餅はお菓子に化けるもの
こっちの世界でも新年になりいつもの街の賑わいに戻った様子。
そんな中正月に結構な量を作った餅が案の定余ったようである。
そのまま食べるのは飽きられているので、処理する方法を考える。
そこで閃いた事を試してみる事にした。
「りっちん、餅でなんか作っとるね」
「余るの分かっててあれだけ作ったとしか思えないな」
「何を作ってるんだろうね」
そんな理津子が作ってきたものは餅を使ったお菓子だった。
チョコレートやアイスなど、いろいろ試作品として作ってみたようである。
「これマジで餅なん?」
「お餅だよ、大福とアイスを詰めた大福アイスとチョコでコーティングしたチョコ餅だね」
「餅がこんな風になるのか、完全にお菓子作りをマスターしてるな、お前」
「いちご大福とか白桃大福とかバナナ大福とか作ってみたから感想聞かせて」
「ならとりあえず食べてみようか」
大福は果物が手に入ったようで、いろいろ試してみたらしい。
そこに某雪見なんちゃらのような大福アイス。
あとは小さくした餅にチョコレートでコーティングしたチョコ餅とかである。
「ん、美味いねこれ、あんこに果物って割と合うのね」
「そう?ならよかった」
「白桃大福とかバナナ大福ってどうなんだと思ったけど、普通に美味いな」
「ももまんにヒントを得て作ってみたんだけどね、あんこ自体を桃餡とかにしたの」
「バナナ大福ってバナナ餡の大福なんだ、この発想はなかった」
白桃大福なんかは桃まんにヒントを得たようである。
桃の果肉を入れるのではなく桃餡を作るという発想に至ったようで味も割と好評だ。
本来のももまんは中身は普通のあんこだが、せっかくなので桃餡を作ったという。
「でもなんで桃なんかね」
「桃って不老長寿のシンボルなんだよ、あたしの世界のある国でそう言われてるの」
「桃が不老長寿のシンボルってなかなかに面白い話だな」
「孫悟空っていう猿が桃を食べて不老長寿になったっていう話から来てるみたいだね」
「つまり伝承とか神話とかそういうところから言われてるんだね」
そんな桃が不老長寿のシンボルとされる理由は孫悟空の話から。
桃については国によって様々言われているのもまた面白い。
ピーチネクターという飲み物の名前は西洋で言われるネクタルから来ているとも言われる。
「この大福アイス美味しいね、中はバニラアイスとかチョコアイスとかいろいろだね」
「うん、薄くしたお餅にアイスを包んで再冷凍して作ったんだよ」
「こういう発想が出てくる辺り、料理が好きっていうのが伝わるな」
「ついでに桃が少し余ったからネクターも作ったんだけど、どうかな」
「このネクターって凄い桃の味が濃厚で、凄く美味しいね」
桃が余ったからという理由でネクターも作ったという。
神々の酒と言われるネクタルをもじったと言われる飲み物がネクターである。
まさに神々の酒、生命の薬、不老不死の霊薬、そんな甘美な味なのだろう。
「ネクターってめっちゃ甘くてそれでめっちゃ濃厚なんだけど、なんなんこれ」
「語源はネクタルっていうお酒?だか薬だかから来てるみたいだよ」
「それがこの飲み物に繋がるのか?」
「要するに不老長寿のシンボルの桃で作った神々のお酒だか薬だかみたいな感じかな」
「そんな大層なネーミングにするって凄いね」
ネクターの語源はネクタル、桃は不老長寿のシンボル。
それから作った飲み物が美味しくないはずがないということ。
まあ作った人はそんな大層な名前になぜしたのかという事でもあるが。
「しっかし餅がこんな美味しいお菓子に化けるなんて凄いもんさね」
「大福も意外と上手く出来たものだね」
「いちご大福だけはいちご餡じゃなくてあんこの中に半分に切ったいちごを入れてるのか」
「いちご大福はそっちが正しいからね」
「ふーん、美味しいからいいけどね」
いちご大福や白桃大福、バナナ大福といった果物系の大福。
桃餡やバナナ餡を作ってそれを包んだ感じに作ったのはももまんやあんまんに得たヒント。
果物のあんこが合わないはずがないと踏んだのだろう。
「はぁ、これはハマっちまいそうな美味しさだったねぇ」
「まあお餅が余ったから作っただけなんだけどね」
「チョコ餅は思ってるより食べやすかったしそれもよかったぞ」
「また食べたいし作れそうなら作ってよ」
リクエストももらう程度には好評だった様子。
餅で作ったお菓子は大福やチョコ、アイスなど考え方次第でもある。
ヒントを得たのは中華まんというのもまた理津子らしさか。
果物餡の大福は意外とありなのかもしれない。