竜界旅行~配合~
竜界旅行も二日目になった。
宿の食事なども美味しいが、現地人向けの料理が理津子は気に入った様子。
そんな中目的も忘れていないようではある。
今回の目的地は言うまでもなくらしい。
「おー、着いたねぇ」
「こんな街外れの小さな集落になんの用なんだよ」
「スパイスが目的なんだっけ」
理津子が竜車でやってきたのは街外れにある集落。
ここは竜界のスパイスの多くを生産する農家のある集落らしい。
「すんすん、これは間違いなくスパイスの匂いだね」
「お前の鼻は犬並みの嗅覚でもあるのか」
「失礼な、匂いで大体は分かるだけだよ」
「料理が得意すぎて嗅覚までよくなったのかな」
「それじゃいざ行くよ」
そのまま集落の中を見て回る事に。
民家からはスパイスのかぐわしい匂いが漂ってくる。
どうやら集落の住人が料理をしているようで。
「スパイスの世界だけあってカレーとかジャンバラヤやみたいな料理が多いのかな」
「竜界はドラゴンは肉食だけど竜人なんかは米が主食だからな」
「そうなの?竜界ってお米が主食なんだ」
「でも人界のお米に比べると細いお米が多いよ、その方がスパイスが馴染むんだって」
「なるほど、タイ米とかそういう感じのお米が主流なのか」
竜界人は基本的には米が主食らしい。
その一方でドラゴンは主に肉食なのだそうな。
そして米の種類も理津子の世界で言うタイ米のような感じの米が主流らしい。
「あ、ここだね」
「ここはスパイスの店か?それならもっと大きな店が都市にあっただろ」
「調べてあるからね、ここなら私の欲しい物が手に入るんだよ」
「そうなの?」
「それじゃ入るよ」
少し古びた感じのスパイスの店。
店に入った理津子は店主の初老の竜人に話をする。
そこで目的のスパイスを手に入れるつもりのようだ。
「えーっと、これとこれ、あとはこれにこれと…これかな」
「きちんと知ってて選んでるんだよな」
「これをこうやって配合して…あとはこれをしっかりと…」
「ここってもしかして自分好みに配合させてもらえるのかな」
「うん、出来た、それじゃ計ってもらおうっと」
理津子が自分で配合したスパイスを店主に見せてその値段を決めてもらう。
この店は自分で配合した言わばマイスパイスを作れる店なのだ。
そして配合表と作ったスパイスを瓶に詰めてもらいそれをお買い上げする。
「うん、いい感じに作れたと思う」
「ここに来た理由ってまさかマイスパイスを作るためなのか」
「そうだよ、人界でも手に入るスパイスを使ったマイスパイス作りだね」
「なるほど、だからわざわざここに来たのか」
「それと少しお腹を満たしに行こうか、行くよ」
この集落には自由に使える小さな食堂があるらしい。
ただし店というわけではなく、持ち込んで自分で作る形式なのだとか。
集落の中でも食材は買えるので、それを買って食堂へ向かう。
「それじゃ作るから少し待っててね」
「集落自体はそんな大きくないのにな」
「割と歓迎されてたよね」
「観光客はあまり来ないからなのかな」
「でもいいものが手に入ったから、来たかいがあったね」
そのまま軽く料理を済ませ昼食のカレーピラフを作る。
さっき買ったスパイスを試しに使ってみようという事もある。
自分の世界では自分の配合も持っているが、この世界でもという事らしい。
「出来たよ、さっき買ったスパイスのカレーピラフ」
「お前の適応力の高さには相変わらず驚くけどな」
「異世界に来てそこそこ経ってるからね」
「リツコも家政婦として呼ばれたのに主導権ガッチリだよね」
「よけいな事はしないようにしてるつもりなんだけどね」
とりあえずスパイスの試作品として作ったカレーピラフをいただく。
持ち込んで好きに作れる食堂というのも珍しいと理津子は思う。
竜界は観光客向けに開発を進めた一方で現地民はそのままの暮らしをしているようである。
「それにしても竜界って観光客向けに開発したけど、現地民は変わらないんだね」
「竜界人自体は他の世界への進出は積極的だったらしいけどな」
「でも自分の世界では生活は大きく変わってないのかな」
「元々の生活を捨ててないだけかもね、観光客は普通に受け入れてるし」
「別の世界の商人なんかも見かけたから、排他的とまではいかない感じだよね」
竜界自体は排他的という感じはないが、外敵には容赦はない世界だ。
なので問題さえ持ち込まなければ他の世界の人でも歓迎される。
この集落のようなところも他にもあり、他の世界の商人が買い付けに来たりしているようだ。
「ふぅ、満足したかな」
「他にも観光するんだろ、日が落ちる前に終わらせろよ」
「それじゃ次に行こうか」
目的のスパイスは手に入れた理津子。
人界でも手に入るものを教えてもらった上でのマイスパイス。
こっちの世界でだからこその楽しみでもある。
異世界の料理はそれが面白いと理津子は楽しそうに語る。




