神の味がする
こっちの世界もすっかり春の陽気になった様子。
神社でエミールや帝と近いうちに花見でもするかと約束してきたようだ。
とりあえず来週にでも予定を空けておく事で合意した。
そんな中相変わらずのカレーガチ勢なカレーを作っているようで。
「カレーの匂いがするけど、いつものカレーと匂いが違うわね」
「お前、犬みたいな嗅覚してるよな」
「メイド隊にいた時に鍛えられたとかかな」
そんなスパイスから作るカレーガチ勢の理津子。
今回作ったのはいつものカレーとはまた違うようで。
「今回のカレーはライスじゃなくてナンなのね」
「うん、それもバターチキンカレーだよ」
「バターチキンカレー?普通のカレーじゃないのか?」
「普段のはイギリスのカレーだけど、これはインドカレーだからね」
「よく分からないけど、普段食べてるのとは違う国のカレーなんだね」
作ってきたのはインドカレーのバターチキンカレー。
そしてさらにラッシーも作ってきた様子。
その美味しさは理津子もカレーガチ勢になる美味しさである。
「んまっ!?何これ、普段のカレーよりずっとうまっ!?」
「スパイスの配合もそうだけど、お手製のチーズナンとセットだからね」
「カレーも美味しいんだが、ナンも美味しいな、大きいのは相変わらずだが」
「バターチキンカレーとチーズナン、ラッシーはあたしが神の味と認めるものだよ」
「大げさな気はするけど、でも確かに凄く美味しいね」
理津子自身が神の味とすら言うバターチキンカレーとチーズナンとラッシー。
それは大学に通っていた時にたまに食べに行っていた店で出会った味。
父親が作るカレーは基本的にイギリス式のカレーで、それが出会いだったとか。
「このカレーなんでこんな美味いん?バターの影響かしら」
「お父さんを見て育ったあたしが神の味と感じる自慢の一品だからね」
「神の味は言いすぎな気もするが、でも確かに凄く美味しいなこのカレー」
「あたしがお店の人に頼み込んで教えてもらったレシピを自分流にしたものだからね」
「お店の人に頼み込んでレシピを聞き出すって、凄いね」
このバターチキンカレーのレシピは食べに行ったお店の人に教えてもらったものという。
それはその味に衝撃を受け、そして感銘を受けたという事だろう。
家でも基本的にイギリス式のカレーばかりを食べていたからこそでもある。
「でもお店の人って親切なんね、レシピ教えてくれるなんていい人じゃん」
「ラッシーも一緒に教わってきたからね、あたしに電撃が走った味だよ」
「でも一般に浸透してるのがイギリスのカレーって事はインドカレーはマイナーなのか?」
「うーん、外国の人が経営するカレー屋は結構あるから外食としてはそうでもないよ」
「つまり家庭料理ではそんな食べないけど、外食のインドカレー屋はたくさんあるんだ」
とはいえインドカレー屋と言いつつ経営者などはパキスタン人やネパール人が多い。
それでも味は本場のインドカレーなので、その辺りは特に気にしていなかった。
美味しいという事が大前提にある以上、どこの国とかは完全に二の次だ。
「でもただのチキンカレーならこんな美味しくならんよね、バターが大きいんかしら」
「あとバターの他にクリームも使ってるから、辛くても辛すぎないんだよね」
「クリームも使ってるのか、そういうのはお国柄というか、そういうのを感じるな」
「お店の人が親切だったのもあるけど、それまで作ってたカレーとは違ったのもあったからね」
「このラッシーって飲み物美味しいよね、この前飲んだ時の味は覚えてるし」
ラッシーは以前作った時からのお気に入りである。
神の味がする飲み物と言うのは伊達ではない。
冷たいラッシーは何よりも美味しい飲み物だ。
「はぁ、ラッシーの味は本当にやばい、神の味も納得だわぁ」
「バターチキンカレーとチーズナンとラッシーは無限に食べられるからね」
「ナンって普段からこんな大きいものなのか?」
「お店ではこれぐらいが標準だったよ」
「お店が大きいのか、標準サイズが大きいのか」
そんなバターチキンカレーとチーズナンとラッシー。
それは理津子が出会った神の味である。
お店の人に頼み込んで教わったレシピを自分流にしても基本は崩さないものだ。
「はぁ、こいつは確かに美味かったぜぇ、満足満足」
「窯を作ったのは正解だよね」
「ピザ窯でナンを焼くのはいいのか」
「まあいいんじゃないかな」
そんな神の味と言うインドカレー屋の定番メニュー。
今はそのレシピもすっかり覚えて作れるようになった。
インドカレーはまさに運命の出会いだったという理津子。
美味しいものはなんでも覚えたがる性分である。