野菜でお菓子
夏の暑さもすっかり通り過ぎ、秋の涼しさが本格化した季節。
そんな中秋の食材も店には並び始めている様子。
とはいえ理津子の世界とは旬が違うので、同じ感覚では間違える事もある。
季節こそ違うもののそれでも美味しいからいいのだが。
「なんか甘い匂いがすんねぇ」
「あいつもすっかりお菓子作りが上手くなったよな」
「アノットって実は教えるのが上手かったりするのかな」
そんな中作っていたのは秋のデザート。
旬ではなくても美味しいのでまあよしとする。
「お、美味そうなシュークリームね」
「たまにはいいかなと思って作ってみたんだけど」
「この匂いは芋か?」
「そうだよ、さつまいもクリームのシュークリームだね」
「さつまいもクリームって、そんなものまで作るんだね」
作ってきたのはさつまいもクリームのシュークリームらしい。
とはいえシュークリームと言うには皮がとてももっちりしているが。
さつまいもクリームは秋の美味しさなのだろう。
「ん、こいつは美味いわね、さつまいもをお菓子にしようとは思わんし」
「こっちだと野菜のデザートとかあまり見ないよね」
「野菜をデザートにしようっていう考えがまずないからな」
「そういうところは食材の見方なのかな」
「でもこれ美味しいね、さつまいもってこんな美味しかったんだ」
味は概ね好評の様子ではある。
こっちの世界には野菜でデザートを作ろうという発想はまずないのだとか。
それもありさつまいものデザートというのも新鮮なようだ。
「しかしりっちんの住んでた環境が食べ物に対してこだわりがあるって分かるわね」
「外国の食べ物なんかも取り入れてアレンジして発展させるような国だしね」
「アレンジな、でも取り入れられるものを取り入れるっていうのは凄いと思うぞ」
「パンを食べる文化のない国だったのに、凄く美味しいパンを作るようになったしね」
「取り入れるっていうのは凄い事なのかもね」
そうした理由もあり理津子もパン作りは結構上手い方ではある。
食べ物は発想力でもあり、美味しいと思える事はなんでもやる。
そうした結果食に関しては大きな国となったのかもしれない。
「りっちんが食べ物にうるさい理由って完全なお国柄よね」
「それはあるかもね、食べ物の事だけは執着が凄いから」
「それは言い換えれば食べ物に困った歴史があるとかなのかもな」
「食べ物を粗末にする人とか食べ物でふざける人にはガチ切れする国民性だし」
「それは食べ物の大切さを分かってるからなんだろうね、きっと」
理津子が食べ物にうるさい理由はお国柄であり国民性。
それは国の歴史にもそのまま繋がっているのかもしれない。
だからこそ美味しいを徹底的に追求した結果なのか。
「しかし食べ物へのこだわりが強いとあらゆるアレンジを出来るっていうのも凄いわよね」
「お父さん曰く外国は食べ物というか食文化に対しては保守的な国が結構多いらしいよ」
「それはつまり料理のアレンジを嫌うとかそういう事か?」
「うん、外国の食べ物を使ったあたしの国で生まれた料理は多いって言ってたし」
「それはつまり外国から入ってくる食材で多様な独創性を発揮していったって事なのかな」
食文化は国により、その国の歴史でもある。
食文化が保守的な国は意外と多く、特に冷たい料理への抵抗感がある国が結構あるとか。
そうした様々な国の食文化を経験した人の言葉なのだろう。
「りっちんの国が食に対してこだわりがあってなおかつ自由なのは伝わるわよね」
「本場にはない洋食なんてそれこそたくさんある国だもんね」
「食へのこだわりや見方っていうのも様々なんだな」
「あたしはそれが好きだけどね、その結果が世界有数の美食国だし」
「リツコは食べ物にもうるさいもんね」
そんな食べ物への執着が強いのは嘘ではない。
美味しいものを作り出そうとするその精神もまた本物だ。
世界の人に美味しいと言ってもらえるのもその自由な環境だったからなのかもしれない。
「まあ料理なんてのはよほど極端な味覚でもない限り、そこそこ美味しくなるもんよ」
「先人達が作り上げたレシピのおかげだよね」
「最初は試行錯誤だったんだろうしな」
「野菜で作るお菓子なんていうのもそういう努力のおかげだよね」
「野菜がこんな美味しくなるって意外だもんね」
野菜を使ったデザートも美味しいものである。
和の食材を使って作られる洋菓子は今ではすっかり定番だ。
外国の人からしたら不思議に映るのかもしれないが。
「美味かったぜぇ」
「それはどうもね、また何か別のもので作ってみようかな」
「その時は期待してるぞ」
「リツコの作るお菓子も美味しいしね」
そんな野菜から作られる洋菓子も今ではお約束。
食文化は国の歴史であるという事なのだろう。
美味しいを追求するというのはそういう事だ。
不思議で美味しい料理はたくさんあるのかもしれない。




