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白い服の天敵

クリスマスが目の前に迫り料理などの計画も大詰めに入る。

要するに美味しいものを食べようというだけの事でもある。

そもそも理津子はクリスマスは美味しいものを食べる日だと思っている。

こうした日は美味しいものが食べられると子供の時から楽しみだったらしい。


「クリスマスってのももうすぐなんねぇ」


「一年って早いんだな」


「でも少しは楽しくなったよね」


そんなクリスマスの準備をしつつも食事に手は抜かない。


最近は寒いので温かいものが美味しい季節だ。


「カレーの匂いがするね」


「うん、カレーうどん作ったんだけど」


「カレーうどんか、白い服を着てる奴はいないしいいな」


「カレーうどんのスープも自分で配合したスパイスを使ってるからね」


「どこまでもこだわるタイプなんだね」


カレーうどんを作ってきた理津子。

具は豚肉と玉ねぎなので、割とシンプルではある。


理津子曰くカレーうどんは豚肉が一番美味しいという。


「にしてもカレーうどんたぁ白い服が汚れちまうねぇ」


「白い服なんて着てないでしょ」


「ただ汁が跳ねるのは事実だけどな」


「でも寒い日には温かいカレーうどんは美味しいよね」


「うん、私もポカポカだよ」


カレーうどんで白い服が汚れるのはもはやお約束。

とはいえ好んで白い服でカレーうどんを食べるわけでもない。


寒い日に食べるカレーうどんは美味しいのだ。


「りっちん、普段のカレーとはまたスパイスの配合変えてるっしょ」


「うん、こういうのって食べ方に合わせていい感じの配合があるんだよね」


「お前、そういうところはマメだよな」


「料理は目分量でいいけど、お菓子はきっちり計量しなきゃいけないのがね」


「それがお菓子作りが苦手だった理由だっけ」


料理の本に書いてあるひとつまみや適量といった表現。

素人はそこにまず躓くものなのである。


とはいえそれは自分が美味しいと感じる量がそれなのだが。


「カレーうどんのスープ用のスパイスも別に配合する辺り流石よねぇ」


「でもカレーうどんはカレーに比べると汁気が強いから、それに合わせてるんだよね」


「そりゃスープ系の料理だしな、カレーうどんは」


「カレーもサラサラ系のものかドロドロ系のものか好みが分かれるしね」


「私はカレーはサラサラ系が好みかなぁ」


カレーにもサラサラ系とドロドロ系のものがある。

それについての好みもあるが、それによって配合を変えるのが理津子でもある。


美味しいを求める姿勢には手を抜かないと決めているのだ。


「りっちんの料理って普通に店で出せるレベルなんでないの」


「うーん、でもお店の料理って大衆向けに作られたものだからまた違うでしょ」


「確かに店の味を嫌う人ってあまりいないよな」


「だからお店の味とあたしの味はまた違うでしょ」


「そういえばリツコの家って食堂なんだったね」


家が大衆食堂だからこそそうした味については割と敏感なのだろう。

大衆受けする味というのを知っているのは大きい。


だからこそ自分の味はまだ店の味には届かないという事だ。


「店の味だともっと塩気とか濃かったりとかするん?」


「あたしの家だとそれこそ学生や外回りのサラリーマンが相手だからねぇ」


「だから自分の味はそれにはまだ届かないってか」


「でも美味しいものは体に悪いものだってお父さんも言ってたからね」


「美味しいものは体に悪いものっていうのはよく言われるよね」


美味しいものは体に悪いもの、それは理津子の父親も認めている事だ。

だからこそ薬も多量なら毒になり、毒も少量なら薬になるという事でもある。


料理とはそうした毒を美味しくいただくという事なのだというのが理津子の父親の言葉だ。


「美味しいものが体に悪いって世の中上手く出来とるよねぇ」


「お父さんが言うには料理って毒を美味しくいただく事なんだってさ」


「まあ確かに塩だって水だってたくさん摂取したら死ぬしな」


「そういう事だよ、だから食事は毒を美味しくいただく事なんだよね」


「私はそういうのは気にならないけど、人間の体って大変だね」


機界人のセルベーラにはそういうのは特に関係ない。

とはいえそれが食事なので面倒なのも確かだ。


毒を美味しくいただく事が食事であるという事なのだから。


「美味かったぜぇ、クリスマス楽しみにしとるよ」


「うん、何を作るかは大体決まったしね」


「なら期待してるぞ」


「クリスマスが楽しみだね」


そんなカレーうどんはこの季節には美味しいもの。

そして白い服に黄色いシミがつく料理。


クリスマスに出すものも大体は決まっている様子。


美味しいものが食べたいだけのクリスマスなのである。

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