竜界旅行~休息~
竜界旅行で目的の多くは達した理津子。
明日には人界に帰るので今日はゆっくりする事にした。
とはいえここは砂漠の中の街なので夜は冷えてしまう。
なので引きこもったまま休息を取る事にした。
「観光客向けに作られた街だから設備は充実してるよね」
「大きな浴場とかもあるけど、地元の人の姿は少ないな」
「係員とかそれぐらいしかいないよね」
地元の人は基本的に係員や店員などばかり。
観光客向けに作られた街だから無理もないのはあるが。
「観光客に向けてるからなんか寂しい感じはあるなぁ」
「竜界人自体は割と外の世界にも目を向けてるけどな」
「でも自国内だと観光客に向けた街とかを作るんだね」
「それは他の世界でも似たようなものだけどね」
「ふーん、まあ観光客って扱いが基本なのかな」
別の世界の人が別の世界に勉強のために居住を移す事はあるらしい。
実際人界でもそういう人は多くいる。
なので移住している人というのも結構いるとセルベーラは言う。
「こういう観光客向けの街ってどこの世界にも今はあるんだよね?」
「今はな、ただ目的を持って移住する人も結構いるから、その限りでもないが」
「サインとかはそんな感じなんだっけ」
「そうだね、私もそんな感じだよ」
「移住も出来るっていうのは交流が進んでる証拠だなぁ」
そんな話をしながら宿の中を見て回る。
すると妙にレトロ感のあるゲームコーナーを見つける。
少し気になったので入ってみる事に。
「こっちの世界にもゲームコーナーとかあるのか」
「機界の技術だろうな、こういうのは」
「少しやっていこうか、お金もあるし」
「お菓子取ってよ」
「いいよ、任せて」
そんなわけで飴やラムネなどを落とす機械にお金を投入する。
そしてそれを上手く操りお菓子をそこそこゲットする。
世界が違うからなのだろうか、どこか珍しい感じのお菓子のようだ。
「ん、これ思ってるより美味しいかも」
「これって炭酸系の飴か?」
「こっちは明らかにラムネなんだけど、ラムネじゃないっぽいね」
「こういうジャンク的なお菓子がいいんだよね」
「セルベーラって精神年齢が高いように感じる」
理津子の世界だと俗に言う駄菓子に当たるもの。
そういうお菓子をこっちでも食べられるとは思わなかった。
人界でもお菓子はあるが、駄菓子のようなものはそんなに見なかったのもある。
「こういうのってよく分からない会社が作ってる不思議なお菓子って感じだよね」
「お前の世界だとこういうお菓子はそういうものなのか」
「正しくはよく分からないというか、小さな会社が細々と作ってる感じ」
「まあ大きな会社が作るものではないと思うけど」
「ラムネ菓子ってあたし好きなんだよね、たくさん口に入れてボリボリするのが好き」
そういうところだぞと言いたそうな目でロザリオが理津子を見る。
実際理津子はギャルと言いつつどこかおっさん臭い一面がある。
年齢の割に言動が、という事なのか。
「でもなんであたしの世界で見たようなゲーム機があるのか」
「似てるだけの別物だろ」
「まあそうだと思いたいけどね」
「不思議な感じがするって事なのかな」
「うーん、機界の技術ならデータぐらいは取ってそうな…?」
なんにせよこういうどこかで見たものが見られる不思議な異世界である。
理津子の世界で見た事があるようなそっくりな技術。
ただ技術の水準自体はそれよりも遥かに高いようではあるが。
「異世界に来たと思ったらそっくりなものがたくさんあったから、まあそうなのかも」
「似てるけどどこか違う世界って感じなんだろ」
「うん、似てるものはたくさんあるけど食べ物の旬が違うとかそういうの」
「異世界って言ってもそういう世界もあるって事なのかな」
「かもしれない」
異世界の異世界に行くという今回の不思議な旅行。
それでもそういう見た事のないものが見られるのはいいものだと思った。
なんだかんだで異世界を満喫しているようではある。
「さて、温泉でも行こうか」
「一緒には入らないからな」
「少年、冷たいなぁ」
「リツコの貞操概念とかどうなってるの?」
「とりあえず夕食までは温泉とサウナでも行こうかな」
そんな観光客向けの宿も楽しんではいるようである。
理津子はそういうのは気にしないタイプであるのがロザリオにも悩みのタネだ。
屋敷でも風呂上がりの格好に心臓バクバクである。
「それじゃ行ってくるね」
「僕は飲み物でも買って部屋に戻るからな」
「あとでねー」
そんな夜も楽しんだ上で夜は過ぎていく。
明日には帰国するので荷物などもまとめる事に。
なんだかんだで楽しい旅行ではあった。
目的のスパイスもこの世界の美味しさを覚えるのに使うのである。




