七草なお粥
年も明けてから少し経過した冬の寒い日。
お餅も飽きてきたのもあるが、そんな中あの日が来たという事もある。
こっちの世界ではそれは手に入らないので、それっぽく作ってみる。
その出来はどんなものになったのだろうか。
「少し太っちまったかね」
「お前は太ってもすぐに元通りになるよな」
「アノットって意外と運動してるもんね」
そんな中いい感じの匂いがしてくる。
作っていたのはあのお粥のようだが。
「今日はお粥なんかね、それで足りるんかしら」
「七草粥だね、まあ七草が手に入らなかったから似たようなものでしかないけど」
「七草粥ってなんなんだ?普通のお粥とは違うのか?」
「うん、お腹に優しいお粥ではあるけどね」
「ふーん、ならとりあえず食べようか」
今回作ってきたのは七草粥。
尤も七草がこっちでは手に入らないので、それに似たもので代用している。
なのでエセ七草粥とも言えなくはない。
「うん、味は思ってるより悪くはないわね」
「まあお粥だからお腹はそんなに膨れないとは思うけどね」
「お粥って言うと風邪を引いた時に食べるものっていうイメージが強いんだけどな」
「それは分かる、でも七草粥ってお正月に疲れた胃袋を休ませるとかそんな意味だし」
「つまり胃腸を休ませる意味があるのかな?七草粥って」
七草粥は体に優しい食べ物とも言える。
正月に疲れた胃袋を休ませるために食べるみたいなものではある。
なので特別美味しい食べ物というわけではないのだが。
「でも確かに胃腸には優しそうな食べ物よね、このお粥」
「実際お粥自体がお腹に優しいから、風邪引いた時なんかに食べるんだしね」
「まあそうだよな、風邪引いたた時に肉を食えなんて言ってもまともに食えないし」
「そういう事だね、だから七草粥は胃腸を休める意味もあるんだよね」
「お腹を壊したら仕方ないしね」
七草粥に限らずお粥というのは胃腸に優しい食べ物である。
なので風邪を引いた時にはお粥がいいと言われる理由でもある。
とはいえお粥が美味しいかと言われれば、そんなに美味しいとは思わないが。
「でもさ、お粥って美味しいかって言われれば、そんな美味しくないよね」
「それはプレーンなお粥だからじゃない?卵粥とか中華粥は美味しいよ」
「まあ確かに味付けしてあればお粥はそれなりに美味しいよな」
「とはいえやりすぎるとお粥じゃなくて雑炊になっちゃうけど」
「お粥と雑炊の違いがよく分からないけど、どっちも煮込んだお米だよね?」
お粥と雑炊の違いがよく分からないというのは分からなくはない。
とはいえお粥の方が米が柔らかくなっているような気はする。
煮込んだ米というのは共通しているが、そこは調理法の違いとかなのだろうか。
「でもお粥自体は嫌いじゃないんよね、ただやっぱり味が薄いのはあるけど」
「お粥って胃腸に優しいからこそ風邪を引いた時なんかに食べるものだしね」
「味が濃かったらそれはお粥じゃないって事だもんな」
「それに美味しい食べ物は基本的に体に悪いものって言われるしね」
「それは分からなくはないかもね、美味しい食べ物は不健康な食べ物っていう」
お粥が不味くはないがそこまで美味しいとも思えない理由。
それはやはり味がそこまで濃くないという事にあるのか。
美味しいものは体に悪いものだとは言ったものである。
「んで七草って何で代用したんかね」
「食べられる草を調べて、それを買ってきたんだけど」
「草の名前とかは分かってるんだよな」
「一応ね、流石に食べられるものを買ってきたからお腹は壊さないはずだよ」
「七草、リツコの世界の七草ってどんなものなんだろう」
こっちの世界では七草は流石に手に入らない。
なので似たような食用の草で代用しているわけである。
草の名前も調べはしたが、よくは覚えられていない様子。
「しかしお腹を休める意味での七草粥なんね」
「うん、七草の日っていう日になってるんだったかな」
「そういう日があるんだな」
「あたしの住んでた国だと、ほぼ毎日なんとかの日っていうのがあるからね」
「そういうなんとかの日っていうのは面白いかも」
七草粥も七草の日というものがあるからこそでもある。
そういう毎日のようになんとかの日というのがあるのも面白さだ。
七草粥はそんな七草の日にちなんだ文化とも言える。
「ふぅ、満足したぜぇ」
「それじゃまた明日からはいつもの食事に戻ろうかな」
「それはそれでいいけど、少しは胃袋にも優しくしてくれよ」
「でもこういうのも悪くなかったね」
そんな七草粥は満足して完食した。
胃腸に優しいお粥というのは疲れた胃袋には最適な食べ物である。
とはいえお粥が美味しいかと言われればまあなのだが。
あくまで胃腸に優しいという事が売りなのである。




