普通に食べられている肉
こっちの新年もすっかりいつもの日に戻った様子。
そんな中理津子はこっちだと普通に食べられている食材に目が行きがちだ。
自分の世界でも食べられているが、珍しい感じの食材。
それをこっちで見かけて料理に使ってみようと考えたりもする。
「りっちん、こっちで珍しい食材を見つける事ってたまにあるよね」
「あいつの世界では珍しいけど、こっちでは普通に食べてるやつだろ」
「世界が変わると食材の珍しさも変わってくるんだね」
そんな理津子が今回見つけたものは昔は普通に食べられていた肉。
父親の影響で調理自体は出来るようではある。
「りっちん、鯨肉ってそっちの世界では珍しかったん?」
「ん?ああ、昔は普通に食べてたけど現代だと珍しくなってる肉なんだよね」
「捕りすぎて数が減ったとかが理由なのか?」
「別に数は減ってないと思うよ、ただ鯨を食べる文化が減ってきたのかもね」
「とりあえず食べようよ」
そんな鯨肉だが、こっちの世界では普通に食べられている肉でもある。
ただこの屋敷があるのは港町なので、だからこそ普通に手に入るとも言える。
実際内陸の国では港町で当たり前の食材の中には珍しいものがあったりするとか。
「うん、普通に美味いやん、カレー揚げとか春巻きとか煮物とかカレーとかいろいろね」
「あたしの世界だと珍しくはなったけど、食べてる地域は普通にあるからね」
「料理はやっぱり親から教わったのか?」
「そうだよ、お父さんの人脈で珍しい肉とかが割と手に入ってたから」
「元料理人の人脈って凄いんだね」
そんな理津子の鯨肉料理は父親仕込みのものでもある。
珍しい食材は父親の人脈でたまに送られてきたものを触らせてもらっていたかららしい。
それにより鯨肉料理もしっかり覚えたのだという。
「にしてもりっちん、都会に出て背伸びしてた割にはお父さんっ子よね」
「別に親と険悪っていうわけでもないしね、大学は都会に出たけどね」
「地元を離れたかったとかそういう理由は特にないのか?」
「そういう理由は特にないけど、都会に出た方が出来る事が多そうだなとは思ったかな」
「それで都会に出たんだ」
理津子が言うには都会に出た方が出来る事が多そうだと思ったかららしい。
プロの料理人になるつもりはなかったので、ただ料理の勉強のつもりだったのか。
都会には様々な料理店が集まるので、それを食べてみたくなったのかもしれない。
「にしても鯨肉がりっちんの世界では珍しい肉だったとはねぇ」
「食べる事は出来るけど、売ってるのはあまり見なかったからねぇ」
「でも鯨肉は不味くはないだろ、固くなりやすいのが欠点とは思うが」
「だから固くなりにくいように調理したんだけどね」
「そういうのもしっかり教わってるんだね」
鯨肉のカレーや鯨肉春巻き、定番の竜田揚げや煮物などを作った。
どれも割と食べやすく、味もきちんと美味しい。
調味料は普通に手に入るので、味付けには特に困らないというのがある。
「ここは港町だから鯨肉が安く手に入るのも大きいよね」
「国が調査捕鯨とかしてたりしないの?」
「そういうのはしてないと思うぞ、ただ鯨を捕る漁師は普通にいるな」
「そうなんだ、だから鯨肉が普通に並んでたのか」
「鯨漁は普通にされてるよね、鯨漁師がいないと魚が捕れなくなるって言ってたよ」
そういう漁に関係する知識は漁師には普通にある様子。
つまり鯨漁師は他の魚を捕る漁師を間接的に助けているという事でもある。
鯨は小さな魚をたくさん食べる生き物だからである。
「鯨カレー美味しいね、カレー揚げとかもそうだけど鯨肉とカレーの相性はいいのね」
「鯨って魚じゃなくて哺乳類の仲間だから、魚肉じゃないんだよね、そこはあるのかも」
「つまり鯨って豚とか牛の仲間なのか、だから肉として向いてる料理はあるって事だな」
「鯨の竜田揚げは定番だけど、あたしは鯨カレーが特にお気に入りかなぁ」
「確かに鯨カレーは美味しいよね、カレーというかスパイスとの相性がいいのかな」
特に人気なのは鯨カレーの様子。
鯨肉が普通に食べられているとはいえどんな料理にするかは違うようだ。
こっちでは鯨の肉は港町特有の肉というのもある。
「うん、美味かったぜぇ」
「それはどうもね、また珍しい食材でも探してみよう」
「お前の世界では珍しい食材もこっちでは普通なのもあるんだろうしな」
「世界が変わるとそういう事情が出てくるのも面白いよね」
鯨肉はこっちの世界ではごく普通の肉。
とはいえ港町特有の肉であるのもまた事実。
保存や輸送の技術は確立されているとはいえ港町だからこその食材も多い。
海が目の前にあるというのは海の食材が豊富なのである。




