美味しいクロワッサン
冬の海風による寒さが染みる冬の日。
寒い日は極力外には出ずに家の中にいるに限るもの。
そんな中理津子はパンを焼いたりして暇を潰しているようである。
パン焼きも少しずつ凝ったものを作り始めているようで。
「いい匂いがするわね」
「寒くて外に出るのが億劫なんだろうな」
「それでパンを焼いてるんだよね」
そんな理津子が焼いていたのはクロワッサンだった様子。
またちょっと変わったクロワッサンを焼いていたようで。
「美味そうなクロワッサンが来たわね」
「うん、少し風変わりなものも焼いてみたよ」
「クロワッサンサンドもあるのか」
「綺麗に焼けた自信作だよ、たまにはこういうのもいいかなって」
「とりあえず食べようか」
そんなたくさんのクロワッサン。
食べてみるとその風変わりというのも分かったようだ。
どうやらマーブル生地で焼いたクロワッサンらしい。
「このクロワッサンマーブル生地なんね」
「そうだよ、どうかな、美味しい?」
「うん、意外と美味しいぞ、こういうのもいいものだな」
「よかった、今回はチョコ生地とのマーブルとプレーンなクロワッサンだよ」
「こういうのってどうやって作ってるの?」
マーブル生地のクロワッサンはチョコとのマーブル生地の様子。
その一方でプレーンなクロワッサンは半分にカットしたソーセージを挟んでいるようだ。
ソーセージの塩気と甘みのあるクロワッサンの組み合わせは美味しいのだ。
「それにしてもクロワッサン、美味しいんだけどポロポロこぼれるのが難点よね」
「こういう生地のパンとかパイ系の食べ物はそれがどうしても宿命だよね」
「床が汚れるのはどうしてもな、美味しいのは確かなんだが」
「でもクロワッサンはそういうものだからね」
「クロワッサンサンドも美味しいね、ソーセージが美味しいや」
クロワッサンに限らず理津子の住んでいた国は食べ物が美味しい国だ。
本場の人が本場を超えたとすら言う事もたまにあったりする。
それは食べ物への情熱が本物という事でもあるのだろう。
「りっちんってパンを焼くのも上手いわよね、大したもんよ」
「あたしの住んでた国は主食はお米なんだけどね」
「それなのにこんな美味いパンを焼けるのは大したものだろ」
「まあそこは食べ物への情熱が凄いって事にしておいて」
「それだけ美味しいものへの執着が凄い国民性なのかな」
なんにせよ美味しいものへの執着があるのは嘘ではない。
なのでおいしい食べ物を作る技術も本物なのかもしれない。
しかしクロワッサンはたまに食べたくなるもののようで。
「りっちんはパンも上手く焼けるんだから大したもんよ、お米が主食の国の人なのに」
「あたしの住んでた国だとお米からパンを作ったりするぐらいだし」
「米からパンを作るってどういう事なんだ?」
「米粉パンっていうのがあって、お米を粉にしてそれからパンを作ったりするんだよね」
「へぇ、そんなものまであるんだね」
米粉パンはそれこそ小麦アレルギーでも食べられるパンという事である。
とはいえそこまで浸透しているかと言われれば、そこは微妙な気がする。
ただそういう技術があるという事は忘れてはいけないという事でもあるのか。
「米粉パン、お米からパンを作り出すとかりっちんの国ってパねぇわね」
「うん、そこまで浸透してるわけではないけど、そういうのもあるんだよね」
「お前の国の国民はそこまでして食べたいって思うのか」
「実際過去に食べ物に関係する騒ぎとか起きてるからねぇ、米騒動とかそういう」
「食べ物の事になるとガチ切れするって事なのかな」
米騒動という出来事が過去にあった国でもある。
他にも食べ物に関係する出来事ではガチ切れしてきた国という事もある。
なので理津子もそんな遺伝子を強く受け継いでいるのだろう。
「りっちんが料理好きなのも分かった気がするわ、もはや遺伝子レベルっしょ」
「食べ物の事に関しては国の歴史も関係してるからなのかも」
「食べ物に関係する暴動が起きてたりするわけだろ」
「うん、他にも食べ物に関係する不祥事には凄く過敏に反応するしね」
「それはもはや血に刻まれた記憶なんじゃ」
米粉パンを作り出す辺りはそこまでしてでも食べたいと思ったのかもしれない。
アレルギーで食べられないならアレルギーを回避する食材を使えばいい。
それを実際に作ってしまう辺りが斜め上なのかもしれないが。
「うん、美味かったぜぇ」
「それはどうもね、またマーブルパンは作ってみようかな」
「こういうマーブルパンとかは工夫が見えて面白いよな」
「リツコの作るパンが美味しいのも事実だしね」
そんなクロワッサンは好評だった様子。
マーブルクロワッサンというものはなかなかに面白いものだ。
マーブル生地のパンを作れる辺りは大したものである。
今度はまた別のパンを焼いてみようとも考えているようだ。




