないって事でいいのかな」
「そういう事ですよ、改善は出来ても解決はたぶん一生出来ないかと思います」
「そこは難しい話なんだなぁ、サインは当事者だもんね」
サインも環境問題の難しさは知っているのだろう。
また他の異世界の人達もそうした経験から、改善だけは出来ているとも。
環境問題は改善は出来ても解決は出来ないのが本質なんだろうか。
「環境問題については簡単な話じゃないんだね」
「ええ、まあそれでも水を綺麗にしたりする努力は出来るんですよ」
「こっちの世界の人も努力はしてきたんだね」
「環境問題は難しいんですよ、綺麗にしすぎても他の生き物が住めなくなりますから」
「まさになんとかは田沼恋しきってやつなんだなぁ」
なんにせよ異世界であろうと工業がある以上環境問題は発生する。
サイン曰く改善は出来る、解決は出来ないという考えらしい。
そういう答えに行き着いたからこそ、出来る事はしているという事なのかもしれない。
「さて、そろそろ屋敷に帰らなきゃ」
「聞きたい事はいつでも聞いてくださいね」
「うん、また甘いものでも食べようね」
そんな工場を見て思った環境の話。
改善は出来る、解決は出来ないというサインの言葉。
それが生きていくという事なのかもしれない。
環境とはなんとかしようとしてなんとか出来るものではないのだろう、きっと。




