人の趣味
屋敷の中の散策を続ける理津子とアノット。
案内こそされているものの、屋敷の中には知らない部屋もある。
そんな部屋には家族の趣味なども見受けられる。
屋敷をきちんと把握するためにも散策を続ける事に。
「ここはなんだろう」
「見る限りだとパパっちの趣味の部屋じゃね?」
「確かに模型とかボトルシップとかもあるね」
部屋にあるのはショーケースに飾られた模型やボトルシップ。
男の子らしい趣味の部屋である。
「こういう細かい作業が出来る人って凄いよね」
「そう?リツコも服とか作るしお菓子とかも作るよね?」
「一応ね、でも模型とかはやった事がないから」
「ボトルシップとかどうやって組み立ててんだって思うよね」
「船とかの模型とかはやっぱり男の子が好きなものなのかな」
この部屋にある模型は主に船や城など。
それを見る限りやはりロザリオの父親も男の子なんだなと感じさせる。
とはいえ理津子もアノットも細かい作業自体は出来るわけで。
「そういやリツコって趣味とかないの?」
「あたしの趣味?料理じゃ駄目?あとお菓子を作るのは好きかな」
「料理は作るのは楽しいけど、後片付けがだるいんだよねぇ」
「アノットってその性格でよくメイドをやろうと思ったよね」
「失敬な!報酬さえあればきちんと働くぞ!」
アノットはある意味仕事に対する姿勢は一貫しているとも言える。
報酬の出ない仕事はやらないし、見向きもしない。
逆に報酬さえきちんと出るなら、その高いスキルをいかんなく発揮するからだ。
「でも報酬か、なら今度お菓子作るから少し付き合ってよ」
「マジ!ならなんでも付き合うっての!」
「決まりかな、もっとこっちの事を勉強したかったし」
「はいよ、それより次の部屋に行こうぜぇ」
そんなわけで次の部屋に移動する。
次の部屋は書庫のようだ。
父親の書斎とはずいぶんと趣向の異なる本が見受けられる。
「書庫かな?さっきの書斎とはずいぶんと趣向の違う本が多いね」
「お、絵本だ、懐かしいもんがあるねぇ」
「こっちの世界の絵本ってこんな感じなんだ、それにしても…」
「これ完全にママさんの趣味だよね」
「うん、そう思う」
絵本の趣味はどうやら母親のものの様子。
とはいえロザリオが愛されていたのを感じ取る事は出来る。
他にもアルバムなどもあるようだ。
「これアルバムだね」
「これがロザリオのパパっちとママさんかな?」
「ヒゲのかっこいいダンディだね、お父さん」
「ママさんは見る限り貴族じゃないよね、身なりからして中流家庭出身かな」
「身分差のある結婚って事?」
ロザリオの母親は中流家庭の人間だとアノットは言う。
貴族なら家の紋章があるはずとの事。
少なくとも写真を撮るなら家の紋章を身につけるはずだという。
「でもロザリオも口は悪いけど、根はいい子だよね」
「そうだねぇ、なんだかんだで親の遺伝子ってもんは感じるかね」
「でも世の中は理不尽だなって感じるなぁ」
「リツコの両親って生きてんの?」
「二人とも元気だよ、今頃食堂で料理でも作ってるんじゃないかな」
そういえばと理津子は気になっていた事を思い出す。
あの時こちらに召喚されたのはいいが、自分の世界ではどうなっているのか。
突然消えたのなら大学や家族、アパートの大家なども探しているのではないかと。
「あたしの世界であたしの扱いってどうなってるんだろ」
「召喚されたんだよね?突然消えたら驚くだろうし」
「連絡とかもしないまま消えたからね、失踪扱いになってないといいけど」
「流石に親とかその他諸々も心配してんじゃね?」
「なんとか連絡とか取れないかな」
それについても考える理津子。
そういえばと先日サインからもらった連絡先の事を思い出す。
彼女に相談すれば何か連絡する方法ぐらいは知れるかもしれないと考える。
「あの人に相談してみればなんとかなるかな、あとで連絡してみよう」
「さてっと、そんじゃロザリオのとこに戻ろうぜ」
「だね、それと夕食の献立も考えなきゃ」
そんなこんなで屋敷の散策は終える。
とりあえず自分の世界とのコンタクトが取れないかとサインに相談する事に。
連絡さえ出来ればこっちでも安心して暮らしていけるだろうからである。
突然消えた理津子の扱いがどうなっているのかはやはり気になるものだ。