酒より飯だ
クリスマスはないがクリスマスの料理は作るつもりの理津子。
ここは異世界なのでクリスマスはないし、ハロウィンなども当然ない。
ただ正月だけは他の世界も共通であるらしく、新年の大切さが分かる。
そんな理津子の飲み会のエピソードは理津子らしさしかないもので。
「そういやりっちんってお酒は飲める人だよね?」
「うん、飲めるけど自分から進んで飲む事はあまりないけどね」
「酒の美味しさとか分からんって事でもなさそうだけど」
また買い物に付き合ってくれているアノット。
美味しいお菓子は自分の足で探すのが信条のようで。
「りっちんって飲み会で料理食いまくって呼ばれなくなったって言っとったよね」
「あたしは飲食店は料理を食べに行く場所でお酒を飲みに行く場所だとは思ってないよ?」
「そりゃ呼ばれなくなるのも分かった気がするわな」
「そもそも飲み会にいいイメージがないもん、だからお酒より料理なんだよ」
「そういうイメージは世界の違いなんかねぇ」
だからなのか理津子が酒を勧められた時には決まってウイスキーを頼んでいたとか。
なので酒は普通に飲めるが、酒を理由にハメを外したくないのだろう。
だから酒を飲む時はウイスキーを頼むように決めていたとか。
「でもりっちんってタチの悪い酒飲みへの対処法知ってる感じはあるよね」
「あたしはお酒を飲む事自体は嫌いじゃないし、弱くもないからね」
「要するに酒によってハメを外すような人は滅びていいって事かね」
「そんなところかな、まあ自分から進んで飲むタイプじゃないだけだね」
「そういうとこは人付き合いが分かる感じもするわな」
理津子はだからなのかビールは好かない傾向にあるという。
その一方でエールビールは割と好きらしいので、そこは文化なのだと感じさせる。
料理と同じでお酒も美味しく飲みたい性分なのだろう、
「まありっちんってドカ盛り飯は作るけど、味より量みたいなのは好かんよね」
「当然でしょ、だからインスタ映えみたいな人は滅びて欲しいって思ってるよ」
「イン?なんねそれ」
「写真を撮ったらロクに食べもせずに捨てられるみたいなのは見てたしね」
「料理は食べるものっていう考え方のりっちんはそういうのはそりゃ許せんわなぁ」
残す事自体は嫌悪しているわけではないのも理津子。
ただ最初から食べられないのに大盛りを頼むような人は大嫌いなのだとか。
つまり残す前提で大盛りを頼むような奴は心の底から軽蔑するのだ。
「少年もドカ盛り飯をなんだかんだで食べてたし、そういうのはあるんかね」
「かもね、無理に食べろとは言わないけど年頃の子は食べなきゃ駄目なんだしさ」
「少年って結構細いしねぇ、りっちんがドカ盛り飯を作る理由が分かるわ」
「あとタピオカミルクティーみたいなのも嫌いだったな、タピオカだけ残す人が多いもん」
「りっちんって残す事を悪いと思うんじゃなくて、残す前提で大盛りを頼むとかが嫌いなんね」
理津子が許せないのは残すという行為ではなく、残す前提で大盛りなどを頼む事。
食べられないのに頼むなよと心の中で怒りの炎が燃えるらしい。
ロザリオもそんな理津子の気持ちは察しているのか、しっかり食べてくれるので。
「まーりっちんのお酒への考え方は割と分からんでもないわな」
「酔っ払う事が目的で飲むお酒なんて美味しくもなんともないもん」
「ウイスキーやワインは好きってのもそういう理由かいな」
「美味しいお酒ってそういうのでしょ?だからテキーラとかもそんな好きじゃないよ」
「シンプルに料理もお酒も美味しくいただきたいっていう強い気持ちを感じるねぇ」
そういう考え方は父親の影響も強いのだろう。
安くて美味しいというのは大衆食堂において大切な事。
その一方で量を食べさせるには美味しいというのが大前提になるからだ。
「りっちんはとりあえず生っていうのが大嫌いでしょ」
「あー、確かに大嫌いだね、あたしは料理が食べたいし、お酒は美味しく飲みたいの」
「そのとりあえず生っていうのは要するにまずはビールだって事でいい」
「そうだよ、飲み会に呼ばれなくなる理由が分かるでしょ」
「とりあえず生を拒否する時点で飲み会で嫌われる理由としては充分すぎるわな」
理津子は美味しくいただくというのが料理でもお酒でもある。
だからとりあえず生の文化は理解に苦しむ文化だったのだとも。
飲み会で酒を拒否して料理ばかりを頼んだ事も当然関係しているが。
「帰ってきたーっと、また美味しい飯期待しとるぜぇ」
「アノットも大体はきちんと食べてくれるから助かるしね」
「ワイン用意しなきゃ~っと」
そんな理津子の酒への考え方でもある。
お酒そのものを嫌っているのではないという事も。
美味しくいただくというのは理津子の信念のようなもの。
とりあえず生は味を優先する理津子には理解し難いのだ。