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国の移り変わり

冬も近づき風が冷たくなり始めた季節。

そんな季節でも洗濯物は外に干すものである。

屋敷の庭が広いというのは何かと使える事も多い。

洗濯物を干している時に紫音が興味深そうに見ている。


「紫音って70年前ぐらいに亡くなった人なんだよね」


「そうだよ、当時はその病気は不治の病って言われてたかな」


「でも今はその薬の特効薬も出来たんだっけ」


紫音曰く屋敷から離れられないとはいえ国の移り変わりは経験している。


先代の皇帝が亡くなり、新たな皇帝が即位した事も、それから40年経過した事も。


「この国の事とかもある程度は詳しいんでしょ」


「うん、先代の皇帝が亡くなったのは40年前ぐらいかな」


「そんな前なのか、つまり今の皇帝は何歳なの?」


「記憶が確かなら70歳ぐらいかな、そろそろ代替わりするかもね」


「人って年齢の割に元気な人とかもいるけど、王様とか皇帝とかも引き際ってあるのかな」


紫音が言うには基本的には崩御した時に次代の皇帝に帝位が継承されるという。

ただ生きているうちに次代に帝位が引き継がれる事も歴史の中ではなくはないとか。


今のこの国の皇帝は70歳ぐらいらしいが、病気の話などは聞かない。


「皇帝が病に伏せたりしたら少なくとも国民には伝えられるよね?」


「まあ伝えられるだろうね、でもそういうニュースが来ないって事は健在って事だよ」


「帝国って言うと悪い国みたいなイメージがどうしてもあるんだけど」


「この国はそんな事はないと思うよ、少なくとも自由はあるし国民も不自由してないし」


「確かに圧政みたいなのはないよね、国民も外国に自由に行けたりするし」


理津子が言う帝国のイメージはやはり創作の影響が大きいのか。

異世界の帝国はそんな事もなく、国の政治はきちんと行き届いているようだ。


帝国とは言うものの皇帝もその臣下からも悪い噂は流れてこない。


「でも紫音は先代が崩御した時の事は知ってるんだよね?」


「知ってるよ、地縛霊とはいえそういうニュースはどうしても入ってくるからね」


「皇帝って実際どんな人なんだろう、あたしみたいな人には遠い人かもしれないけどさ」


「意外とそんな事はないかもよ?」


「まああたしの世界だと住んでた国は王政とか帝政じゃなかったし、よく分かんないね」


皇帝というのはやはり雲の上の人なのか。

ただ以前皇帝の元専属料理人に会った事もあった。


そう考えると思っているよりは周囲の人は緩いのかもしれない。


「実際その先代が崩御した時の国の様子とかどうだったの」


「国民が一週間喪に服したのはあったかな、あと帝都の人でだけだけど国葬もあったよ」


「へぇ、仮にも皇帝ともなるとそれだけ盛大に送ってもらえるんだね」


「先代と先々代はこの世界の発展に大きく貢献した皇帝でもあるからね」


「そういえばこの世界が他の世界と交流を持ってから80年ぐらいなんだっけ」


この人界が他の世界と交流を持ってから約80年ぐらいになる。

それに大きく貢献したのは先代と先々代の皇帝である事は言うまでもない。


つまり政治がある程度安定していたりするのはそうした他の世界との繋がりも大きいのだろう。


「この国もそうした皇帝の交代で移り変わってきたんだね」


「そうだね、皇帝っていうのも大変な仕事だけど、先代の功績はどうしてもあるし」


「先代が素晴らしい人だとなおさらだよね」


「交流が始まったのは先々代だから、先代はプレッシャーも大きかっただろうしね」


「今の皇帝もそれを水泡に帰したりしたらなんて言われるか分からないしねぇ」


皇帝というのも先代が素晴らしい人だとその重圧は凄いのだろう。

国を傾けたりしようものなら先代への背信になり、国民への裏切りになる。


信用とは積み上げるのには途方もない時間を使うが、崩れるのは本当に一瞬なのだ。


「帝国とは言っても先代と先々代はそれだけ大きい存在なんだね」


「皇帝本人が善良だとしても周囲の大臣とかの臣下まで善良とは限らないしね」


「あー、そういうパターンか」


「だからなのかそういう不穏分子を密かに消す闇の人達がいるって噂もあるけどね」


「噂とはいえそれはなかなかに穏やかではない話…」


紫音も本当かどうかは知らないというその闇の人達。

ただこれだけ帝国が安定しているという事は不穏分子は人知れず消されているのかもしれない。


トップ本人が善良だとしても臣下まで善良とは限らないというのは政治の常である。


「でもこの国の皇帝って思ってるよりいい人なんだね」


「正しくは先人が築いたものに敬意を払ってるのかもね」


「政治の難しさを感じさせられるなぁ」


紫音は見た目こそ女学生だが、幽霊なので約70年は生きている。

それもあり先代と先々代の皇帝の事は知っているのだ。


この人界が他の世界と交流を持ってから国も変わったのだという。


それはそれより前の事もある程度は察する事が出来る気がした。

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