みんなが好きな鶏肉
来月にはもう年末になり、そのまま新年に突入しそうな様子。
理津子もクリスマスに向けていろいろと考えを巡らせる。
そんな中理津子の世界のチキンの話で興味を示すのはアノット。
普段の食事でもよく出てくる事から鶏肉が好きな人なのかと。
「そういやりっちんって鶏肉が好きなんかね」
「鶏肉?うーん、好きというか消費量が多いのはあったかも」
「つまり鶏肉をそれだけたくさん食べる国だったって事なんかね」
今回は珍しくアノットも買い物について来ている。
ついてきた理由は限定のお菓子を買うためではあるので、別行動から合流した。
「りっちんって普段から鶏肉料理をよく出す理由ってそんなクセみたいなもんなん?」
「かもしれない、家の食堂でも唐揚げとか人気でたくさん出てたし」
「唐揚げって美味しいよね、でも唐揚げと竜田揚げの違いはよー分からん」
「あれは衣に使ってる粉と下味の有無の違いだよ、竜田揚げは片栗粉を使うの」
「ほー、そんなもんなんねぇ」
こっちの世界にも鶏肉の揚げ物はある。
ただ唐揚げに比べると少しあっさりした感じなのがこっちの揚げ物だ。
ついでに言えば調理法の違いはあってもこっちでは全部フライドチキンである。
「こっちだと唐揚げみたいな揚げ物はあるけど、それもフライドチキンだしね」
「そうなんだよね、まあ竜界産のスパイスで味は割と好きかも」
「ただそれでもりっちんの作る唐揚げに比べると少しあっさりかね」
「それはあたしも感じる、肉の調理のしかたの違いなのかもね」
「りっちんの作る唐揚げは下味つけてから揚げてたんだっけか」
そんな調理法の違いは世界の違いを感じる。
スパイスは使うが下味はつけないのがこっちのフライドチキンだ。
ただ東の国の人間が運営する料理屋では唐揚げという名前らしい。
「つまりだけど、りっちんの国では鶏肉はみんな大好きって事かね」
「かもね、子供の好きなものって言うと唐揚げとかフライドチキンは鉄板だもん」
「ほー、子供が好きっていうのは確かに強いわな」
「ついでに言えば宗教的な禁食の対象に含まれてないのもあるしね」
「そういや確かにこの肉は駄目みたいな宗教があるって言っとったね」
鶏肉は宗教的な禁食の対象に含まれてないというのは大きい。
インスタントラーメンの元祖のあのラーメンもそうした理由でチキンになったのだ。
そうした理由も鶏肉が好まれる理由の一つなのだろう。
「でも大人も子供もみんな大好きっていう食べ物は確かに強いわな」
「コンビニでもホットスナックの定番はチキンだしね」
「コンビニってのはりっちんの世界のなんでも屋みたいな店って事でいい?」
「なんでも屋と言われれば割とそんな感じかも、24時間営業だし」
「24時間営業って、こっちだと信じられん話よねぇ」
こっちの世界にもスーパーマーケットはある。
ただコンビニはこっちの世界にはない。
そもそもこっちには24時間営業という考え方がまず存在しないのだ。
「でもりっちんが鶏肉をいろいろ使ってるのは鶏肉が好きな国ってのは分かるわな」
「好きなのもそうだけど、煮ても焼いても揚げても使える鶏肉が万能すぎるんだよね」
「他の肉でも調理法は一通りどれでも美味しくなるけど、鶏肉は確かにそこは強いわな」
「だから鶏肉ってどう調理しても大体美味しくなるのがとにかく強いんだよね」
「まあ鶏肉はそこが確かに強いよねぇ、他の肉と比べても頭一つ抜けてるし」
理津子も鶏肉はとにかくどう調理しても美味しいのが強すぎるのだと言う。
牛肉や豚肉でも調理法は一通りどれでも使えるのは変わらない。
ただそれでも鶏肉の秘めるポテンシャルはその二つより頭一つ抜けているのだと。
「りっちんが鶏肉を愛する理由って好みの他にそういうとこもあったんね」
「うん、だからこっちに来てからはいろんな部位を使う事にも挑戦してるよ」
「ほー、それはまた頼もしい限りね」
「あたしの世界だと需要の多い肉が割とはっきりしてたのもあるしね」
「もも肉とか胸肉とかそういうのね、まーあたしは美味しいものならなんでも好きよ」
そんなアノットは甘党なのは当然として、そこまでの好き嫌いはない、
ただ苦手な食べ物は本人が言うにはあるらしい、
そんな素振りを見せないのは元メイド隊のエースを張っていただけの経験なのだろう。
「帰ってきたし、また美味い飯期待してるぜぇ」
「はいはい、アノットは美味しそうに食べてくれるから嬉しいしね」
「そんじゃ早速買ってきたお菓子にありつきますか」
アノットはお菓子を食べても普通に食事も食べている。
その割にそこまで太る感じがしないのは何か秘密があるのか。
スタイルはしっかり維持しているし、それなのに食べる。
アノットも理津子も食べる割にはそこまで太らない奇跡の体質なのかもしれない。




