ネバネバな美味
最近はすっかり夏模様になり暑さも増してきている。
とはいえ海風のおかげで自分の世界にいた時に比べると全然涼しい。
そんな理津子は相変わらず食事の献立を考える。
買い物で面白そうなものを見つけたようで。
「うーん、今日の食事何にするかな…」
「あ、ここに並んでるのよさそうだね、これに決まり」
「さて、他にも買うもの買って払わなきゃね」
店で面白そうなものを見つけた様子の理津子。
それを購入して帰り際に少し寄り道をしていくようだ。
「これこれ、ここのフードコートのこれが美味しいんだよね」
「あれ?リツコサンじゃないデスか」
「あ、エミール、エミールも買い物かな」
「ハイ、帝様も暑いってうるさいので何か冷たい食事を考えてマス」
「そっちもなんだね」
そこに買い物に来ていたエミールに遭遇する。
こういう偶然は普通はそこまで多くないものだ。
同じ街に住んでいるからこそたまに遭遇するのはある。
「エミールは何を作ってあげるつもりなのかな」
「まあ定番のそうめんデスよね、暑い日はそればかりデス」
「そうめんってあれでカロリーが割と高いよ、安いそうめんは細いうどんだし」
「そうなのデスか?」
「うん、本物のそうめんでも安いそうめんでもカロリーは高めだからね」
理津子も夏にそうめんばかりで体重が増えた経験がある。
その際に父親から高いそうめんも安いそうめんもカロリーは馬鹿にならないと教わった。
そして安いプライベートブランドなんかのそうめんは細いうどんだと聞いている。
「そうだ、ならだしを作ってそれでそうめんにかけて食べれば?美味しいよ」
「だし?だし汁でもそうめんにかけるのデスか?」
「えっと、あたしの世界の地域の郷土料理みたいなやつなんだけど」
「郷土料理デスか、興味深いので作ってみたいデス」
「ならレシピを教えてあげるよ、そんな難しくないから」
そう言うとメモ帳にだしのレシピを手慣れた手付きで書いていく。
理津子も今夜はそれにしようと思っていたもの。
割とアレンジは利くので好みで入れるものを選んでもいい。
「はい、これがだしのレシピ」
「意外と好きに使うものを選んでいいのデスね」
「うん、そこに書いたものから好きなものを使えばいいから」
「分かりマシタ、では作ってみマスね」
「そうめんとかご飯とかにかけて食べると美味しいから」
そんな理津子は好き嫌いはそこまである方でもない。
苦手な食べ物はあるが、嫌いな食べ物はほとんどない。
なので料理を作る際には食べる側の好みを考える傾向がある。
「そういえばこの街って港町だから海風で涼しいよね」
「ハイ、夏でも海風があるので思っているよりも涼しいデスよ」
「あたしの故郷だと島国で湿気が酷くてそのせいで蒸し暑かったんだよねぇ」
「湿度が高いという事デスか、ここも海沿いなのにずいぶんと違うのデスね」
「同じ海沿いなのにこの夏の感じ方の違いはなんだろうね、やっぱり湿度か」
海風の吹く港町は夏でも思っているより涼しい。
理津子の住んでいたところは湿度のせいで蒸し暑さが酷い。
ここは湿度が低くていい土地だと理津子は感じているようだ。
「夏ってそうめんが多くなりがちだけど、そうめんって意外と太るんだよねぇ」
「ああ見えてカロリーが高いというのは盲点デシタ」
「安いそうめんは細いうどんだし、いいそうめんは乾燥させる際に油を使ってるからね」
「カロリーが高い理由はそれなのデスね」
「ついでに乾麺って茹でると大体倍になるから二束茹でると想像より多くなるんだよね」
乾麺は茹でると大体倍になる、それは足りないと思った時に陥る罠。
乾麺一束だと足りない、だが二束茹でると多いというのが乾麺あるあるだ。
そうめんに限らず乾麺で多く食べようとすると二束は多くなるのである。
「そうめんってあれ大人数で食べるものだよ、一人だと量の調節が難しいんだもん」
「そういう経験があるみたいな口ぶりデスね」
「スパゲッティを一束で足りないから二束茹でたら満腹になったんだよ」
「乾麺は茹でると倍になるってそういう事デスか」
「教訓としてはたくさん食べる際の乾麺の適量は一束と半束が適量って事だね」
そうめんの思い出から語られる理津子の乾麺は茹でると倍になるという話。
元々たくさん食べる理津子だが、乾麺に関してはそれはいい勉強になったらしい。
理津子の父親も一束で足りないなら乾麺は一束と半束がちょうどいいと言っていたようで。
「さて、それじゃそろそろ帰るよ、夏はしっかり食べなきゃ駄目だからね」
「ハイ、あとそうめんばかりもやめようと思いマス」
「それがいいね、それじゃね」
そうしてそこで別れて屋敷に帰る。
そうめんは思っている以上に高カロリー。
乾麺は茹でると倍になる。
夏に陥りがちなそうめんの罠である。