年が明けたので
異世界でも新年になったようで、そうしたムードが街にも漂う。
とはいえ理津子はその辺は変わらずいつも通りにやっている。
それもあり屋敷でも新年を祝う事にした。
自分の世界の様子も観察しながら新年を迎える事に。
「年が明けたわねぇ」
「あいつも新年の準備でいろいろやってるみたいだな」
「リツコの世界の祝い方も悪くないよね」
そんな異世界でも自分の世界の祝い方を貫く理津子。
だからこそ理津子らしいとも言えるのか。
「お、来たね、いい匂いだわ」
「うん、お餅ついたから、おしるこ作ったよ」
「おしるこ、小豆も手に入るのか、そういえば」
「異世界にも小豆があるなんて驚きだけど、あたしとしては助かってるよ」
「それはそうだよね、それじゃ食べようか」
とりあえずおしるこを作ってきた理津子。
おしるこは餅との相性もいいので餅を食べるには最適な料理だ。
ついでに夜はお雑煮を作るつもりの様子。
「うん、やっぱおしるこは美味しいわ、こういうの好きだわよ」
「おしるこはお餅との相性もいいからね、お餅はまだあるし」
「豆を甘く煮るっていう発想がまずないからな、それはお前の世界独自って感じだよ」
「あたしの世界でもあたしの住んでた国以外では珍しいって聞くけどね」
「豆を甘く煮るのは珍しいのか、なるほど」
豆を甘く煮るというのはおしるこに限らずあんこなんかがそうでもある。
なので外国人はまずあんこに驚くというのはよくある話らしい。
甘く煮込まれた豆は珍しいという事なのか。
「でも豆を甘く煮るとこんなに美味しくなるもんなのね」
「砂糖たっぷり使ってるからではあるけどね」
「でも塩気も少し感じるから、塩もそれなりに入ってるんだろ」
「とはいえおしるこは基本的には甘い豆のスープだと思った方がいいかな」
「お餅に甘い汁が染み込んで美味しいのがいいよね、お餅は汁を吸ってこそ美味しいし」
セルベーラも餅の美味しさが分かってきた様子。
餅はそのまま食べても味気ないので、味を染み込ませてこそ美味しいもの。
おしるこやお雑煮もそういう食べ方なのだから。
「りっちんの作るおしるこって美味しいわよね、あたしは好きだわ」
「おしるこの作り方もお父さん直伝だからね」
「お前の父親は本当に料理が上手なんだな」
「そうだね、お父さんは本当かどうかは知らないけどプロの料理人だったらしいし」
「本当かどうかわからないっていうのはなんでなんだろう」
そこに関しては父親本人から確定的な情報が得られていないからというのもあるのか。
ただ料理の腕前を見る限り嘘という事ではなさそうだと理津子は言う。
なのでたぶん本当なのだろうと理津子は思っている。
「そういやりっちんの打った年越しの蕎麦がまだ余ってたわよね」
「うん、夕食はそれも食べたいならやってあげるよ」
「蕎麦麺は生麺なんだから早くに食べた方がいいな、今夜はそれもやってくれ」
「分かった、それじゃ今夜はお雑煮とお蕎麦だね」
「リツコの打つお蕎麦って美味しいよね」
理津子は年越しには蕎麦も打っていた。
その麺が余っているので、夕食にはそれもいただく事に。
ちなみに理津子曰く最初にこっちの世界で料理を作った時に出汁を取る事から始めたとか。
「そういやそばつゆって出汁を使うのが普通なのよね」
「そうだよ、出汁がないと美味しくならないからね」
「出汁っていうのを最初に知った時はそういうのもあるのかと思ったしな」
「まさか出汁っていう概念がないとは思わなかったし」
「出汁を使うだけでも凄く美味しくなるもんね、あれは凄いというか」
異世界の料理で最初に驚いた事が出汁という概念がなかった事。
なので魚や鳥の骨を狩ってきて出汁を取る事から始めたという。
出汁はそれだけ重要なものなのだ。
「でもお蕎麦っていうのも美味しいもんよね、あたしは気に入っとるよ」
「それはどうもね、お蕎麦の味が分かるなら大したものだよ」
「そんなものなんだな」
「お蕎麦の味って大人になると分かるらしいしね」
「ふーん、なんか興味深いかも、お蕎麦の美味しさか」
そんなそばの美味しさは大人になると分かるもの。
理津子はそう言うが、実際昔はうどんのほうが好きだったという。
なので蕎麦の味はそういうものなのだろうという事だ。
「ふぅ、満足満足」
「それじゃ夕方はお蕎麦とお雑煮だからね」
「ああ、期待してるぞ」
「お蕎麦もすっかり好きになったしね」
そんな蕎麦の美味しさが分かる年頃の理津子。
やはり蕎麦は大人になると美味しさが分かるのか。
なんにせよ新年は変わらずに過ごしていく事になる。
年越しそばの麺が余っているので蕎麦とお雑煮をいただきました。




