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魔法と科学

こっちの世界も今はすっかり夏の暑さになった快晴の日。

買い物帰りに買い食いを楽しむのも密かな楽しみだ。

お金を好きに使えるからこそ好きな料理を作ったり食べたり出来る。

そんな中オフの日のサインと鉢合わせになる。


「付き合ってくれてよかったの」


「私も今日はオフですから構いません、甘いものも欲しかったので」


「まあ夏だからお店で甘いものなんだけどね」


そんな買い物帰りとはいえ夏なので食材が傷まないようには配慮する。


サインもその辺は考えてくれているようで。


「それにしてもサインの装備を見ると暑い日の科学者って感じがするね」


「通気性のいい白衣と服、携帯用の扇風機とか片手間で作ったんですよ」


「片手間で作れるって、服まで作れるのか」


「機界の特殊素材と設備があるので、その辺は簡単ですよ」


「機界の科学技術って凄いね」


そんなサインの自作の通気性のいい衣類や小型の扇風機。

そうしたものは理津子の世界にもあるにはある。


とはいえ性能的にはやはり段違いなのだろう。


「でも機界との交流で高い技術はあるけど、人間の魔法もずいぶんな技術だよね」


「リツコさんの世界には魔法というのはなかったんですよね」


「うん、まあこっちの科学を見てるとそれもあたしの世界より凄いと思うけど」


「それでもリツコさんの世界の文明レベルは私から見れば高いと思いますよ」


「機界出身の人に言われると悪い気はしないかも」


サインも理津子の世界の文明レベルは高いと言う。

機械によるオートメーション化が出来るのは文明レベルが高い証拠でもあるとか。


もっと簡単に言えば水車が作れるのならその世界の文明レベルは保証出来るとも。


「あたしの世界だと充分に発展した科学は魔法と見分けがつかないって言うけど」


「科学は魔法と見分けがつかないですか、でも科学と魔法はそれこそ真逆の技術ですよ」


「そうなの?」


「はい、魔法は基本的に自然信仰が根底にあるんですが、科学はそれがないので」


「でも科学と魔法の区別がつかないっていうのは未知な事が出来るからなのかな」


サインが言うには科学と魔法は正反対にある技術なのだと。

魔法の根底にあるのは自然信仰、その一方で科学に信仰は存在しない。


それは機界という世界には宗教や神といった文化が存在しないという事でもあるとか。


「科学と魔法は正反対って言うけど、不可能を可能にしてきたのは共通じゃない?」


「それはありますね、昔は手紙が届くまで何日もかかるとかですから」


「それが日数どころか数分で連絡が取れるぐらいだもんね」


「ですが便利になってそれに慣れ過ぎるとそれはそれで危険なんですけどね」


「あー、それは分かるかも、あたしの世界だとスマホなくしたら何も出来なくなるし」


便利に慣れるというのは危険もあるのだとサインは言う。

それは文明が確実に今よりも劣る時代にタイムスリップしたいかという事でもある。


昔はよかったと言いつつもその時代に戻れるなら戻りたいか?という問いでもある。


「ただ技術は発展したけど、人としての繋がりみたいなのは希薄化したのかもね」


「そこは過去に戻れるなら戻りたいか?と聞けば戻りたい人が何人いるかですよ」


「現代の技術は便利になったけど不便な時代にはその時代なりのやり方はあるよね」


「結局は文明の発展というのは想像とは違うけど、確実に便利にはなったという事ですね」


「それは分かるかも、想像してた未来とは違うけど技術の進歩は凄く分かるし」


想像していた未来とは違う未来の世界。

だが文明や文化は確実に成長している。


なので昔の人が思い描いていた未来はそんな夢のある世界なのかもしれない。


「科学と魔法の区別がつかないって言うけど、昔の人が見たらどっちも魔法なのかもね」


「それこそ文明の発展を見てきた人というのはいるものですからね」


「この世界で言うなら80歳ぐらいの人がそれに該当するのかな」


「種族によって寿命が違うからこそなのかもですね」


「あたしの世界だと年号またぎを4回経験した人みたいなのは充分長生きだからねぇ」


文明や国の発展をその目で見てきた人がいる。

そうした人もいつかは墓に入る事になる。


科学と魔法はどちらも世の中を便利にしてきたという事は共通点だ。


「さて、そろそろ帰らなきゃ」


「ええ、また何か困ったら力になりますから」


「うん、それじゃね」


機界人から見た魔法とそうでない人から見た科学の違い。

充分に発展した科学は魔法と見分けがつかないのはそれを経験したからでもある。


ただ魔法も科学も人を豊かにしてきたものである事は共通だ。


昔の人が思い描いていた未来はとっくに通り過ぎた世界なのである。

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