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便利の代償

こっちの世界も完全に春の陽気になってきた季節。

桜の花も開いて神社や公園では桜がその花を満開にしている。

買い物に外に出た時などにもその景色は見られる様子。

そんな買い物の帰りにアノットに少し聞きたい事があったようだ。


「はい、激甘コーヒーと激甘ドーナツ」


「サンキュね、それで確かこの世界でスマホが廃れた理由が聞きたいんよね?」


「うん、サインから大体は聞いてるけど、それだけとも思えなくて」


買い物の帰りに公園で激甘コーヒーとドーナツを片手にそれについて聞く。


アノットは元スパイという事もあり、情報には割と精通しているのだ。


「なんでスマホが衰退したの?残ってはいるけど、ただ意識の変化だけとも思えないし」


「んー、そうねぇ、簡潔に言うと便利の代償を払ったから、って感じかねぇ」


「便利の代償?」


「そ、当時は新しく出るサービスがスマホ持ってる事が前提のもんばかりだったんよ」


「それで持ってない人達が何かやらかしたとかかな?」


アノットが言うには当時に出てきたサービスのほとんどはスマホを持っている前提だったと。

それにより国や他の世界の会社などでも民はスマホを持っていて当たり前と考えられていた。


それが発端となり個人情報の扱いの点から一人の空界人の貴族が事件を起こしたという。


「つまり国も社会もスマホを持ってる事は当たり前、持ってない奴は客じゃないとなったんだ」


「そ、でも世の中にはあえて持たない人も持てない人もいる、そこを完全に失念しとったの」


「当然持ってない人はそうしたサービスは受けられない、不公平が生まれたんだね」


「確かに当時はめっちゃ便利な時代だったけどね、ただその考えが蔓延してあの事件よ」


「やっぱり事件とかそういう事があったのか」


アノット曰く当時スマホを持っていない空界人の貴族が調査の際に揉めたという。

その貴族は通信局の関係者でもあり、当時スマホを介した犯罪の調査に協力していた。


そうした悪用のケースから個人情報が売買されていて警察と共にサービス側に開示請求をしたと。


「つまりその事件は犯罪に使われてた事と、捜査対象の拒否とかでいいの?」


「んー、要するに連絡手段がスマホしかない取引に当たってブチ切れたんよ」


「えっと、つまり捜査の関係からスマホしか連絡先がない事の危険を知ってたから、かな」


「そんなとこね、事業者は小さい会社だけど世界共通の法律でそれは禁止されとったんよ」


「つまり事業の連絡先にスマホや携帯電話の番号を使うのは世界共通で違法なんだね」


アノット曰く今も昔も事業や組織などの連絡先をスマホや携帯電話にするのは違法だという。

その貴族はそんな違法のサービスに当たってその会社も調査対象にしたという。


そうした結果その貴族はある日突然謎の死を遂げたという。


「その話を聞く限りその貴族は犯罪を調査してる中でマフィア的なものに目をつけられたとか?」


「そもそもスマホが犯罪に利用されて、しかも社会も持ってない人を客として見なくなったんよ」


「今は最小限の機能しかなくなったのはその事件が関係してるんだね」


「便利の代償ってつまり社会全体の認識の歪みの事なんよ」


「結局はデジタルの普及はしてるけど、持ってる事前提が当然になった事を危惧したとかかな」


結局はこの世界においてスマホが廃れた理由は便利に慣れすぎた事にあるという。

そうした結果開発における技術提供をした機界の技術者がそのデータを見たのもある。


まさかこんなデータが出るとは思っていなかったようでもあったとか。


「スマホ依存症とかじゃなく、人間の意識の問題がフォーカスされたって事?」


「そう、持ってない人の事を考えなくなった事が大きな転換点よ」


「でもそれそのものは禁止してないんだよね?」


「禁止はしてないけど、その一連の事から社会的な問題として警鐘は鳴らされたわね」


「結局は暗殺事件とデータの公表が社会に大きな影を落としたって事なのかな」


アノット曰く社会の認識の歪みと犯罪、さらに不公平が生まれた事も当然理由だ。

携帯電話の本来あるべき持っていると便利だが持つ事は義務ではないという事。


その本来持たねばならない考えを完全に失念していた事への戒めもあるのだろう。


「便利になるとそういう歪みが起きるっていうシンプルな話かな」


「まあ三行でまとめると義務じゃない、みんなが持つと、思うなよ、ですな」


「長い話を聞いた上でその三行のまとめなんだね」


「なんにしてもその失念してた事を再認識させたんよね、それだけの話よ」


「持ってて当然、それは持ってる人間の驕り高ぶりだったって事で終わるのかな」


みんなが持ってて当然という考え。

サービス側がそれを当然と考えるようになった過去。


携帯電話を持つというのはこの国でも他の世界でも義務では決してないのだ。


「まあ大まかには分かったかも」


「携帯電話なんてもんは持ちたい人だけが持てばいい、それだけなのよね」


「持つ事は決して義務じゃない、たったそれだけか」


理津子も自分の世界の人はスマホを持つ事が当たり前の時代。

だが持たないといけないという義務は法律には存在しない。


持たない事も立派な選択肢だ。


ただシンプルにみんなが持っていると思うなよ、それだけの話だった。

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