異世界インスタント麺
最近はこっちの世界も冷え始めてきた。
冬にはまだ早いが冬は確実にそこまで来ている。
温かい料理を増やす事も考えているが、その前に前から気になっていた事。
普通に食べていたが、今さらながら切り出してみる。
「りっちん、最近はカップ麺とか袋麺をよく買ってくるよね」
「あいつ、おやつ感覚でカップ麺食う奴だしな」
「それなのに夕食もしっかり食べるよね」
そんな理津子が買ってきているカップ麺。
世界の事情は違うはずなのに普通に存在している事には驚いているようで。
「りっちん、最近カップ麺にハマってたりするん?」
「ハマってるっていうか、普通に食べててあれだけど、こっちにもあるんだなって」
「インスタント麺は空界から持ち込まれた食べ物だぞ、あそこは空の上の世界だし」
「そうなの?そういうのもまた異世界の異世界って感じがするなぁ」
「空界は浮遊大陸の世界で、隣の大陸まで遠いとかあるからだよね」
こっちの世界のインスタント麺は空界の食文化なのだという。
空界は次の浮遊島まで遠い事も珍しくなく、保存と数を確保出来るからなのだろう。
食料などを買い込み空を翔る人達が多いのが空界なのだと。
「りっちんの世界にもあるんっしょ?そういうの」
「うん、まあ世に出た当初に比べると複雑化した気はするけど」
「シンプルに作って食べられるのが強みだろ?インスタント麺は」
「うん、だから後入れスープとかかやくとかスパイスとかなんとか」
「あとから入れるタイプのものがあるんだ」
こっちの世界では味は割と種類が多いものの、後入れスープのようなものは見ない。
袋麺も茹でたお湯でスープを溶く作りにはなっていない。
なので袋麺の場合はスープを別に作り湯切りした麺をスープにインする感じらしい。
「りっちんの世界のカップ麺って複雑化したんね、シンプルなのがいいのに」
「オイルの後入れとかもあるかな、元祖はそれこそお湯を注ぐだけだったのに」
「なんでそんな手間になったんだ、インスタント麺は簡単に作れるのがいいんだろ」
「それで先に入れたりする事故が起こったりするからねぇ」
「後入れスープとかはそういう事故がたまにあるんだね」
実際それでやらかしたという話がネットに上がったりする。
疲れているとやらかしそうな話ではある。
だからこっちの世界はシンプルなものしかないのが逆にありがたいと。
「そういやカップ麺の他にチルドタイプのラーメンとかも買ってきてるよね」
「ああ、ああいうのもこっちにもあるんだなって最初は驚いたよ」
「チルドタイプのやつはお湯を沸騰させないまま作ろうとしてベチャる奴が多いぞ」
「お父さんもそういうのはお湯を必ず沸騰させろって釘を刺してたな」
「リツコも昔はそれで失敗した経験ありかな」
チルドタイプのラーメンなんかもこっちにもある。
そういう手軽なラーメンなんかが愛されるのが空界なのだろう。
空の上でカップ麺やラーメンは揺れがどうなのか気になったりするが。
「んでりっちん的にこっちのカップ麺はどうなのよ」
「うん、味とかは思ってるより悪くないかな、ただ焼きそばが少ないのは気になるけど」
「インスタント焼きそばは空界にもあるにはあるらしいけどな」
「一応見てるんだけどね、ただ販売スペースは少ないみたい」
「空界でも食べられてはいるけど、やっぱりシンプルなのが人気なんだよね」
シンプルなやつが人気なのはなんとなく分かる気はする。
焼きそばが少ないのは恐らく手間的な理由なのだろうとは想像する。
実際理津子もカップ焼きそばやまぜそばは好きだが、シンプルなものを好むので。
「まあ結局は手間よね、インスタント焼きそばはお湯切ってソース混ぜるだけが楽よ」
「あとあたしの国だと西向けとか東向けとかそういうスープが違うものとかあったね」
「それってつまり同じ麺や具だけどスープが東の地域と西の地域のものがあるのか」
「うん、水質の関係でうどんやそばは東と西でスープが違うんだよ」
「へぇ、なんか面白いね、インスタント麺でもそういうのがあるんだ」
カップうどんやそばはスープが東向けと西向けのものがあったりする。
それはスープを作るのに使う水の水質の関係なのだ。
ちなみに理津子は東の人間だが西向けが圧倒的に好きらしい。
「とりあえずカップ麺食おうぜぇ」
「そうだね、たまにはいいと思うし」
「別にたまにはカップ麺や袋麺でも怒ったりしないぞ」
「たまには楽をしてもいいと思うしね」
そんなこっちの世界のインスタント麺の来歴。
空界で好んで食べられていてそれが持ち込まれたものだと。
だからなのか理津子の世界に比べるとシンプルなものが多い。
こっちの世界は機界の技術などもそうだが、シンプルが好きらしい。




