現金の信用度
すっかり春の陽気になり暖かさから眠くもなる季節。
そんな中今までは当たり前であったがふと思った疑問。
この世界では電子決済もある中で、それでも現金で買い物をする人の多さ。
自分の世界の紙幣のような細工でもされているのだろうか。
「ねえ、この世界ってカードとか電子決済もあるよね?」
「あるよ、りっちんも使ってるやん」
「でも現金で払ってる人を多く見るのは、思ってるより浸透してないって事?」
アノット曰く現金に対する信用が高いのだという事はあるらしい。
なぜ信用されているのかといえば、現金の特殊な製造方法があるのだという。
「つまりこの国の現金って偽装防止技術みたいなのがあるの?」
「技術というか、魔法よね、硬貨や紙幣にはある魔法がかけられてんのよ」
「魔法、つまりそれがかかってる以上偽物が一発でバレるのか」
「そそ、魔法という技術を独自に発展させた人界だからこそなのよ」
「現金への信用度ってそういう事なんだね」
アノットが言うにはこの国というか、他国でも現金は偽装防止の魔法がかけられるという。
なので偽金は簡単にバレてしまうのだという。
しかもその魔法は国の一部の、造幣に関係する者しか知らないとか。
「異世界って凄いなぁ、偽装防止に魔法を使うのか」
「まあカードや電子決済だけしか持たない人は確実に困る事があるからよね」
「そういえばあたしの世界でも災害時はカードも電子決済も使えなくなったってあったな」
「以前のスマホの話もあったっしょ?全部一つにまとめたりすると困るって」
「そうだね、だから現金への信用度が高いっていうのもあるのか」
もちろんこの世界にもカードや電子決済は存在する。
ついでに言えばそれに対応してる店も多い。
ただそれでも現金への信用が大きい理由も相応にあるという事なのだ。
「現金の偽装防止ってやっぱりあるものなんだね」
「まあその辺は偽金が過去に出回った歴史があるからっぽいわね」
「そういう歴史はあるのか」
「なんにせよ歴史ってのはそんなもんよ、経験があるから対策を立てるんだしね」
「初見にやられるのはある程度の仕方なさもあるって考え方か」
カードや電子決済というのは異世界から持ち込まれたシステムでもある。
元々人界では現金決済が主流でもあった。
なので元々の考えが今も根強いというのはあるのだろう。
「現金の歴史も何かとあるんだねぇ」
「そうね、まあお金の支払を何でするかは好きにすりゃいいしね」
「その辺は持ってる手段を使えって事か」
「ちなみにガチで高額の買い物はカードでしか買えないものとかあるわよ」
「そういうところはしっかりしてるね、ガチの高額の買い物で詐欺られたりしたら怖いし」
ガチで高額な買い物はカードでしか買えない、そういうシステムがあったりする。
他にも踏み倒された店が訴えた事もあり、一部の支払いのシステムは法制化されたという。
なおこの世界では予約は前払いかつ入金が確認されてはじめて予約が成立するらしい。
「踏み倒された経験が過去に何度もあったっていう話とかないの?」
「そうね、過去にそれで商店主や商人が国に訴えたりした事はあったらしいわよ」
「予約のドタキャンみたいな?」
「そうそう、だから予約は前払いかつ入金が確認されるまでは成立しないシステムよ」
「歴史がいろいろ不穏すぎる」
歴史から様々な事を法制化してきているのもこの国らしい。
異世界から持ち込まれたシステムが入っている以上、信用問題にも発展する。
信用というのはそれだけ重いものなのだという。
「実際予約のドタキャンとかは商店同士で客の情報を共有してたりするのかな」
「機界のシステムが入ってる以上ブラックリストの共有は簡単になったしね」
「なるほど、ブラックリストを共有してるのか」
「商売ってのはマジで信用の上に成り立つもんよ、現金でも予約でもね」
「店の信用だけじゃなく、客の信用も大切っていう事なんだね」
アノットもたまにはいい事を言うものである。
信用は金では買えないからこそ、商売とは信用の上で成り立つもの。
信用のない人間から買う人は少ないし、店側も警戒するのである。
「現金への信用が分かった気がする、異世界って凄いわ」
「まあ信用っていうのはそういうもんよ」
「異世界の技術が入る事でまた大きく進歩した、なるほどなぁ」
現金は偽装防止の魔法がかけられているという話。
また元々は現金決済が主流でもあった事が今にも繋がる。
それしか持たないという事のリスクも同時に語っているのだろう。
ただ信用を大切にするという意味でもあるのだろう。




