観光に行きたい
人は増えたものの特に変わりない生活を送る日々。
そんな中理津子が観光のパンフレットを見ていた。
旅行でも行きたいのかと思いつつロザリオはそれを見ている。
そんなものを持ってきた理由とは。
「結構いろんな場所があるものなんだね」
「隣国とか南の島とか、旅行でも行きたいのか?」
「旅行というか、せっかくだからもう少し別の街とか国も見てみたいなって」
つまりは異世界に来たという事もあり、他の場所も見ておきたいとの事。
それで旅行とは言わずとも観光でどこか行きたいという事らしい。
「でもどこに行くんだ?ここは港町だから、行くならターミナルに行かないと駄目だし」
「つまり空港とかがある別の街から行くって事?」
「そう、船旅でいいならここからでも行けるけど」
「あー、あたし船は無理、酷い船酔いするから」
「船に弱いのか、スペック高いように見えて意外と弱点があるんだな」
理津子は船は酔うから無理だという。
子供の時に旅行に行った際に船に乗って盛大に酔い、リバースした事があるとか。
それから船酔いは克服出来ていないという。
「一応交通手段は複数あるぞ、飛行機もあるし鉄道もある、長距離バスとかもある」
「なんかあたしの世界と大して変わらないね」
「機界や空界、水界の人達もこっちに技術協力で来てるからな」
「なるほど、いろんな世界の人が力を合わせてるわけか」
「そう、だから交通手段は結構ある、とはいえどこでも行けるみたいな万能さはないけど」
この世界自体が多様な世界との交流がある。
なので理津子の世界にあったような交通手段は全部あるらしい。
ちなみに接続地になる街があり、そこを始点に運行がされているらしいが。
「隣国でも島国でも行く事自体は難しくない、ただ少し時間がかかるけどね」
「確かにここにも船着き場はあるし、帝都方面にバスとか出てたね」
「そう、特定の街を始点にしてそこから多方面に接続してるんだよ」
「つまり乗り継ぎって事?」
「そんな感じ、この街には空港、この街には港、とかね」
そのため遠くに行くのは若干の手間がかかるらしい。
例えばここから隣国に行くには鉄道の始点まで移動し、そこから鉄道に乗り継ぐように。
そういう形になっている理由は土地にあるらしいとの事だが。
「そもそも土地の整備って凄くお金がかかるんだよ、国も無尽蔵じゃないし」
「それで限界まで伸ばすんじゃなくて、その土地に合わせたものを運行してるんだ」
「そういう事、平坦な土地は自動車や鉄道、山があれば航空機みたいなね」
「でも土地を開拓するよりそれに合わせた拠点にするって面白いかも」
「だから短距離の航空便とかも珍しくないぞ、高地には短距離の航空便とか出てるし」
別に乗り物は長距移動をするものとも限らないという考え。
高地にある街などには短距離の航空便を運行していたりする。
なのでこの世界ではあらゆる乗り物に長距離便と短距離便が存在しているそうだ。
「それでどこか行きたい場所とかあったのか」
「うーん、とりあえずそんな遠くないところから行ってみたいかな」
「ならここから北東にある隣国のウッディスタっていう森の街はどうだ、距離も近いし」
「森かぁ、移動時間とか分かる?」
「片道で乗り継ぎをして4時間ぐらいだな」
比較的近い場所として挙げてくれた隣国の森の街ウッディスタ。
ここは港町だが、実は隣国との国境はそんな遠くない。
ただしそれでも交通機関の乗り継ぎで片道4時間なので、地形の問題なのだろう。
「ならそこにしようかな、一緒に来る?」
「本当は研究してたかったんだけどな、リツコがいなければ静かになるし」
「失礼しちゃうね」
「でも一人で行かせるのも心配だから、行くなら付き合うぐらいはいいよ」
「なら決まりかな、他の人達にも話しておかなきゃ」
アノットやセルベーラはついてくるかは今は分からない。
アノットはだるいとか言いそうなので、たぶん来ない。
セルベーラはついてきそうだが、そうなったら連れて行くと思う。
そんなわけで旅行ではなく観光で隣国の国境近くの街に行く事になったのであった。




