表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/51

第47話

・龍の剣用語集に載る新種魔物のアイデア募集中。

「記憶喪失なんて聞いてないわよ」


 2階にある自室に戻った私はベッドに飛び込み、目蓋を閉じた。すると一瞬にして今までのありとあらゆる疲労感が大波のように押し寄せてきたので、慌てて目を開けて、寝返りを打つ。

 本当なら、彼が目覚めた後に事情を聞き、その上で適切な対応をする。おそらく、タロニッツもそういう想定だったはずだ。しかし彼はその事情を覚えていない。これでは何のために彼をリットラン大聖堂に送り出せばいいのか…

「いや…そこは私が考えるべきところではないのか」

 記憶の有無はともかく、私は彼をリットラン大聖堂に送り出せばいい。あとはどうせタロニッツの不思議な力でどうとでもなるだろう。


 天井を見つめても疲労の波が押し寄せるので、起き上がってベッドから離れると、閉め切っていたカーテンを開ける。

「まだ朝か…」

 そこから見えるのは剣の素振りを中断させられたヒノイと中断させたミルモだ。トットラ村の住人達は村の北に広がる畑に行っているか、自宅で副業に精を出していて、朝は驚くほど人がいない。彼らは畑と家があれば、それ以上を求めてはおらず、過疎化に抗う気もない。しかし村の衰退を受け入れているにもかかわらず、私やヒノイを手放そうとはしないのだから、いい迷惑だ。

 また、排他的でもあるので、彼の受け入れにも否定的だった。ババ様やヒノイの援護もあって、完治した後に追い出すことになっているが…随時報告に行く必要はあるだろう。

「そっちはババ様に…」


 私はヒノイが笑顔でミルモを肩車する様子から目を逸らし、窓際の机の上に置いてある花瓶に挿された花に右手で触れる。ミルモが7日ほど前に届けてくれたものだが、随分と枯れていた。

「ふん…!」

 あの時のように魔力を込めれば、花はすぐ7日前より瑞々しい姿に変わる。

 タロニッツが私に授けた魔法。効果は復元か再生。腐った上級回復薬、古びた本、枯れ始めた花…これらを良い状態に戻す。わかっていることはそれだけだが、彼が眠っているうちにいろいろと調べてはいた。例えば…

「やっぱり…」

 私はミルモが適当にちぎってきたであろう花を花瓶から抜く。すると…ミルモからもらった時にはなかった根っこまでもが再生していた。

 実は下級回復薬に必要な雫草の不要な根の部分を切り取り、その根にこの魔法を利用すると、切り取った雫草と同じ形をしたものが再生された。しかも魔力がある限りは無制限に。わざわざ雫草を川に採りに行く必要もなくなってしまった。


 いや、重要なのはそこではない。


 切り離した根から雫草が復活するのなら、彼の消えた腕も復活するのではなかろうか。


「タロニッツは彼の腕まで治させるつもりだったのね」


 しかしそれには問題があった。

 私は根が生えた花を花瓶に戻し、近くにあった椅子に倒れるようにして座る。

 なかったものを生み出すには想像以上に魔力を必要とするらしい。そして私が持つ魔力量は一般市民クラスで、魔法使いになれる水準ではない。草木を復活させる程度が現状では限界なのだ。

 これは絶対に人選ミスだ。彼の腕を戻すことはできないと言っていい。

「魔力増幅剤か、魔力活性炉でもあれば…いや」

 考えると頭が痛いことばかりだ。しかももう1つ、まだ考える必要があるものがある。


 ーーいいかいイセス。落ち着いたらでいい。彼が流れてきた川をそのまま遡るんだ。途中に石碑がある。その石碑のどこかに矢印が彫られているから、それに従っていくつもの石碑を経由して、最後には廃屋に辿り着くだろう。そこにある資料をよく読むようにーー


 タロニッツが私に残した言葉だ。少なくとも彼は峠を越えて目を覚ましたため、安静を命じて経過観察しておけば問題はない。落ち着いたといえば落ち着いた気がする。しかしトットラ村を囲む森や横を通過する川なんかは薬草採取などで探索しているが、廃屋など見たことがない。

 そこに一体何の資料があるというのか。

「あー、ダメだ。やっぱり寝よ…」

 やはり疲れ切っている今考えてもしょうがないか。一眠りして頭の中をクリアにしよう。今は彼の目覚めを喜ぶだけで十分だ。


「ヒノイー!走れー!ウキャキャキャ!」


 ミルモの声が聞こえてきたが、私は倦怠感に押し潰されそうになりながら、改めてベッドに飛び込む。今度は押し寄せてくる波にも逆らわず、どっぷり意識を沈めるのだった。

何故かWiFiが使えなかった日々。

インターネットは血肉を構成する並に身体の一部となりつつあり、機械を受け入れたその時から人はサイボーグ化へと進み始めているんだなぁと。

…更新遅れています。すみません。はい本当に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ