吸血鬼と病気
こっちの世界でもすっかり春の陽気になってきた様子。
そんな春の陽気は眠気も誘ってくる。
春眠暁を覚えずというものである。
春の陽気の下でまたあの人に遭遇した様子。
「はぁ、もうすっかり春だなぁ」
「あら、リツコじゃない」
「あ、レミリア、また休みなのかな」
そこで遭遇したのはレミリアだった。
相変わらず休みの日は好きにしているようで。
「レミリアって製薬会社の社長だったよね」
「そうよ、これでも手広くやってるんだから」
「こっちの世界の病気とかあたしはよく知らないんだけど、感染症とかあるの?」
「そりゃあるわよ、ただ吸血鬼は病気にならない種族だからこそなのよね」
「マジ?吸血鬼って凄くない?」
レミリアが言うには吸血鬼は病気にならない種族らしい。
羨ましすぎるというのもあるが、だからこそ薬の研究が出来るのかもしれない。
そんなこっちの世界の病気についても少し聞いてみたくなった。
「こっちの世界でもやっぱり地域によっては深刻な感染症があるとかあるの?」
「まあ地域によってはあるわよね、結局はそういうのって環境によるところも大きいし」
「そういうのって治療薬があるとか?それともワクチンとかなの?」
「地域にもよるけど、感染症は基本的にワクチンね、特効薬なんて多くの病気にはないのよ」
「やっぱりそういう世界なのか」
レミリアが言うには基本的にワクチンのような予防的な薬も普通に普及しているらしい。
それにより感染症を大きく減らした地域も当然あるのだと。
そもそも特効薬があるならとっくに世の中から病気は根絶されているのだ。
「特効薬がないのは異世界でも変わらないんだなぁ」
「あなたの世界でもそういう病気はあるのでしょう」
「うん、実際ワクチンが感染症をほぼ根絶したみたいな話もあるね」
「へぇ、あなたの世界のワクチンって効くのね」
「でもワクチンって病気にかからなくなるものじゃなくて、かかりにくくなるものでしょ」
そういうところはレミリアも分かっているようではある。
病気を根絶するというのは不可能なのだという事も。
とはいえそれで減らせるというのならそれは充分すぎるぐらい効いているのだ。
「レミリアの会社の薬ってそれだけ効くものなの?」
「提供してる先とかだと割と贔屓にされる程度には効くわよ」
「そうなのか、それでこっちの世界の病気もあたしの世界と似てたりするのかな」
「いろんな世界の人がいるから、その世界の病気とかも理解しないといけないのよ」
「あー、そうか、その世界独自のウイルスとかいそうだもんね」
レミリアが言うには様々な世界の病気を研究しているのだとか。
それはその種族についてしっかりと研究するという事でもある。
とはいえやはりワクチンを打つというのは種族に関係なく重要なのだそうだ。
「病気を防ぐのはワクチンっていうのはこっちの世界でも変わらないんだね」
「そもそも病気によっては治すより防いだ方がいい場合も多いのよ」
「歴史上で感染症が猛威を奮った時代があったりするの?」
「そういうのもあるわね、割とどの世界にもあるからこそ学ぶ事も多いわよ」
「なるほどねぇ、そういうのは世界が変わっても変わらないのか」
レミリア曰く感染症は一度持ち込まれてしまうと根絶はほぼ不可能になるという。
ただそれでも多くは大流行の時期をすぎれば自然と消えていくという。
ウイルスとは変異していくものだからこそ研究をしなければならないとも。
「それにしても吸血鬼が病気にかからない種族っていうのは初耳かも」
「でも病気との戦いは歴史から学ばないとならないのよ、それが医療の発展になるもの」
「歴史上の感染症で何人が亡くなったかみたいな事?」
「そうね、それに感染症は時代背景も割とあったりするものだもの」
「どんな病気もそれを研究するところから始まるんだなぁ」
レミリアが言うには薬は必ず病気が来てから生まれるものなのだという。
サンプルを採取してそれを研究するから薬は生まれる。
製薬会社というのもある程度の嫌われ者だという事だ。
「あたしがこっちの世界の病気にかかった場合薬とか効くのかな」
「あなたのサンプルとかも欲しいのだけどね、採血させてくれる?」
「まあ機会があれば」
「なら約束よ」
「病気にかからないっていう保証もないもんねぇ」
レミリアも製薬会社の社長として人々を救うのが仕事だ。
ただしどんな病気にも特効薬は存在しないのもまた事実。
世の中都合のいいものは存在しないのだ。
「そろそろ帰らなきゃ」
「また何か食べさせてよ」
「まあいいけど、それじゃ行こう」
「あなたの料理は美味しいから好きなのよね」
レミリアも理津子の料理は気に入っている様子。
こっちの世界の病気の事情もきちんと学ぶ必要がある。
理津子も病気にかからないという保証はないのだ。
ついでにレミリアからいろいろ聞いておく事にした。




