今の少年
ロザリオの屋敷にも人がすっかり増えたここ最近。
そんなロザリオは魔法の研究を相変わらずしているものの、落ち着かない様子。
引きこもり少年の屋敷に女性ばかりが増えてるのだから無理もないのだが。
年頃の少年には何かと大変な様子である。
「飲み物持ってきたよ」
「そこに置いといてくれ」
「ねえ、最近少し疲れてるんじゃない」
理津子もロザリオの事は心配している。
一応家政婦として呼ばれたのだから、その辺の管理もしてあげないとならないので。
「やっぱり人が増えたからなんじゃない」
「それはある、でも研究さえ出来れば僕は別に」
「魔法の研究だっけ、難しそうな本とか読んでるよね」
「元々人付き合いとか好きじゃなかったんだよ、だからこういうのが好きなんだ」
「ふーん、でもあたしも人付き合いとか面倒だなって思ってたよ」
理津子は俗に言う陽キャのノリみたいなのは好きではないのだという。
都会に出た際に背伸びしてギャルっぽい服やメイクは覚えたものの、興味は別だった。
服を作ったり料理を作ったりが好きなため、そういったものを研究し始めたらしい。
「リツコって明らかに軽いノリみたいな見た目なのに、実はインドアなのか」
「こういう服やメイクも背伸びだからね、そもそもの趣味が料理とか裁縫だし」
「でもせめてもう少し恥じらいは持ってくれって思う」
「少年はえっちな事とか興味ないの?」
「ない、でも流石に下着姿でうろつかれたら注意ぐらいはするよ」
そういうところは理津子もロザリオも似ているのか。
性的な事に無頓着だったするので、なかなかに夜の屋敷の中はカオスである。
アノットも無自覚に性的だし、紫音は騒がしいしセルベーラは子供だしとある。
「それでさ、研究は出来てるの」
「一応は出来てる、ただ生活がまともになったから時間は減った」
「でも相変わらず少食だよね、健康とか大丈夫なの」
「リツコの基準だとあれが標準なのか?そりゃ少食にも見えるだろ」
「若いんだからたくさん食べると思ってるけど、違うの?」
そういうところは家での感覚が抜け切っていないとも言える。
学生やサラリーマン、ドカタといった人達がメインの客層だった食堂の娘だけはある。
そういった人達の標準で作っているのでロザリオからしたら並盛りでも大盛りなのだ。
「でも今が成長期でしょ、たくさん食べないと育たないぞ」
「その理論で行くとリツコは育ち過ぎになるけど」
「そう?でもガリガリのミイラよりは魅力的でしょ?」
「そりゃそうなんだけど、リツコってあれだけ食べててそのスタイルはずるくないか」
「あたしってそんなナイスなスタイルしてるものなのかな」
理津子は実際に大食いだし、それなのに太り過ぎない程度にスタイルがいい。
アノットもずるいという程度にはいいスタイルをしている。
健康の秘訣はたくさん食べる事なのだろうか。
「リツコって家庭的な事のスペックは高いし、スタイルもよくて運動嫌いじゃないとか」
「あたしは運動に関しては個人で出来るものが好きなだけで、試合とかするのは嫌いだよ」
「つまり球技とかは嫌いだけど、筋トレとかそういうのは好きって事か?」
「うん、体を動かすのは好きだけど、チームスポーツは嫌い、個人競技のものは普通かな」
「なんとなくリツコの性格が分かってきた気がする、お前ギャルの皮を被った根暗だろ」
ロザリオの言う事もまんざらではないと思う。
実際理津子の趣味の多くはインドアだし、運動も室内で出来るものが多い。
背伸びしてギャルっぽいメイクや服を選んでいるものの、性根は俗に言う陰キャである。
「この服とかメイクも少しはよく見えるかなって思ったからだしね」
「本性は僕とそんな変わらないんだな、室内で出来る事が好きっていう」
「そうだね、でもギャルメイクとか服を覚えてからは弾けたっていうのかな」
「恥じらいとかがない時点で普通の感性じゃないだろ」
「こんな美女に囲まれて性的な事に関心を示さないロザリオに言われてもね」
なんにしても人が増えたとはいえ、ロザリオもきちんと魔法の研究は出来ている様子。
生活がまともになったから研究に使える時間が減ったというのはらしさなのか。
「よし、今夜は一緒にお風呂に入るか」
「お前は何を言っているんだ」
「ほら、行くよ」
「離せって!頼むからそういうのは…」
そのまま連れて行かれてしまった様子。
なんにしても理津子もロザリオも本質的にはインドアなのだろう。
理津子の性的な事への無頓着さはそういうところだけ幼いという事なのか。
理津子がこういう性格になったのは変わろうとした事が理由なのかもしれない。




