森の国観光~出発~
あれから観光に行く事も決まり、荷物もまとめた理津子とロザリオ。
アノットは面倒だしだるいからと留守番になった。
セルベーラは一緒に来る事になったので、三人旅だ。
日帰りは流石に無理なので、一泊二日で行く事になったようである。
「それじゃ行ってくるね」
「はいよ~、留守は任せといてね」
「あまり荒らすなよ」
不安はあるものの、アノットに留守を任せ出発する。
まずはバスで隣国の森の国への鉄道の駅へ向かう。
「にしてもバスも快適だね」
「凄いねー、私の国の技術も役に立ってるんだ」
「機界の技術とこの人界の技術が協力して出来たんだよね」
「そうだよ、移動手段の機械化はその世界の人達の協力あってこそだ」
「だとしたら世界は広いね、専門分野はやっぱり強いって事か」
そんな話をしつつ景色を眺めながらバスは駅のあるターミナル都市へと到着する。
その駅は複数の国と帝都に向かう鉄道の始発駅になっている。
指定席券をあらかじめ買ってあるので、それを探す事に。
「駅も大きいし綺麗だね」
「始発駅は基本的にこんなもんだぞ」
「ふーん、でもここからいろんなところに行けるんだ」
「どれに乗るの?」
「えっと、5番ホームだね、お弁当でも買っていこうか」
時間はある程度余裕があるので駅弁を購入する事に。
売店で各自食べたいものと飲み物を買う。
そのタイミングでホームに森の国行きの列車が入ってくる。
「車内の清掃があるから、それが終わってからかな」
「鉄道の旅なんて楽しそうだね」
「だね、あたしも旅行に行くときは飛行機じゃなくて鉄道使ってたし」
「リツコって意外と景色とか見たい人なのか?」
「それはあるかもね、あと県境を越えたっていうのが分かるのが好きだったから」
理津子曰く、旅行は必ず鉄道だったという。
その理由としては県境を越えたのが分かるのが好きなのだとか。
県境を越えると景色が変わる、それを楽しんでいたのだそうだ。
「あ、清掃が終わったみたい、乗るよ」
「わくわくするね」
「こっちの世界の鉄道ははじめてだしね」
「こういうのもいいのかな」
「少年は旅行とか観光はあまり行かない人なのかな」
そんな話をしつつ列車に乗り込み指定席を探す。
少ししてその席を見つけ、シートを回転させる。
荷物を回転させたシートの裏に置いて、出発を待つ事に。
「そういえば森の国は思ったより近いけど、他の国はどうなの?」
「他の国?うーん、帝国領は結構広いけど、終点は国境駅だからそんな時間はかからないな」
「だとしたら国の領地が思ってるより広くても、行くのにはそんなかからないのか」
「この世界だと国境とか何かと面倒だね」
「機界はそういうのないのかな」
そうしているうちに他の客も次々に乗り込んでくる。
それから少しして発車のアナウンスが鳴る。
チャイムが鳴り終わると鉄道が走り始める。
「国によって時間は違うのは当然として、一番遠い国は時間はどれぐらいなの?」
「一番遠い国か、航空機で10時間、乗り継ぎの鉄道は8時間ぐらいだな」
「やっぱりそれぐらい使うんだ」
「一番遠い国ってどんな国なんだろう」
「確か帝国は大陸南東部で、あたし達の住んでた街はその南西だよね」
世界地図ではロザリオの住む街は帝国領の南東。
帝国の位置は海に面した大陸の南南東になる。
森の国はその港町から北東へ行った先にある、中規模の国だ。
「さて、お弁当食べようか」
「リツコは散々迷って二つ買ったのか」
「前は悩んで選んでたけど、こっちだとお金は好きに使えるからついね」
「浪費癖をつけちゃ駄目だよ」
「気をつけます」
そんな話をしながら購入したお弁当を食べる。
鉄道は順調に森の国へと向かって走る。
景色が変わっていくのを見るのが理津子は好きなのだという。
「んー、このお弁当おいひぃ」
「リツコってそれだけ食べてるのに、なんで太らないんだ」
「運動は一応してるよ、あと過去に医者の人に代謝がいいって言われたかな」
「つまり食べてもすぐにエネルギーになるんだ」
「そんな感じかな」
そんな話をしつつ列車は途中の停車駅に停まりつつ先へと進んでいく。
その景色の移り変わりが理津子は好きなのだとロザリオ感じていた。
そうしているうちに列車は国境駅に到着する。
一泊二日の森の国観光が始まる。




