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人の不幸は蜜の味

夏の暑さも本格化してきたので食材の暑さ対策も考える事になった。

商店で買った食材を家に持ち帰る時点で気をつけていく必要がある。

それでも港町という環境は海風の存在の大きさを感じさせる。

そんな帰り道、思わぬ人に出会う。


「港町って本当に暑いのに涼しいのがいい環境だよねぇ、風に感謝だよ」


「おや、リツコさんじゃないですか」


「あれ、帝じゃない、普段は引きこもってると思ってたのに、珍しいというか」


そこで出会ったのはまさかの帝だった。


引きこもりとはいえ外に全く出ないというわけではないようで。


「帝も外に出る事があるんだ」


「エミールに言われて少しずつ外にも出るようにしてるんですよ」


「へぇ、努力はしてるんだね」


「はい、まあ近所から少しずつですけどね」


「それでも偉いと思うよ、それにしても外に出てするのが買い食いなんだね」


帝が外に出てしているのは買い食いである。

こういう事をしてみたかったというのはあるのだろう。


夏という事もあり氷菓をかじっているようで。


「そういえばネットで今でも小説を書いたりしてるんでしょ」


「はい、まあネットが主戦場な以上どうしてもネガティブな意見なども来ますが」


「そればかりは仕方ないよ、あたしの世界でもそういうのは多かったしね」


「リツコさんの世界のネットでもネガティブな意見とかは多いんですね」


「詳しい事は分からないけど、ネガティブなタイトルの方がアクセス多いらしいよ」


理津子曰くネガティブなタイトルのブログや動画はアクセス数が多い。

その理由は詳しく知っているというわけではない。


だがそうしたネガティブなタイトルでアクセス数を稼ぐ手口は当然のようにあった。


「テレビのニュースでも毎日のように事件とか報道してるでしょ」


「ええ、してますね」


「あれってそれで事件や事故が多いと思うけど、実はそんな事は全くないんだよね」


「つまりそれにより事件や事故が多いと錯覚している、という事なんですか」


「ネガティブなニュースやタイトルはそれだけ数字を稼げるんだよ、不思議とね」


報道では毎日のように事件や事故を伝えている。

だがそれにより事件や事故が多いと感じるのはただの錯覚でもある。


少ない件数を毎日のように伝えれば当然のように多いと誤解してしまうのだ。


「でも人は別の誰かが不幸になると安心するんだってね、それで自分を保つんだって」


「なんか嫌ですね、どうせなら幸せな話を共有したいですよ」


「それはあるよね、そういうのに触れてると自分まで気が沈むし」


「それはやっぱり他人の不幸は蜜の味っていう事なんでしょうか」


「相手が得をするぐらいなら例え自分が損してでも相手に損をさせたいんだよ、きっとね」


相手が得をするぐらいなら自分が損してでも相手にも損をさせたい。

それは理津子の国の国民性とでも言うべき思考。


誰かの得が何よりも許せないという事である。


「誰かが得をするのが許せないっていうのはこっちの世界でもあるのかな」


「それはあるのかもしれませんね、人の心というのは難しいものです」


「でも他人の不幸は蜜の味だと感じる人は多いという事でもあるよね」


「リツコさんが言うとなんか生々しいですね」


「あたしの国の国民性みたいな話だからね」


それも含めて他人の不幸は蜜の味なのだろう。

自分も損をしてでも誰かが損をする事を喜ぶ。


言うならば陰湿なのだとも言える。


「帝もネガティブな意見が来ても無視すればいいよ、そういうスルースキルは大切だし」


「スルースキル…そうですね、今さらですし」


「そうそう、だからそんな人の事は羽虫程度に思っておけばいいんだよ」


「羽虫って、まあ確かにそうかもしれませんけど」


「帝の絵や小説を好きって言ってくれる人は大切にしなきゃね」


帝は最近は小説の他にも絵も描き始めたらしい。

なのでそれもネットにアップしているのだとか。


絵はまだそんなに上手くないが、ファンはついているらしい。


「なんにしてもネガティブな意見はスルーした方がいいよ」


「コメントなんかもネガティブなコメントの方がいいねが多かったりしますしね」


「現実は厳しいよね」


「全くですよ、人の気持ちも知らないで」


「やっぱりそういうのはスルーが基本だよね」


そんなネガティブなものへ集まる人は多い。

コメントへのいいねなどもネガティブなもののほうが多くつく。


人の業なのかもしれないと思うと複雑ではある。


「さて、それじゃあたしはそろそろ帰るね」


「はい、また神社に遊びに来てくださいね」


「うん、それじゃ」


「さて、次は何を買いますか」


そんな帝も悪意なき悪意には苦慮している様子。

人の不幸は蜜の味とは言ったものである。


やはり誰かが不幸になるのを見るのは心の安定にはいいものなのか。


スルースキルの大切さも感じた。

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