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前進と停滞

すっかり秋の寒風が吹き始めた季節。

外に出るのに上着はまだ必要ないが、冷え始めたのも確か。

それでもそんな冷えた空の下で食べるアイスがまた美味しいという理津子。

そんな中サインと遭遇し一緒に冷え始めた空の下でアイスを食べる事に。


「サインってちょくちょく甘いものを食べに来るでしょ」


「ええ、甘いものとラーメンは定期的に摂取したくなるので」


「摂取って言い方がサインらしいなぁ」


そんなサインも科学者として様々な開発をする身でもある。


何かを作るというのは大変な事なのである。


「そういえばサインはエネルギーの開発をしてるんだよね」


「ええ、まあ技術というのは常に前進するものですから、そこも見ないといけませんが」


「技術は常に前進するもの?」


「そうです、新しく生まれたものが数年後には一世代前になったりしますから」


「そんなに前進する速度が速いものなんだね」


サイン曰く技術とは常に前に進み続けるものらしい。

なので進む事を怠ればそれは衰退を意味する事になる。


常に進み続けなければ気がついた時には衰退しているとも。


「でもそんなに凄い速度で前進していくんだね、技術って」


「だからこそ現状維持ですら衰退を意味するんですよ」


「そういえばあたしの世界でもそんな話があったなぁ」


「そうなんですか?」


「うん、世界シェア二位の通信会社が四年で資産のほぼ全てを失ったんだって」


理津子の言うその話は現状維持を選択したからこその話らしい。

そうした結果取り残されてしまいそれが衰退に繋がったと。


技術とは常に進み続けるという話も嘘ではないという事だ。


「サインは新しいエネルギーの開発には成功してるの?」


「エネルギーは簡単には作れるものでもないですからね、まだかかりそうですよ」


「でもそんな難しいものを作ってるサインはやっぱり凄いよね」


「エネルギーは携帯電話と違って寿命も長いですからね」


「それは確かにね」


サイン曰くエネルギーというのは一度生まれてしまえば長く生きるものらしい。

とはいえ新たなエネルギーを開発するのはそれだけ難しいとも。


実際この世界でも家電や携帯電話は常に新しいものが出てくるようである。


「それで今の携帯電話って何世代目ぐらいなの」


「今のだと35世代ぐらいですね、最初はスマホに始まり電話に落ち着いたので」


「35世代なのか、結構進んでるんだなぁ」


「携帯電話は大体4年ぐらいのペースで新しくなるので、今はそれぐらいですよ」


「意外とあっという間に進化していくと思うと凄い気がする」


とはいえ進化しても新たな機能が追加されていくという事でもない。

あくまでも通信速度が速くなるなどの進化なのだという。


理津子もその話には納得しているようで。


「確かにあたしの世界のスマホも新しいのが出ても劇的進化!とはならないもんね」


「道具の進化なんてそんなものなんですよ、家電なんかでもそうでしょう?」


「そうだね、洗濯機とかコンロとかテレビとか一定まで行くとそれ以上は大きく変わらないし」


「なんでも新しい機能を追加するというのは意外と難しいものなんですよね」


「機界の技術者でもそう言う辺りが結構現実的というか」


機界の技術者でもあり科学者でもあるサインが言うとなかなかにリアリティがある話だ。

新機能の追加はどこかで頭打ちになり、そこからはゆっくりになる。


また常に前進し続けても得られるものは通信速度や美麗な映像に留まるとも。


「あたしの世界でもテレビで動画が見られたり美麗な映像になったりはしたんだけどね」


「そこからは頭打ちになったのでしょう?」


「うん、そこからは大きな変化はなくなったかな」


「技術とは常に進み続けないといけない、ですがどこかでゆっくりになるんですよ」


「スマホも新機種が出ても大きな変化や機能追加はなくなってきつつあったしね」


その話こそが技術とは常に進み続けないといけないという話にもなる。

だがその一方でどこかでその前進する速度はゆっくりになっていく。


そして頭打ちになる時期が必ずやってくるのだと。


「機界の技術でもそうなるんだもんね」


「ええ、だからこそそこからは通信速度などの基本の部分が重視されていくんですよ」


「確かに通信速度の進化は著しいと思ったし、納得かも」


「新機能なんてものは簡単には思いつきませんから」


「機能ばかり追加しても仕方ないって事か」


この世界の携帯電話がシンプルに落ち着いた理由なのかもしれないと思った。

ゴテゴテしていても全てを使いこなすのは難しい。


結論はつまりそういう事なのだと。


「そろそろ帰らなきゃ、また何か話聞かせてね」


「ええ、それではまた」


「さてっと、怒られないうちに帰ろう」


サインが言う技術の進化に関する話。

常に進み続けないといけないというのはその通りなのだろう。


理津子も自分の世界の某通信会社があっという間に全てを失った話を思い出す。


現状維持とは何もしていないのに負けるという事である。

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