好みは変わるもの
すっかり春の陽気になり外はポカポカな暖かい日々がやってきた。
また暖かくなってきた事もありアイスが美味しくなる季節でもある。
それもあり外出するとついアイスを食べたくなってしまう。
なおアイスの好みも昔に比べると変わっているようで。
「ふぅ、サインも結構食べに来るんだね」
「ええ、甘いものとラーメンは活力ですから」
「そういうところは科学者らしいなぁ」
食べに来た店でサインと鉢合わせした様子。
一緒にアイスを買って食べているわけだが。
「それにしてもサインってチョコレートが好きなんだね」
「そうですね、チョコレートはよく食べていますよ」
「これから夏になるとチョコレートも食べにくくなるしね」
「夏は冷房をガンガンに効かせた部屋で凍らせたチョコレートを食べるのが至高ですよ」
「またそういう、でも夏はそれぐらいしないと駄目か」
サイン曰く夏は冷房をガンガンに効かせた部屋でチョコレートを食べるのだという。
そんなチョコレートの話題でサインは理津子の食べているアイスに興味を示す。
理津子が食べているのはチョコミントなのだが。
「あたしのアイスに興味がある?」
「いえ、チョコミントが好きなんですか?」
「好きだね、子供の時はチョコミントは苦手だったんだけど、今は一番好きな味かな」
「なるほど、好みも変わったという事ですか」
「うん、そうだと思う」
理津子曰く子供の時はチョコミントは苦手だったという。
それが今では一番好きな味になったとも。
サインはチョコミントはそこまで得意でもないようだが。
「サインはチョコミントは苦手?」
「食べられなくはないですけど、率先して選ぶ味ではないですね」
「そっか、あたしの世界だとチョコミントはミント強めとかチョコ強めとかあったよ」
「チョコミントは別に人気というわけではなさそうですが」
「人気というわけではないけど、好きな人は本当に好きな味だからね、チョコミント」
理津子も今はすっかりチョコミン党の党員である。
成長して味覚が変わったという事なのだろう。
サインもチョコミントは嫌いではないが、他に味があるならそっちを選ぶらしい。
「チョコミントはコアな人気がある味だとあたしは思ってるけどね」
「好きな人はどこまでも好きな味ですからね」
「うん、あたしの世界だとアイス売ってる会社がいろいろ出してたね」
「ミントが強いチョコミントとかチョコが強いチョコミントとかですか」
「そうそう、ミントのあの清涼感が好きっていう人もいるしね」
チョコミントはミントの味が好きな人もチョコの味が好きな人もいる。
理津子曰くチョコミントはチョコミントだから美味しいのだという。
ミントアイスでもチョコアイスでも駄目であり、チョコミントだからこそいいのだと。
「あたしはチョコミントはミントが強い方が好きだけどね」
「でもミントアイスでは駄目なのですよね?」
「そうだね、チョコミントはチョコミントだからこそ美味しいんだよ」
「ミントアイスでもチョコアイスでもなくチョコミントだからいいという事ですか」
「まあ好みなのはチョコミントのミント強めだけどね」
理津子はミント強めのチョコミントが好きなのだという。
そのミントの清涼感がいいのだという事なのかもしれない。
それでもチョコミントが好きなのでありミントアイスでもチョコアイスでも駄目なのだ。
「サインはチョコミントは食べられるけど優先するほどでもないって感じか」
「ええ、それに他に味があるなら甘いものを優先しますよ」
「なるほど、まあ好きなものを食べればいいと思うしね」
「それにしても子供の時は苦手だった味が今では何より好きな味なんですね」
「成長すると味覚も変わるっていう事なのかもね」
理津子も成長した事で味覚が変わり好みも変わったのだろう。
チョコミントを好きになるというのはそうした変化なのだろうから。
それもあり好みというのは成長すると変わっていくというのを感じさせる。
「サインは変わらず甘党だよね」
「頭を使うと糖分が欲しくなりますかから」
「そこは異世界でも変わらないのか」
「なのでラムネ菓子は家に常備していたりしますよ」
「こっちにもラムネ菓子ってあるのか、あれはブドウ糖たっぷりだもんね」
サインは家にラムネ菓子を常備しているという。
頭を使う人にとってラムネ菓子は何よりの栄養なのだろう。
ブドウ糖はラムネにはたっぷり含まれている。
「さて、そろそろ行くね」
「ええ、分かりました、それではまた」
「夕食の献立も考えないとね」
人の好みは成長すると変わっていく。
理津子も成長した事でチョコミントが好きになった。
昔は苦手だったものを好きになる。
人の成長とは面白いものである。




