桜が咲く頃
すっかり春の陽気になり寒さはほぼ過ぎ去った暖かな日々。
そんな中今年も帝の神社では桜が咲き始めた。
異世界にも桜の花があるというのは意外なものではある。
今年はお花見をするかどうか考える事にした。
「もうすっかり春で、桜の花も咲き始めたのか」
「おや、リツコサンじゃないデスか」
「あ、エミールも何か買い物かな」
買い物帰りにエミールに遭遇した理津子。
とりあえず少し話していく事に。
「今年も桜が咲き始めたんだね」
「ハイ、尤も満開になるのは来月の半ばぐらいデスね」
「来月の半ばか、もう少しあるね」
「今年もお花見でもしマスか?」
「そうだね、雨が降らなければしようか」
晴れていたら花見をしようという事にはなった様子。
とはいえ桜が満開になる前に雨で散ってしまう可能性もある。
その時はまあ仕方なかったという事になるのだろう。
「そういえば帝は相変わらず引きこもってるのかな」
「ハイ、まあネットで色々やっているので何もしていないわけではないデスよ」
「そういう所は技術様々だね」
「ハイ、あとこの季節は和菓子も美味しい季節デスね」
「あー、そういえば桜餅とかが出始める季節か」
そろそろ桜餅などが出始める季節である。
理津子も自分で作れるものの、やはり買ったものの方が美味しく感じてしまう。
お店の味は家庭では意外と出せないものなのだ。
「それにしてもお花見か、お花見って結局は花より団子になる事が多いよね」
「それは仕方ないデスよ、花を見てもお腹は膨れマセンから」
「それを言ったら元も子もなさ過ぎる」
「そもそもお花見というのは桜の見える場所で飲んで食べて騒ぐものデスからね」
「まああたしの世界でも社会人のお花見とかそんな感じらしいしね」
花見とは結局は花より団子である。
それについては理津子も否定はしないようで。
実際花見において花の方を楽しむ人はどの程度いるのだろうか。
「花より団子って言うけど、花の方がメインになるのって珍しいよね」
「そればかりは花見と言いつつも仕方のない事ではあると思いマスよ」
「実際にそういうものになってるもんね、お花見って」
「まあこちらの世界だとあまり馴染みのない文化ではありマスが」
「それはねぇ、桜の花とかそういうのがまずなさそうだし」
エミール曰く花見は珍しい文化なのだという。
それも仕方ないのかとは思いつつも、やはり東洋と西洋の違いみたいなものはあるのだろう。
なのでお花見は基本的にはこの国ではマイナーな文化である。
「エミールも結局は花より団子なんでしょ」
「ハイ、やっぱり美味しい食べ物の方がいいデスから」
「エミールらしいねぇ、でも嫌いじゃないよ」
「美味しい食事というのはやはり心が落ち着くものデスから」
「それは分かるかも、美味しい食事ってそれだけで幸せな感じがするよね」
エミールも結局は花より団子なのである。
そもそもお花見において花がメインになる事はどの程度あるのか。
やはり花見とは花より団子になるのが宿命なのかもしれない。
「でももう桜が咲く季節なんだね、あっという間だったなぁ」
「一年は意外と速いものデスよ、不思議な話デス」
「確かにね、あたしも小学生の時は20分ですら凄く長く感じたのに」
「私は長命な種族デスけど、それでも時の流れは速く感じマスよ」
「やっぱりそんなものなんだね、不思議な話だなぁ」
時の流れは速い、それはいつからそう感じるようになったのか。
時の流れは残酷であるという事なのか。
ちなみにエミールは長命な種族らしく、人間の三倍程度は生きられるという。
「それで花見の予定はいつ頃にしようか」
「満開になるのが来月半ばなので、それより少し前ぐらいがいいかと思いマス」
「分かった、それぐらいで覚えておくよ」
「ハイ、あと料理は好きにして構いマセンよ」
「分かった、出来そうならそれぐらいで準備しておくよ」
とりあえずの予定は満開の少し前ぐらいの日で調整する。
花見の際には料理などを持ち寄ってもいいという。
あとは雨にならない事を願うのみである。
「とりあえず来月の半ばぐらいか、雨が降らないといいけど」
「天気はチェックしておかないとデスね」
「あたし雨女って言われる事があるから、それはちょっと不安ではあるけど」
「そればかりは仕方ないのではないデスか」
「雨にならないといいけど、まあ信じるしかないか」
そんなお花見の予定は大体決まった。
あとは雨が降らない事を願うのみになった。
理津子曰く雨女と言われる事もあるらしい。
「それじゃそろそろ行くね」
「ハイ、お花見楽しみにしてマスよ」
「うん、それじゃね」
そうして屋敷に帰り予定の確認もする。
花見は満開になる少し前の時期に合わせてある。
桜が満開になる少し前が一番いい時期なのかもしれない。
美味しい料理も用意しようと考えるのだった。




