牛乳を出す理由
夏も近づきつつあるので暑さも少しずつ強くなってきた様子。
こっちの世界には梅雨のようなものがないので、そこは心配はない。
とはいえ梅雨はないが雨季はあるので、雨が多く降る時期自体はある。
雨が多いとこっちの世界でも湿度が上がるので、料理人に湿度は天敵だ。
「最近は肉が多くなってるねぇ」
「夏も近いからな、体力つけろっていう事なんだろ」
「夏になったら外に出たくなくなるしね」
そんな最近は肉が増えたというのは体力つけろという事なのだろう。
その一方で理津子が食事に決まって出してくる飲み物もある。
「肉々しい料理だねぇ」
「ついでに味も濃い目にしてあるからね」
「夏が近いからってそういうのはどうなんだ」
「夏になる前からしっかり食べておけばバテにくくなるからね」
「そんなものなのかな」
とりあえず肉々しい料理をいただく事に。
そんな中前から気になってた疑問をアノットがぶつけてくる。
飲み物は決まって牛乳なのだが。
「りっちんさ、なんで毎回牛乳出してくるの?」
「ん?牛乳は苦手だった?」
「苦手というか、なんでなんだろうなって思ってる」
「そうだね、牛乳ってどんな料理にもつけると栄養価の調整が出来るんだよ」
「つまり牛乳と他の食べ物を合わせると栄養の調節が出来るって事なの?」
理津子曰く牛乳と他の食べ物を合わせると栄養価が高まるという。
要するに学校給食に牛乳がつく理由である。
牛乳は栄養価に優れる万能飲料なのだ。
「牛乳って確かに栄養価は優秀だけど、パンはともかくご飯には合わないような」
「それはあたしも思うけどね、まあドリアとかご飯にホワイトソースだしいいでしょ」
「そういう話なのか?」
「ただあたし低脂肪牛乳ってどうも好きになれないんだよね」
「低脂肪牛乳ってリツコの世界にはそういうのもあるんだね」
理津子曰く低カロリーやゼロカロリーみたいなのが好きではないという。
そういうのはダイエットしている人にはともかく、カロリーとは栄養価の事である。
高カロリーとはそれだけ栄養価が高いという事でもあるので。
「りっちんは割と太らない方だけど、低カロリーとかそういうのお嫌いさんなんね」
「なんで栄養価を低くしてるのさっていう話だからね」
「でもカロリーは消費しなかったら溜まっていくだろ」
「まあそうなんだけどね」
「ただ栄養はしっかり取らないと体に悪いよっていう話ではあるよね」
理津子が低脂肪牛乳を好まない理由は栄養素の話でもある。
ついでに鉄分や葉酸といったあれは牛乳ではなく乳飲料なのだ。
理津子は牛乳が好きなのであって、低脂肪牛乳が好きなのではない。
「まあでも牛乳って美味しいよね、あたしは嫌いではないし」
「栄養価的な意味でも牛乳って凄く優秀なんだけどね」
「でも低カロリーがいいかはともかくとしても、正義ではないと思うけどな」
「あたしの世界だとそういう空気が凄く強くて、あたしには理解出来なかったなぁ」
「カロリーが低いっていうのはつまり栄養が少なくなったって事だよね?」
牛乳の栄養価を知ってるからこそではある。
高カロリーが正しいとも思わないが、低カロリーを称賛するのは流石に変な気になる。
それは過度なダイエットブームなどのせいなのだろうか。
「りっちんってダイエットしてる人でもないよね」
「うーん、平均値をキープする程度には運動してるけどガリガリにはなりたくないかな」
「そういえばアノットも意外と平均的な数字じゃなかったか?」
「少なくともあたしやアノットの身長だと40キロは痩せすぎだよね」
「機界人の私にはそういうのはよく分からないけど」
セルベーラが分からないのはまあ仕方ない。
ただ平均値では普通に50キロ以上あるので、理津子もアノットも平均的ではある。
しっかり食べて平均値をキープする程度の運動をするのだ。
「肉も美味しいけど、牛乳って栄養価的には優秀なんよね」
「その辺はアノットも分かってるよね、まあ飲みすぎるとお腹がゆるくなるけど」
「ただなんにでも牛乳が合うとは思えないんだが」
「それ自体はあたしも過去に通った道だから、まあいいと思うよ」
「リツコもそう思ってたんだね」
ご飯に牛乳が合わないと感じるのは通った道である。
ただそれを感じていた学校給食は栄養士がいたからこそでもある。
成長してから牛乳の偉大さを知ったのである。
「まあ夏になる前に栄養を溜め込んでおきますかね」
「暑さで結構持っていかれるからね」
「夏は本当にきついからな、流石にバテたくないぞ」
「ここはまだ涼しい方だけどね」
夏になる前にしっかりと食べておく。
牛乳の栄養価は栄養士が考えていたからこそ。
不可解なメニューも多かった学校給食における牛乳の役割。
栄養はきちんと摂るという事でもある牛乳の意味なのだった。