知らないものはたくさんある
すっかり春の暖かさになり眠くもなってくる季節。
そんな中理津子も異世界という土地において、珍しいものはよく見かける。
それは料理にも言えることで、この世界では珍しい食べ物を作る事も。
元々の世界でもこの国にしかない食べ物というのはあったわけで。
「にしてもりっちんの作る飯は異世界人ってだけあるわよね」
「今さらの話ではあるけどな、知らない料理が出てくるのも」
「食材の意外な使い方とかも違う世界から来たからこそだもんね」
そんな理津子が作ってきたのはコーヒーゼリー。
こっちの世界にもコーヒーもゼリーもあるがコーヒーゼリーはないようで。
「この黒いぷるぷるはなんなのかね」
「コーヒーゼリーだけど」
「コーヒーゼリー?まさかコーヒーでゼリーを作ったのか」
「うん、コーヒー用のミルクをかけて崩して食べると美味しいよ」
「そうやって食べるのか、とりあえず食べようか」
コーヒーゼリーはこの世界には存在しない食べ物だという。
コーヒーとゼリーというそれぞれの食べ物はちなみにだが存在している。
特に獣界産のコーヒーはどれも美味しいと評判なのである。
「お、意外と美味いじゃん、そのままだとコーヒー特有の苦味があるけど」
「コーヒーってこっちだとブラックで飲む人は珍しいって聞くけど」
「コーヒーは普通はミルクを入れて飲むものだぞ、それが常識だ」
「砂糖は好みだけど、ミルクはほぼ必ず入れるものなんだね」
「コーヒーをブラックで飲むとかただのマゾっていう認識だしね」
コーヒーには基本的にミルクを入れて飲むもの。
つまり無糖カフェオレという飲み方がこの世界では種族を問わずに共通認識らしい。
砂糖を入れる人も結構多いが、一番定番な飲み方は無糖カフェオレなのだとか。
「にしてもコーヒーゼリーとは、発想が面白いもんねぇ」
「あたしの世界でもコーヒーゼリーはあたしの住んでた国以外だと珍しいとか聞くし」
「つまりお前の住んでた国で生まれた食べ物って事なのか?」
「らしいね、まあどこが発祥かはよく分かってないらしいけど」
「食べ物の発祥って、どこの地域かは分かってても詳細は意外と分からないよね」
実際そのコーヒーゼリーはかつての有名映画監督が好んでいたとも言われる。
ただ発祥については大まかな地域は分かっても、詳細な場所は意外と分からない。
なのでこの店が発祥という説は複数あり、明確にここというのは意外と分からないのだ。
「でもりっちんの作る料理でもデザートでも、異世界の料理を感じさせるわよね」
「こっちの世界にも似てる料理は多いんだけど、どこか微妙に違うとかは多いしね」
「そういう異世界の料理でも美味しいと感じるものは多いしな、発想がないだけなんだろう」
「かもしれないね、挑戦をあまりしないのか、過去に作ったけど商品化してないのかとか」
「でもコーヒーゼリーは美味しいね、こういうのもいいかも」
コーヒーゼリーは概ね好評な様子。
味自体はコーヒーの味がほぼそのままなので、不味くはないのだろう。
とはいえこちらの世界ではブラックコーヒーはマゾなのだとセルベーラし言う。
「コーヒーは結構美味いと思うんだけど、ブラックで飲む気にはなれんよね」
「砂糖を入れる人は普通にいるし、定番の飲み方は無糖カフェオレなんだよね」
「ああ、コーヒーにたっぷりのミルクを入れて飲むのが定番だぞ」
「つまりコーヒーよりミルクの方が比率が大きいのか」
「そうだよ、コーヒーを少しに対してミルクたっぷりが美味しいコーヒーの飲み方だから」
つまりこの世界の美味しいコーヒーの飲み方はコーヒーを少しに対してたっぷりのミルク。
それはもはやコーヒーというより牛乳なのでは?とも思えてしまう。
ただそれでもコーヒーにはたっぷりのミルクで無糖カフェオレにするのが定番なのだと。
「コーヒー自体はポピュラーな飲み物なのに、それをこうするとは面白いわねぇ」
「ゼリーって結構いろんなもので作れるからね」
「ただコーヒーゼリーは今回はじめて聞いた食べ物だけどな」
「発想があったのかどうかは気になるけどね」
「美味しいから作れば売れそうな気はするけどね」
そんな異世界にはない食べ物は多い。
似ていてもどこか違うという事も多い。
そこはやはり異世界なのだ。
「ふぅ、満足だぜぇ」
「異世界っていうのは感じたけどね」
「美味しいのは伝わったけどな」
「やっぱり未知の食べ物なんだよね」
そんな異世界の食べ物の事情。
元々の世界でも外国に行くと驚かれる食べ物は多い。
それは食文化の話でもある。
食べてみると美味しいというのが多いのもまた同じである。




