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網目模様

すっかりこっちの世界にも馴染んでいる理津子。

それでもこっちの世界では食べられないものも当然ある。

なので材料が手に入るのなら自分で作る事にしている。

今回もそんなないものを作っているようだ。


「なんか甘い匂いがすんねぇ」


「あいつ自分の世界の食べ物をこっちで自作してるからな」


「この世界にはない食べ物ってあるもんね」


そんな話をしていると出来たものが運ばれてくる。


こっちにはない食べ物でもあるそれは網目模様のあのパンのようだ。


「この網目模様のパンはなんなのかね」


「メロンパンだよ、何か足りないと思ってたから作ったの」


「メロンパン?メロンの匂いはしないぞ」


「メロンパンはメロンみたいな網目模様だからメロンパンって言うんだよ」


「でも甘い匂いはするね」


パン焼き窯も増設しているので、パンの自作はもはやお手の物。

そこでこっちにはないメロンパンを自作したようだ。


パンと言うよりは菓子パンに近いものではあるが。


「ん、これ美味いじゃん、サクサクしてて砂糖も結構使ってんのね」


「メロンパンはこのクッキー生地が美味しさの理由だからね」


「でもメロン味でもないのにメロンパンっていうんだな」


「メロンみたいな網目模様だからそれを見立ててメロンパンなんだよ」


「上はサクサクで下はフワフワのパンなんて面白いね」


理津子が作ったメロンパンは上のクッキー生地でサクサク、下はフワフワだ。

こっちの世界ではそもそもパンは固いものでもある。


なので理津子が家で普通に作るフワフワのパン自体が珍しいようでもある。


「でも我が家のパンはすっかりフワフワのパンになっちまったね」


「材料が揃うから自作してるだけなんだけど、この世界だと固いのが普通なんだよね」


「僕もお前が作るまではパンは固いものだと思ってたぞ」


「あたしの世界でもフランスパンとかは割と固いんだけどね」


「リツコの国のパンはフワフワなんだっけ」


理津子の世界でも外国のパンは普通に固いパンが多い。

柔らかいパンというのは日本特有のものでもあるとも言える。


外国のパンはその代わり保存が効くのだが、日本のパンは日持ちしないのだ。


「にしてもさ、このフワフワのパンって普通に美味しいよね、甘いし」


「これはメロンパンだから砂糖を使ってるけど、普段は砂糖もそんな使ってないよ」


「砂糖なしであんなに甘いパンが作れるって、お前どうやって作ってるんだよ」


「あたしの世界だと野菜とか果物も品種改良で甘いのが当たり前だもん」


「なんでも甘くしたがる人なのかな、リツコの世界の人は」


実際理津子の世界では野菜も果物も甘いものが普通に出回っている。

それは農家が品種改良を努力の末に成功させているからでもある。


こっちの世界では野菜も果物も理津子の世界のものに比べると甘さは弱いのだ。


「りっちんの世界だと野菜も果物も甘いって普通にやばくね?」


「甘いのもそうなんだけど、生でも全然食べられたりするからねぇ」


「野菜なんかは生だと辛いものとかもあるだろ?玉ねぎとか大根とか」


「うん、それも生で食べられちゃったりするものが普通にあるよ」


「リツコの世界の農家って普通におかしいと思うよ」


セルベーラの言う事もまんざらではない。

とはいえそれは飽くなき食への執着でもある。


そうした挑戦が結果としてそういった食べ物を生み出しているのだ。


「このメロンパンもそうだけど、りっちんの世界の食べ物って面白いよねぇ」


「材料自体は手に入るものも多いから、ないなら作ればいいしね」


「お前、ないなら作るっていう発想はなかなか出てこないと思うんだが」


「流石に材料が手に入らないなら諦めるけど、あるなら作るしかないよね」


「料理への執念が凄くない?好きっていう気持ちが凄いよ」


理津子曰く食べ物は手に入らないなら作ればいいという発想がある。

それはこっちに来る前にやっていたあるものでフォローしていたユーザーの影響らしい。


母国では好きなものが食べられない、それなら作ろうという発想になったという話だ。


「はぁ、んまかったぜぇ」


「今度は本当にメロン味のメロンパンに挑戦しようかな」


「お前のその貪欲さには勝てる気がしないな」


「また美味しいもの期待してるね」


そんなないなら作ればいいという理津子の考え方。

材料さえあれば作れてしまうというのが理津子の凄さでもある。


それは料理が好きで父親の背中を見て育ちこっちでも学んだからこそだ。


パンを焼くぐらい今となっては朝飯前なのである。

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