盛り付けの違い
自分の世界との連絡を取り改めてこちらの世界で働く事になった理津子。
そんな今日も家政婦としてロザリオの身辺の世話をしている。
食事の風景を見ていたアノットが理津子に前から気になっていた事をぶつける。
それは食事の盛り付けについてのようで。
「ねー、りっちん、その盛り付けは流石にどうなの?」
「男の子だからこれぐらい食べるよね?」
「いや、リツコの盛り付けは体育会系の食事だろ」
理津子は家が大衆食堂という事もあり、学生に優しい食堂だったりした。
来客するのは工事現場の人や学生、サラリーマンなどがメインだった。
「僕は確かにお腹は減るけど、リツコのそれは流石にきつい」
「情けないね、男の子」
「いや、僕は体育会系じゃないから、そんなに食えないから」
「寧ろりっちんがモリモリ食べてるよね」
「あたしはこれでも少ないつもりなんだけど」
理津子は普段から結構な量を食べている。
元の世界だと痩せたいとか言う女子を横目にガッツリ食べていたものだ。
それもあってか食事量は体育会系並みに食べるのである。
「りっちんさ、それだけ食べてなんで太らないの?あたしなんてお肉が」
「アノットは運動とか嫌いだからじゃない?」
「いや、リツコも大して運動してるようにも見えないけど」
「そう?だとしたら代謝がいいのかな」
「それだけ食べて太らないとかずるいぞ!」
なんにしても理津子の食事の盛り付けは家で覚えたものだ。
働く男達や学生達が食べる食事を作っていたのだから、自然となったものなのだ。
その一方でアノットは家庭料理などでも大盛りにしたりはしない。
理津子は大衆食堂という環境に染まりきった料理だという事だ。
「でもロザリオぐらいの年頃の子はたくさん食べるよね?」
「年頃については分からないけど、リツコの基準がそもそもおかしいんだよ」
「うーん、家を手伝ってた時はこれぐらいでもみんな余裕で完食してたよ?」
「体育会系の学生とかドカタを基準で語られてもねぇ」
「あとロザリオは好き嫌いが結構あるでしょ」
理津子はそういうのもしっかり見ている様子。
特にロザリオは生野菜が苦手なようである。
野菜自体は火を通してあるものは問題なく食べていた。
だがサラダやカツに敷いてあるキャベツなどには手を付けないのを確認している。
「ロザリオって生野菜が駄目な人?」
「生野菜とか美味しくないだろ、野菜は火を通してあった方が絶対に美味しい」
「なるほど、でも確かにあたしが家を手伝ってた時も肉がよく出てたっけ」
「好き嫌いなんて誰にでもあるけど、無理に食べさせるとよけいに拒否るからねぇ」
「食べたくないなら無理にとは言わないけど、大食いでもないし」
ロザリオの食事量はそこまで多くない。
理津子のドカ盛りのおかずなども食べるには食べるが、完食は稀だ。
趣味が魔法の研究という事もあり、運動嫌いなのも知っている。
「でもきちんと食べないと体力つかないよ」
「それでもリツコの盛り付けが多すぎる、あれは完食は厳しいって」
「情けないね、男の子」
「あたしは甘いものなら余裕だけど、あれを完食するのは厳しいよ」
「あたしが食べるだけなのかな」
なんにしても理津子の料理は家の影響をモロに受けたものである事は確実だ。
大衆食堂の客層からしても細い女性が入るような店ではない。
体育会系の学生や働く男性がメインターゲットの店の料理だとはっきり分かる。
「でもあたしが食べるから量は据え置きにするよ」
「リツコってさ、どう考えても女の食べる量じゃないものを完食するよな」
「元々食べるのが好きなんだよ、飲み会で料理ばかり頼んで出禁喰らったし」
「飲み会で出禁喰らうだけ食べるとか、その胃袋どうなってんの?宇宙なの?」
「外食って美味しいからたくさん食べるんだよ、おかげでお財布が危機管理に」
「体に対して入る量がやっぱりおかしい、こいつは」
なんにしても理津子の料理が家の影響というのは確実だ。
ドカ盛りをロザリオはそんなに食べられない。
とはいえセンスだけは本物なのも理津子の腕前だ。
大衆食堂を見て育った娘はドカ盛りが当たり前に育ちました。




