火力と油
秋の涼しさも始まり気温は下がってきた秋の日々。
そんな中家で作るとどうしても店のようにはならない料理もある。
家で食べるそれもまた乙なものだが、工夫は必要になってくる。
父親譲りの裏技なんかも使いいろいろ工夫している様子。
「少しゃあ涼しくなってきたかね」
「あいつも元の世界に比べて涼しくなるのが早くて嬉しいって言ってたな」
「本人曰く残暑が長すぎって話だよね」
そんな中家でも割と簡単に作れる家中華も理津子の得意な料理だ。
とはいえ店で食べる中華には絶対に勝てないとも分かっている様子。
「お、美味そうなチャハーンね」
「アノットってちょくちょくそういう言い回しするよね」
「量は相変わらずなんだな」
「まあね、チャーハンならお米もたくさん食べられるし」
「リツコってお米をたくさん食べるタイプの人だよね」
とりあえずそんな家中華の代名詞でもあるチャーハン。
店で食べるチャーハンは言うまでもなくパラパラである。
その一方で家で作ると工夫しないとパラパラにはならないのが悩みだ。
「りっちんの作るチャーハン美味いよね、家だとパラパラにならんもんだと思ってた」
「お父さんがやってた裏技を使ってるからね、それでお店ほどではないけどこうなるの」
「お前の父親はそういう裏技を知ってる辺り、ホテルのシェフでありながら庶民派だな」
「実際大衆食堂やってるとそういう料理にも詳しくなるらしいよ」
「料理に詳しい人が考える裏技なら間違いないのかな」
そんな家チャーハンも普通に作るとベチャッとした感じになりがちだ。
理津子曰く中華は大量の油と強い火力が命なのだという。
家ではその中の火力が再現出来ないためベチャッとした感じになりやすいという。
「でもチャーハンにギョニソー入れたり、刻んだかまぼこ入れたりするのは家の味って感じね」
「まあ家だとチャーシューとか用意するの面倒だしね」
「それで魚肉ソーセージとかかまぼこを入れるのか」
「お父さん曰く家庭のチャーハンのイメージなんだってさ」
「家のチャーハンのイメージがギョニソーとかかまぼこなのか」
とはいえそれはそれで乙な味がするものである。
理津子の父親曰く、多くの料理は家庭で店の味を再現するのは難しいとか。
それはキッチン周りの設備の関係でどうしても上手く行かない事が多いかららしい。
「でも家庭の味ってやつも乙よね」
「お父さん曰く家で作るなら家のキッチンに合わせた最適なレシピを考えるんだって」
「まあどんな料理でも店の味を家庭で再現するのは難しいだろうしな」
「チャーハンの火力もそうだけど、ラーメンのスープとかも同じみたいだね」
「同じ料理でもお店と家庭ではまた別の味になるんだね」
そんな理由もあってなのか、元プロのシェフと言いつつも家庭的な味ではあったらしい。
家で食べていたチャーハンはそんな家庭で作れるチャーハンという感じの味だったとか。
とはいえ料理には数多の裏技や創意工夫があり、それを使う事で家庭でも美味しく出来るという。
「店ほどパラパラではないにしても、家でこんだけパラパラに出来るのは流石の裏技だわ」
「お父さんもネットで料理レシピサイトやってたって知ったのは都会に出てからだったし」
「お前の父親はレシピサイトなんて作ってたのか」
「そうみたいだよ、元ホテルの料理人が作る家庭料理のレシピサイト」
「そういうのってどれだけズボラ飯に出来るかも割と重要だよね」
理津子曰く、電子レンジで完結するレシピの人気が高かったという。
電子レンジは割とどの家にもあり、大体の人は使える調理家電だ。
コンロも油も包丁も使わない電子レンジ完結レシピはアクセス数が特に多かったとかなんとか。
「りっちんのパパさんは賢い人なんねぇ」
「元プロがやってるっていうのはやっぱり大きいっぽいよ」
「それもコンロも油も包丁も使わないって、ガチのズボラ飯すぎるな」
「でもそういうのが人気っていうのは、料理への認識も垣間見えるよね」
「手抜きレシピが人気なのは寧ろ必然なのかもね」
そんな家と店ではそもそも設備が違うという話。
なので多くの料理は家で店の味はまず再現出来ないという。
設備というのはそれだけ大きな初期投資なのだろう。
「はぁ、んまかったぜぇ」
「それはどうもね」
「家庭の味っていう感じも悪くないよな」
「ここでも設備は改築してあるから少しは料理も変わってきたよね」
屋敷の厨房も改築はしてある。
とはいえ家につけられる設備は限界もあるという。
なので限界までスペックを上げても店の味の再現は難しいとか。
家の味というのは思い出の味でもあるのかもしれない。




