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ライトユーザー、異世界では強くあれ。  作者: ラカインスト
第3章 ガウーリアス商会
34/51

第34話

ブクマや評価、感想等々大歓迎です。

評価等してくれた方々、本当にありがとうございます。

ただまぁ…お手柔らかに。心弱いので…


しばらく休止状態でしたが、また少しずつ書いていきますので、よろしくお願いします。

 結局、俺達は森の手前で一旦止まり、足に自信がある私兵の方々が森への調査に動き出した。ベアリアの進言をボルダーが判断した結果である。空はまだ明るいが、恐らくここで一夜を明かすのだろう。ちなみにベアリアもサクも森へと入っている。


「戦士職は身体が重くていけませんね」

 俺はというと、足に自信のない皆さんと周辺警備に当たっている。

「なぁに、動き回るのは若いのにやらせりゃいいんですよ」

 俺も中身だけは若いんだけどなぁ。


「クマノヴィッツ殿、そういえばなぜオークの武器を使用されているのですか?」

「あぁ、俺もそれは思った。荷物の中に剣もあったじゃないか」

「あー…あれは折れてしまいましてね。私が武器を振るうと、どうも武器が負荷に耐えられなくて」

「「折れた?」」

「さっきのビッグコッコ戦でも1本折ったでしょ?あんな感じで、すぐ武器をダメにするので。わざわざ安物を買い換えるのも…懐が寒いので」


 剣よりオークのハンドアックスの方が使いやすかったのもある。斧はとにかく力一杯叩き割ればいいのだから。筋力があれば…技術がある程度誤魔化せるし。


「だったらリットランのカルモニア武具店ってとこに行くといい。あそこはまだ無名な鍛治職人の製作物を多く取り扱ってるから、安い上に、掘り出し物も多いって話でさぁ」

「それはいいことを聞きました」


 そんなことを話していると、森の方からベアリアが帰って来ていた。森に背を向けていたため、気づくのに遅れた俺は真っ直ぐこちらに歩いてくる彼女に慌てて手を振る。しかし、残り10mといったところで、どこからか現れたボルダーがベアリアを呼び止め、駆け寄った。

 ベアリアは僅かに迷惑そうな顔をしてボルダーを見返すも、ちらりとこちらを見た拍子に、俺はボルダーを優先しろとジェスチャーを送った。すると、ベアリアはボルダーの顔を見て、人当たりの良さそうな笑顔に切り替え…何やら言葉を交わし出す。


「クマノヴィッツの旦那」


 ベアリアが何を話しているのか気になっていると、不意に私兵の1人が声をかけてきた。

「旦那て……はい?」

「ボルダーの野郎、ベアリアさんにご執心だぜ?」

 彼は俺の耳元に口を寄せ、ボルダーを見ながら呟いた。それを側で聞いていたもう1人も呆れながら頷く。

「野郎…ベアリアさんに近づきたいらしくて、旦那の見てないところで、熱視線を送ってんだぜ」


 ……マジで?


「ボルダーさんが?」

 この私兵…雇い主に野郎はダメじゃないか?まぁそれはいいとして、ボルダーがベアリアにご執心とは驚きだ。そりゃ強くて美人なら、惚れる奴は惚れるわな。俺も一瞬…ほんの一瞬…超一瞬…めちゃんこ一瞬…ラスマの街のとあるギルド職員に浮気しかけたが、やはりベアリアはモテそうだもの。

「お、旦那は余裕ってか?」

 自分でも思ったより反応が薄く、情報提供主は少しつまらなそうに笑う。

「余裕…ではないですよ。私も彼女なしでは生きていけませんからね」


 お金の管理、旅支度、戦闘における最大火力、魔物素材の剥ぎ取りなどなどなど…ベアリアに依存している部分が多い。もし仮に「ボルダーさんの方がお金持ちでイケメンだから、ここで別れましょう」とか言われたら、割と本気で泣くかもしれない。

「余裕ではないんですが…信じてますから」

「おっ、旦那も言うね」

「何、そもそもベアリア殿もクマノヴィッツ殿にご執心の様子。顔と金だけの青二才に遅れをとるなどありえんさ」


 従者システムがどういう仕様でこの世界に適用されたのか不明な以上、俺はベアリアに対して何ができるだろうか。


 そうして俺が彼らからのボルダーに対する愚痴をいくつか聞いているうちに、ベアリアとボルダーのやり取りが終わり、彼女が俺達の方に小走りでやってくる。


「クマノヴィッツ様!」

「ん、お疲れ」

 早速聞くか?

「ベアリア、森に何か見つけたか?」

「私が見た範囲では特に何も。しかしながら、事前情報に比べ、静かすぎる印象はあります。魔物に遭遇できませんでした」

 よく日本の山間部でクマ注意とかシカ注意みたいな立て札を目にしたが、実際に遭遇する可能性はそこそこに低い。遭遇する可能性はもちろん存在するが…広い山に一体どれほどの獣がいるのか考えると…やはり人間1人で観測できる範囲も限られるというもの。

「まぁ…サクさんや他の方々に期待かな」

「申し訳ありません!次こそは…!」

「いやいや、助かってるよ」


 さてと、聞いてみるか。


「ところでボルダーさんとは何を?」

 俺はボルダーの背中を見てベアリアに尋ねる。

「調査報告と…その、リットランに着いた時に食事でもどうかと」

 ベアリアは少しばかり言い辛そうに打ち明けるも、俺達は思わず苦笑してしまう。

「ほほぅ?」

 いかん、面白くて、つい変な声が出そうだ。彼らから間接的に事情を聞いた時は不安だったが、なぜかベアリアから直接的に聞くと…妙に笑えてくる。

「それで?行くのか?」

「クマノヴィッツ様…!」

 俺があまりに適当に選んだ言葉に対して、ベアリアは一瞬怒った顔をする。それにはさすがに笑えず、俺は誤魔化すようにベアリアの頭に手を乗せる。

「なら、庶民的で美味いものを探すとしよう」

 ベアリアが照れつつも強く頷くのを確認し、俺は横でニヤニヤする彼らに目をやる。


「ということで…」

「美味い飯屋か…あれなんてどうだ?島猫亭の」

「あんな野郎しかいない店を勧める馬鹿がいるか」

「じゃあなんでぃ、お前さんはどこ勧めようってんだ?」

「そりゃリットランといえば中央食堂だろうさ」

「おいおいおいおい、ありきたりだなおい!」

 思った以上に彼らから情報が得られそうだ。さすがはリットランとラスマを往復する方々といったところか。

「あ、でも中央食堂の看板娘ちゃんは可愛かったなぁ」

「相変わらず…そういうところは覚えてるんだな」

 ………………よし、中央食堂だな。


「クマノヴィッツ様?」

「ん?」

 俺は無意識にベアリアの頭を撫でていた手を下ろし、少しばかり残念そうな顔をする彼女に首を傾げる。

「いえ、その…私はクマノヴィッツ様が1番ですから。どうか、そのことをお忘れなきよう」

 それはあまりにも真っ直ぐに輝く瞳であった。

 俺は思わず視線を彼女の背後にある森へと逸らすと、ちょうどサク達が戻ってきていたのを視認する。


 ああ、俺が最も苦手な目をしている。

「知っているとも。そいつはお互い様さ」

 そう言って俺は空々しく笑う。


「クマノヴィッツさーん!」


 サクが俺に気づいて手を振ってきた。彼の近くにはボルダーをはじめとしたガウーリアス商会の方々が集まっており、何やら話し合いがある様子。多分、俺にも参加しろということだろう。俺というよりは…魔物に詳しいベアリアだろうか。

「クマノヴィッツ殿、見張りは我らだけでできますから」

「そうそう。旦那はいざって時は頼むぜ」

「ええ、もちろんですとも。行くぞ、ベアリア」

「はい」


 こんな俺でもまだ頼られている。やはり、努力はするべきか。従者の期待に応えるためにも。

ーー龍の剣用語集ーー

【冒険者以外の戦闘員】

冒険者は特定の職を神より授けられ、冒険者ギルドの仲介を経て、様々な依頼を受ける。一方、そのギルドに入っていない戦闘員も確かに存在する。しかし彼らは冒険者と同じ人間でありながら、神に職を与えられていない場合が多く、どんな新米冒険者に比べても戦闘能力は極めて低い者がほとんどである。


ちなみにゲーム内では神の影響を受けずとも、プレイヤーである冒険者にも負けない強さを持つNPCがいたが、そのアバターは運営会社の社員がモチーフとされているらしい。

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